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EX3

4月9日 リシェ(柚希)&リシェールBIRTHDAY

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side:リシェ


「ようこそ、リシェ様!」
リシェールに呼ばれて、アレク様と一緒に国へやって来た。
国王の正装をしているリシェールはカッコいい。
そう伝えたら顔を赤くするリシェール。
「今日はリシェ様の生誕パーティーを用意している。ただ私も同じ誕生日なので、一緒に行う事を赦して欲しい。」
「変な遠慮なんてしないで、むしろ僕の方は既にこの国の関係者じゃないからしなくていいよ。」
「いや、どうしても、私がしたい!」
手を強く握られて言われる。
「リシェの事を何て紹介するつもりだ?」
見兼ねたアレク様がリシェールに尋ねる。
「勿論光神様として!」
「やめて、やめて!」
想像しただけで怖い。
「…では私の王妃候補ということにして。」
「今日をお前の命日に変えてもいいんだぞ。」
睨み合う二人。
「じゃあ、せめて親戚にしてくれれば…。」
祝ってくれるらしいのは確定みたいなので、一番妥協出来るだろう事を申し出る。
「…ではそれで。」
盛大に祝いたそうなリシェールはいまいち不満そうだけど、妥協してくれた。
「しかし、アレクシウスの参加は今は不味いな。」
闇の証である黒髪黒瞳のアレク様。
光の国の王の誕生日パーティーに堂々と参加は今は出来なそう。
他の国の来賓があるから、さすがに今はまだそういう目で見られてしまうだろうから。
「それなら問題無い。」
アレク様が魔法で自分の姿を金髪に蒼の瞳に変えた。
「これならリシェールの親族辺りに見えるだろう。」
初めて見るアレクの姿に僕は思わず見惚れてしまう。
「リシェ?」
「あっ、御免なさい…その、あんまりカッコいいので…。」
頬を赤くしながら感想を告げる。
「リシェが可愛い!」
思い切りぎゅっと抱き締められる。
「くっ、私の正装よりアレクシウスの変装の方が上なのか…。」
悔しそうなリシェール。
「上とかじゃなく、二人共カッコいいよ。」
二人共どうにか納得してくれた。

パーティー会場にはかなり人が来ていた。
割合としては金髪の人が多いかな。
リシェールがすぐに注目を浴びて、人に囲まれてしまった。
僕とアレク様はそっと離れて、取り敢えず飲食のテーブルに移動した。
多分これから乾杯をするので、まだ食べられない。
数分待つと、リシェールが囲んでいた人から離れてこちらに来た。
「リシェ様、乾杯に付き合ってくれ。」
不安そうな顔を思わずしてしまうと、アレク様が僕の肩を軽く叩いて、大丈夫と落ち着かせてくれた。
リシェールと一緒に少し高くなってる台に上る。
リシェールが挨拶と来訪の礼を述べ、僕を親戚だと紹介したのでどうにか笑みを向けた。
渡されたグラスで乾杯をすると、王の親戚だと紹介された僕まで囲まれてしまった。
言葉少なにどうにかお客さんに笑顔を向けると、ダンスに誘われる。
おろおろしていたらアレク様が輪の中から連れ出してくれた。
そのまま流れでアレク様と踊る。
何だか安心してしまい、ようやく心からの笑顔を浮かべられた。
安心したらお腹が空いたので、飲食に集中する事にした。

お腹もすっかり満足した頃、リシェールが近付いて来た。
「リシェ様、済まなかった。あんなに囲まれてしまうとは思わず…。」
さっき僕が途方に暮れてた謝罪にわざわざ来てくれたらしい。
「気にしないで。国王様の親戚なら声を掛けないわけにはいかないだろうしね。」
笑顔で言うと安心してくれた様子だった。
「リシェ様に渡したい物があるので、部屋に来てくれないか?」
僕とアレク様を誘ってリシェールの寝室へと連れて行かれる。
渡されたのは魔導具と呼ばれる物だった。
「リシェ様がよく魔力不足に陥ってるのが気になって、身に付けていると自動的に魔力をチャージしてくれるそうだ。前もってその腕輪に魔力を入れておけばいいらしい。」
「そっか、ならもういきなり倒れたりしなくて済むね。ありがとう、リシェール。」
「俺からはこれだ。」
アレク様がチェーン状のブレスレットをくれた。
「これはその属性を持ってなくても魔法が使える。」
そう説明して同じ物をリシェールにも渡す。
「魔力量は増えるわけでは無いから、自分の魔力の範囲でだけどな。」
「それって、僕が火の魔法を使えたりってことですよね?」
「ああ。但し二人とも闇魔法は当然使えない。」
「なるほど…。」
試しに火魔法で指先に火を灯す。
「ほんとだ、凄い!」
兼ねてよりこういう魔法らしい魔法を使ってみたかった僕は大満足だ。
もしかしたらアレク様みたいに、ああいうおっきい建物とかも造れちゃうのかな?
リシェールは本格的な魔法を使えて凄く嬉しそう。
「ありがとうございます、アレク様!」
「有難う、アレクシウス。」
色々嬉しそうに魔法を使っていたリシェールが笑顔でアレク様にお礼を言った。
「素直なリシェールは気持ち悪いな。」
「人を何だと!ああ、そうだもう一つ。これを…。」
リシェールがアレク様に差し出したのは、金色の石だった。
「これはっ…!」
アレク様には見覚えがあったらしい。
じっくりと石を見て、すぐに大切そうに握る。
「…これは、前世でリシェに貰った物だ。俺が死んだ時に行方不明になっていたんだ。」
「僕に……あっ!」
思い出した。
アレク様にもっと仲良くして欲しいと思って、僕の力で作った石を渡したんだった。
「これは『神の核』と言って、体内に取り込むと神としての力を得る。俺が前世で『闇の神の核』を埋め込んだ結果、精神が闇の神に支配されてしまった。」
「え、じゃあこれは僕の核なんですか?」
「いや違う。リシェは新たに新品の核を作ったんだ。」
「つまり、私がそれを埋め込んだら神の力を手に出来ると?」
「そうだ。しかも新品の核だから誰かに支配されたりもしない。流石に俺は闇だからこれを埋め込む事は出来ないが。」
「…魔力の低い私には喉から手が出る程欲しいが、過ぎた力は災いになるだろうしな。」
一瞬、リシェールは使いたいと言うかと思ったけど、冷静だった。
「俺が持っていてもいいか?」
「元々お前が貰っていた物だから、好きにすればいい。」
「わかった。リシェ…今度こそ手放さないからな。」
「はい…あ、でもそれ確か幸福を願いながら作ったんですが、単なる核なんですか、それ?」
聞くとアレク様が鑑定魔法を使った。
「…確かに、幸運値が上がるようになっている。気付かなかった。有難う、リシェ。」
アレク様に頭を撫でられる。
「お役に立てて嬉しいです。あ、そうだ。リシェール、僕からはこれを。」
僕はリシェールに白銀色の細い杖を渡す。
「杖自体はドロップアイテムなんだけど、姉さんに手伝って貰って改良したんだ。多分全部の光魔法が使えるはず。」
「なっ…!」
驚くリシェール。
以前にリシェールが光魔法を使いたそうだったから、使わせてあげたいなと思っていたのだった。
姉さんに頼むのは癪だったけど、リシェールの為だと思って。
「リシェ様ぁっ!」
リシェールに飛び付かれて倒れそうになったけど、後ろからアレク様が支えてくれた。
「やっぱりリシェ様は私の神様だ!」
「喜んでくれたなら良かった。」
「神殿に飾って…。」
「使ってね?」
「有難う、リシェ様…。」
リシェールの目が潤んでる。
慌てて僕はリシェールを抱き締めた。
「ちなみに柚希には、あっちに戻ったら別にプレゼントを用意しているからな。」
「ありがとうございます、アレク様。」
笑顔で言うと、リシェールから引き剥がされて抱き締められた。

その後もう少しだけパーティー会場に留まり、時折挨拶に来る人と会話したりして、パーティーの終わりを待って向こうに戻った。
リシェールは今日は日本には帰れなそうだった。


side:柚希


「誕生日おめでとう、柚希。」
戻ってすぐに涼一さんがキスしながら言ってくれた。
パーティーはリシェールが帰って来てからやる予定だ。
「ありがとう涼一さん。」
「そういえば柚希は何か欲しい物はないのか?一応プレゼントは用意しているが。」
「欲しいっていうより、またあのプラネタリウム行きたいなとか…。涼一さんと何か経験したいなって。」
「…よし、あそこのプラネタリウムの権利書を柚希に…。」
「要りません。」
「冗談だ。」
またキスしてくれる。
僕が欲しいって言ったら本当にくれていた気がする。
「もし僕がお菓子が欲しいって言ったらどうするの?」
「本場のパティシエを呼んで食べ放題だな。」
迂闊に要求出来ない。
「柚希が物凄く欲しいって物が知れたら一番なんだけどな。」
「僕が今欲しいのって、涼一さんと過ごす時間だよ。」
「柚希ーっ!」
「わっ!」
ベッドに倒された。
そのままあちこちがキスされ吸われ嗅がれる。
「嗅ぐのはいやぁ…。」
お風呂がまだだから気になる。
「柚希はいつもお日様の匂いかするから平気だ。」
「今日は外出てないよ…。」
「そういえば忘れてた、プレゼントだが、来週の土日に旅行に行こう。柚希の好きな所で。」
「うーん…江戸村見たいかも。」
どうにか絞り出した。
「日光か…よし、了解。」
聞いてすぐ色んな予約を入れてくれたみたい。
さすが仕事が早いなー。
「さて…。」
涼一さんが僕の頬をゆっくりと撫でる。
「最後の、婚約者としての柚希だ。」
そう言うと唇にキスが触れる。
「これからも毎年、新しい年齢の柚希に触れられるよう願ってる。」
「うん、ずっと傍に居るから。」
「愛してる、柚希。」
「うん、僕も愛してる。」
思わずじんわりとしてしまう。
「何でそこで泣く。」
「幸せだなって。」
「そうだな、俺もだ。」
涙を啜りながら同意してくれる。
言うと涼一さんは僕をしっかり抱き締めて横に倒れ、腕枕してくれる。
「あ、あれ?」
「ん、どうした?」
僕が動揺してると、ニヤニヤしながら聞いてくる。
知ってて聞いてくる、意地悪だ!
「し、しないんだ?」
恥ずかしいけどどうにか聞くと、満足そうに笑む涼一さん。
「今日は疲れただろう?あんな気遣って大勢に囲まれて。何度も口許を押さえて欠伸を噛み殺してたの知ってるぞ。」
疲れていたのを隠していたつもりだったのに…。
特にリシェールに疲れを見せたくなかったから。
自分のせいだって、きっと思ってしまうだろうから。
「ヤってそのまま寝かそうかと思ったが、誕生日にそんな目に合わせるのもどうかと思ったからな。」
「ありがとう…。」
「その代わり明日は起きてから…容赦しないからな?」
「お手柔らかにお願いします。」
僕が苦笑を浮かべると、涼一さんが額から頬へと唇を辿らせる。
「お休み柚希。」
最後に唇へキスされる。
「お休みなさい…涼一さん大好き。」
挨拶を口にして意識を手放した。

何故か翌朝涼一さんが寝不足で、一睡もしなかったと聞かされた…。
何してたんだろう?仕事かな?

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