ホーリーウッド物語

里中一叶

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 夜遅くに家に着いたが、まだ灯りがついていない。やはり父さんたちはまだ帰って来ていない。
帰ってきて「おめでとう」と言って欲しかった。少し寂しくなってしまう。それにしても父さんは、王都に何日も何をしに行ったのだろう?

結局、父さんたちは出かけてから、半月後に帰って来た。
「ただいま。エリー、試験どうだった?」
「おかえりなさい。父さん、いつになったら帰ってくるのか?心配したわよ。試験はちゃんと合格しました。」
「おめでとう、おみやげがお祝いになっちゃったわね。」
母さんに渡されたおみやげは王都で人気のお菓子ときれいな紫色の石がついた髪留めだった。
「ありがとう。」
「母さんがエリーの瞳と同じ色だから、これがいいって選んだんだぞ。」
「嬉しいけど、一体何しに王都へ何日も行ってたのよ。患者さんやお客さんがみんな困っていたのよ。」
「悪かったな。ちょっとのはずが、知り合いに会うことになったりしたから。」
「そう言えば、父さんたちが出かけた日からずっと待っているお客さんがいるわよ。」
「客?患者さんじゃないのか?」
「うん。話聞きたいとか言ってた。フェルティ王国から来たっていう、私くらいの年の男の人。」父さんはしばらく誰だろう?と考えていた。
「ガイルの店に行って来るから、2人は先に寝ていてくれ。」
「父さんたら、帰ってすぐに飲みに行くのね。」
そう言って、母さんが呆れていた。
明日のパンの仕込みを2人でして、久しぶりに母さんの美味しい夕ごはんを食べて、ひと息ついた。
「やっぱり母さんのごはんは美味しいわね。自分で作るとあまり美味しくないのよね。」
「エリーも好きな人が出来れば、がんばって美味しく作れるようになるんじゃないの?」
「うーん。当分無理かなぁ、好きな人とかいないし。」
「いままでに1人もいないの?」
「うん。17歳になって初等学校の同級生も結婚した子はたくさんいるし、医療補助の試験で仲良くなった子たちも合格したら旦那様になる人の手助けするために試験受けてるんだけどねー。」
「エリーは、そういう人もいないし、どこか別の場所で1人でやるつもりがない、父さんっ子なのね。」
「母さんにそう言われちゃうとね。」
「ところで、母さんと父さんってどこで知り合ったの?」
「父さんと母さんは、幼なじみでね。父さんが医師学校に行ってしばらく会わなかったんだけど、たまたま私が働いていた場所で再開して結婚したの。」
「いいなぁ、私にも幼なじみいたら良かったのに…」
なんとなく自分で言って引っかかったのだが、なんだか分からなかった。
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