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EX3

祈りのバフ

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side:リシェ



「今日もレベル上げ頑張ろうね!」
いつものように三人でゲームに入り、二人のレベル上げに同行する。
僕はレベルカンストにされちゃったから、お手伝いだけど。
「ん…?あれ?」
二人から返事が無かったから横を向くと、さっきまでそこに居た二人が居ない!
慌てて見回すと……背後で二人が跪いてお祈りしてた。
「え?えーと…?」
「リシェは尊いな…。」
「ああ、リシェ様は神々しい……。」
「も、もしかして…僕に祈ってるの?」
尋ねるとすぐにアレク様が立ち上がり、僕を抱き締める。
「ああ。リシェがあんまり尊いので、リシェに祈ったら本当に効果がある気がして、最近毎回祈っていたら…。」
「それを聞いて私も同感だと思ってリシェ様に祈るようになって…。」
二人が説明しながら僕の頭やらを撫でてくる。
「それを見ていた他のプレイヤーも、リシェタンに祈るようになったでござるよ。」
「ん?ござ……え?誰?タン?」
アレク様とリシェールに続くようにいきなり現れた人が語りながら僕に祈ってる。
その人の姿は凄く変わってて、頭にバンダナを巻いて、白のTシャツにはアニメキャラが描かれて、その上にチェックのシャツを着ている。
このゲームのアバターでは見た事がない、太った男の人だった。
ファンタジーらしく無い。
眼鏡もしてるし。
唯一ファンタジーらしいのは、背中に背負った二本の剣をバッテン上に装着している事ぐらい。
髪の毛も多くの日本人のそれ…黒い短髪だし。
「秋葉原で見たような…。」
思わず呟いた。
いや、この人とは限らない、服装が似た人を見たなって。
「うほっ、生リシェタン初めて見た!」
「た、タンですか?」
「うはっ、動揺させて済まないでござる。拙者はアレク氏の高校時代のクラスメイトでござる!」
そう言いながら眼鏡をくいっと上げるござるさん。
「あっ、「タン」とは推しの子への敬称でござるよ。」
「推し?」
「リシェのファンと思えばいい。」
疑問だらけになってる僕に、アレク様が説明してくれる。
さっきの祈りから何が何だかわからない。
ポカーンとしてる僕にわかりやすく説明してくれる事になった。
「まずこいつは深淵と書いてアビス。」
「しんえん…あびす……。」
思わず繰り返してしまう。
何だか凄い…。
「深淵は、俺にとって少々恩人でな。」
「アレク様の恩人?」
驚いてしまう。
僕に逢う前アレク様…涼一さんは感情が無く、人と関わらないとか聞いてたから。
「リシェと逢えたのは、元はと言えば深淵が『ロイヤル・ラブ』…あのゲームを俺に押し付けてくれたからだったからな。」
「あっ!」
そう言えば涼一さんが「借りたゲーム」って言ってた。
「だから恩人なんですね。深淵さん、有難うごさいます。」
納得した僕は笑顔で深淵さんにお礼を言った。
だって僕にとっても恩人って事になるもんね。
「ふおぉぉっ!!リシェタンの満面の笑顔!堪らん!はあはあ、ヤらないか?先っちょだけ!先っちょだけでいいから!」
「え、えーとっ…。」
「ちなみにこんなんだが、中身は美人な女だからな。」
「「じょ、女性!?」」
語り口調からも全くわからなかったので驚いてしまう。
あれ?今リシェールとハモった。
「リシェールも知らなかったんだ?」
「私は彼?とは初対面だ。」
あ、お祈りの件とは別だったんだ。
「考えてみたらこれってBLゲームでしたね。中身は女性の方が多くて当たり前なんだ…。」
ついそこを失念してしまう。
「そうだな、恐らく八割は女性プレイヤーだと思う。」
「二割も居るんですか、男性。」
まあ実際ここに三人居る事だしね。
「リシェタン今後宜しくでござる!」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。」
握手するのかと思ったら、ギューッと抱き締められてあわあわしてたら(だって中身女の人だし)、アレク様に引き剥がされた。
「うわい、リシェール氏、目がコワスw」
とか言いながら余裕そうな深遠さん。
「せっかく会えたでござるが、今日はリアで臨時の仕事が入ってしまったでござる。また今度ゆっくり遊ぼうでござる!」
「防衛省のやつだっけ?」
「今日は別でござるよ。それではまた!」
深淵さんはログアウトした。
「ぼ、防衛…?」
「あいつはああ見えて有能だからな。」
美人で頭も良いなんて凄い人なんだ。
だから涼一さんが対等に友達してるんだ。
「さて、行くか。」
アレク様がそう言うと、まだ祈ってる他プレイヤーが目に入る。
「あっ、そう言えば、何なんですか、お祈り!」
ようやく思い出して二人に尋ねる。
「誤魔化せなかったか…。」
え?誤魔化すつもりだったんだ。
何か嫌な予感…。
「最初は二人でお祈りしていたんだが、面白がったのか、本気で俺達と同じように思ったのか、徐々にリシェに祈るプレイヤーが増えて来たから、それを美月さんに報告したんだ。」
姉さんの名前が出ると嫌な予感がしてくる。
「そうしたら美月さんが面白がって「それはいいアイデアだわ!本当にしちゃいましょう!」って、リシェに祈るとバフを得られるようになったんだ。」
「ば…ふ……?」
「ALLステータス三十%アップだ。」
目眩がした僕を支えながらアレク様が続ける。
「ちなみにリシェがパーティーメンバーに居ると、経験値が五十%アップする。」
意識を失うかと思った…。
近々姉さんと会う予定だから、取り敢えずこの件は置いておく事にした。
「安心しろ。ランカー順位からは俺らは外れているから、チートしたところで問題無い。」
「そうですね。こっちの異世界で過ごすには、レベル上げられるものなら上げちゃった方がいいですしね。」
「そう言う事だ。やる事やり終えたら幾らでもゲームを楽しめる。」
「では手っ取り早く、少々きつくても無理を通せる敵を倒しに行くのだな。」
リシェールの言葉通りに、かなりレベル差があるボスに挑んだ。
勿論三人だけでなく、他の人達とパーティーを組んだ。
知らない人達なのに僕は知られてて恥ずかしかった。

経験値五十%増しのお陰で数日で二人はレベルカンストした。
ステータスアップしたから、異世界でも能力がアップしてる。
国を治める二人はこれでかなり楽になったと思う。

たまには姉さんの暴走も役に立つんだなって思った。

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