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EX3

アレク様との出逢い

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side:リシェール・ファルセア・シュゼ・ルキウス


今日は僕の15歳の誕生日。
つまらない挨拶とかお世辞とか流して聞いている。
咎められないように愛想笑いを常に貼り付けて対応してる。
溜息を吐き出した時に視界に入った。
窓の外、フードを被ってこちらを窺っている人物。
すぐにわかった。
あんなに凄い闇の魔力。
アレクシウス皇子だ…初めて見た。
凄く強そうだけど、ここは光の結界の中。
闇属性の人は弱体化してしまう。
適当な嘘を吐いてこの場から走り去り、アレクシウス皇子の元に向かった。


「あ、あの、ここは危険ですから、こちらへ!」
僕は彼の腕を引いて僕の部屋に連れ込んだ。
鍵をしっかり掛けると、アレクシウス皇子はフードを取り払う。
僕と三つしか違わないのに大人だ……それにかっこよくて背も高い……羨ましい。
「リシェール王子だな、君とは話せそうだ。」
「あの、どうしてこんな危険な所に?」
心配になって尋ねてしまう。
「我が国の…闇属性の子供が十人ほど攫われた。親の嘆願で俺が此処を突き止めた。この結界に入る事が出来るのは俺ぐらいだったからな。」
「十人も……。」
僕の誕生日である今日と前後しているという事はきっと……。
「御免なさい…っ!きっと神殿が僕に生贄として捧げるつもりなんです。僕には止める力が無かったから、今までずっと…。」
謝っているのに僕は泣いてしまう。
泣く資格なんて無いのに。
「毎回そういう子を助けようとしてるのですが、僕が反対しているのを知っているから、僕には全て隠されてしまって…辿り着けないんです…。」
「泣かないでくれ、君を咎めているわけではない。君の力が強かったから、敵に回られたら助けるのが困難になると思って、君の位置付けを探っていたんだ。君は味方になってくれるんだな?」
「は、はい!僕に出来る事があるなら…いくらでも手助けします…っ!?」
涙を舐め取られた…びっくりして固まってしまった。
「す、すまない。……可愛くて。」
「ん?」
後半が小さくて聞き取れなかった。
「いや…。ところでどこかに隠し通路みたいなものは無いだろうか。神殿とこの城を結ぶ。」
「…宝物庫に隠し通路があるって噂は聞いた事があるんですが…。」
「…警備が厳しそうだな。」
「多分大丈夫です。」

宝物庫に着くと、アレクシウス皇子にはフードを被っていてもらい、「鑑定士さんを連れて来た。」と言ったら直ぐに通してくれる。
わりと仲良くしてくれている兵達だったのもあると思うけど。
アレクシウス皇子は何か言いたげだったけど言葉に出さなかった。
今は急いだ方が良さそうなので会話は後にする事にした。
中に入ったけど、それらしい場所は無かった。
アレクシウス皇子がすぐに魔法を使う。
闇魔法じゃなく、無属性魔法だった。
「闇魔法以外を使われるんですね。」
「…俺は多分一生闇魔法は使わない。余計に嫌われるだろう?」
そんなの悲しい。
闇魔法の何が悪いのかわからない。
なのに持っているものを自由に使えないなんて……。
そんな思いを闇属性持ちの人はしてるんだって知ってしまった。
「君が悪いのではない。君はむしろ助けようとしてくれているじゃないか。それは中々出来ない事だ。」
僕が泣きそうなのに気付いたんだろう。
しっかりと抱き締めて、背中を撫でてくれた。
そうだ泣いてる場合じゃない。
「御免なさい、有難うございます。あ、そう言えばさっきの魔法で何かわかったんですか?」
言われて思い出したように腕を放す。
「もう少しだけ……。探知で此処にまやかしの魔法が使われているとわかった。」
「まやかし……ちよっと待ってて下さいね。」
僕はすぐ全ての妨害を弾く魔法を使った。
本当に知らないドアが出現して驚いた。
「凄い…流石です、アレクシウス様っ!」
「いや、この場合凄いのはリシェールの方だと思うんだが…。」
互いにいつの間にか呼び方が変わっていた。
尊敬のあまりつい呼んでしまっていた。
二人共同時に気付いた。
「呼べたらいいなと思っていた言葉がそのまま、出てしまって…。」
済まない…と告げる言葉に首を振っていた。
「是非そう呼んで下さい!」
「俺も呼び捨てで構わないぞ?」
「いいえ!歳上の方ですし…その、色々と尊敬しちゃったので…。」
恥ずかしくなって顔を赤くしながらアレクシウス様の瞳を覗き込んで言うと、「そ、そうか。」と何故かアレクシウス様の顔も少し赤かった。
「それより早く扉を潜りましょう……?あ、何か用事でした?」
何となくアレクシウス様は僕に手を伸ばそうとしていた様子だったけど、「何でも無い」と言われたので、扉に急いだ。

「本当に神殿だ……。」
扉を潜ると長い一本道の通路があって、神殿に着いた。
今日は僕の誕生パーティをやってるから神殿は空だった。
地下牢に行くと子供達が不安そうな顔で捕まっていた。
僕は絶望しそうになる。
この国は何をやっているんだろう。
それを今まで見過ごしていた僕が一番……。
「リシェールは今こうして子供達を助けた。リシェールが居なかったらこの子達は助からなかった。」
「それでいいんですか?僕は力を持ってるのに何も出来なかった。アレクシウス様は持っている力を使わないのにこんな事が出来た…。」
また泣きそうだ…。感付いてくれたようでまた抱き締められた。
「それは力の使い方の違いだけだろう。実際俺だけでも駄目だったし、リシェールだけでも駄目だった。」
僕は言われる言葉に耳を傾けている。
「今後は共に協力していけばいいと思わないか?」
「…はいっ!僕で良ければ、宜しくお願いします!」
言われた言葉が嬉しかった。
いつも僕は「ただ黙って立って居ればいい」って言われて来た。
どんなに提案しても子供扱いされて聞き入れて貰えず、何もさせてもらえなかった。
初めて僕とちゃんと会話してくれて、僕を認めてくれた。
泣いたら困らせるから、微笑みを向けた。
「り、リシェール…。」
アレクシウス様の顔が近付いたような…。
「アレクシウス様のお嫁さん?」
その時子供達が騒ぎ出す。
「ち、違うよっ!」
僕は真っ赤になって思わず声を上げていた。 
僕なんか相応しくないし。
アレクシウス様の腕から離れた僕は、慌ててアレクシウス様の方を窺うと、助け出した子供に何故か慰められていた。
どうしたんだろう?

アレクシウス様はこのまま転移の魔法で帰るそうで。
「あ、あの…お城に遊びに行ってもいいですか?」
「いつでも歓迎する。」
そう言い残すと僕に指輪を渡してくれる。
「え、ええっと?」
ちょっと動揺してしまう。
「…転移の指輪だ。うちの城に来るならと思って。」
「有難うございます!」
嬉しくて笑顔でお礼を言った。
「アレクシウス様、プロポーズ?」
「俺的にはそれでも良かったんだが…。」
楽しそうに子供達と帰って行くのを見送ると寂しい。
神殿の連中には僕が逃がしたと説明した。
何か言ってたけど無視した。


翌日、アレクシウス様は何故か城の近くに居て、暴漢に襲われてしまった。
僕の治癒で治したけど、こんな酷い事になってるなんて…。
「どうして此処に?」
「俺の城に来るなら絶対に、他に行くと告げた方がいいと言うのを忘れていたからな。」
僕の事を考えて来てくれたんだ。
こんなに優しいのに、何で闇属性が駄目なんだろう?

僕はこの日から前以上に「闇属性への差別」に関して反対をしていった。
当然アレクシウス様の所へ行く事も堂々と告げて。

その結果がまさかあんな事になるなんて、思ってもいなかった。

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