ホーリーウッド物語

4.

医療補助試験は、午前が学科で午後から実技と面接諮問。夕方4時には結果が掲示板に貼り出される。ホーリーウッド王国内の主要都市15ヶ所で一斉に行われるのだが、隣街の会場は、受験生が200人ほどだ。
午後の実技と面接の試験官は現役の医師や役人が2人１組で、受験生10人を見ることになる。
エリーのグループは、男性7人女性3人で女性は同年代だが、男性は60代から若いというより少年という感じまでまちまちだった。

「今回の実技試験は、皮膚疾患の幼児の対処方法になります。1人ずつ問診、患部診察、調剤を10分以内で。それでは、受験番号61から。はじめ！」
幼児の場合、保護者に話を聞いたり、暴れる子どもをなだめたりするので診断に時間がかかる受験生が多いなか、私はいつも同じことをやっているので、スムーズにこなすことができた。
女性と壮年以上の男性受験生は家族に医師がいるか手に職を付けたい自立したいが理由だが、30代くらいまでの男性は養成学校卒業後これに合格して医師見習いとして5～10年働き、指導医師に合格をもらえれば、医師になる試験を受けることができるので未経験者が多い。男性たちはなかなか苦労していた。
実技と簡単な面接諮問が終わると発表まで時間があるため、なんとなく女性3人でお茶をして時間を潰すことになった。
「エリーさんは、実技慣れてましたね。」
そう言うポリーさんは、医師の彼氏と結婚するので手伝いを出来るようになりたいそう。
もうひとりのアンは、私と同じ医師の娘だった。
「毎日、手伝いしてるし、たまたま同じ症状の患者さんをうちで診たことあったから。」
「アンは、エリーみたいにお父さんの補助するの？」
「わたしは、女ばかりの家だからお父さんの跡を継ぐ婿養子で来るお見合い相手のためよ。長女だし、代々医師の家だからね。」
「3人とも合格だといいんだけど…」
「合格率30%だとうちのグループは、私たち3人で終わっちゃうわね。」
4時の鐘が鳴り響く。試験会場だった役所の入口に行くともう貼り出されていた。
「エリー。私たちの番号は、61、66、68…」
「えっと53、61、63、65、66、68…」
「3人ともあったね。良かったぁ。アンとエリーしかなかったら、どうしようかと思っていたのよ。」
3人で丸くなって飛び跳ねる。
「うちのグループは他より合格者多かったみたいだね。少年くんとメガネのお兄さんも受かったみたい。」
「今日は、家に帰らないといけないけど、明日とか3人でお祝いしない？」
アンとポリーは、この街に住んでいるが、私は帰らないとならない。
「ごめんなさい。私は、家がエイナだから。」
「残念だけど仕方ないね。今度、来る時に連絡してくれれば、アンと集まるようにするよ。」
「ありがとう。」

2人に別れを告げ、最終の乗合馬車でエイナに戻ったのだった。