ホーリーウッド物語

里中一叶

文字の大きさ
15 / 27

14.

しおりを挟む
久しぶりにあの夢だ。
伯爵の話を聞いたせいか、いつもより周りがよく見える。

まだあたりは薄暗い。いつもキャリーと庭で遊ぶ時に着ている汚しても怒られないワンピースに着替えさせられて、今日は何をする日だったかしら?と寝ぼけた頭で考えていると侍女のジェーンが抱き上げた。マリーが今日休みだとキャリーもいないのかなぁと思っている私は抱かれたまま部屋を出た。

朝なのに遠くで騒いでいるような声がする。

移動したお母様の部屋には侍女たちと私の服を着たキャリーがお母様と一緒にいた。キャリーは涙目になっていたが、泣くのを必死に我慢しているようでお母様が「巻き込んで、ごめんなさい。」と抱きしめている。ジェーンが私をおろすとお母様は私にペンダントをかけ、ぎゅーっと抱きしめてすぐに離される。

私はなんだか悲しくてさみしくて涙がでてきた。

「エリーを頼みます。時間がない。急いで。」

お母様がそう言うとキャリーを一度抱きしめた父さんが私を抱き上げ、部屋の壁にある本棚の真ん中にある隠し通路に入ろうとする。

私はお母様に

「いっしょにいこうよ。」

父さんの腕から降りようともがきながら、お母様に手を伸ばすがお母様は毅然とした態度を変えない。

「エリー。あなたはここには必要ありません。いきなさい。」

そう行って隠し通路の入口を閉じられてしまった。
まだ通路を移動し始めてすぐにあの部屋の方から悲鳴や怒号が聞こえた。私と父さんが通路を抜けて後ろを見ると建物は火に包まれていた。

目が覚めた。あの日を思い出していた。多分、私はショックで熱を出し記憶とお母様譲りの金髪を失ったのだろう。
そして気付く。キャリーは乳母だったマリーの子で私と同じ年だった。私は父さんと母さんの子どもを替玉にして生き延びた。もしかしたら、2人は私のせいで生命を落とした?
このまま、平和に過ごすのもいいかもしれないし、父さんたちも望んでくれていたかもしれない。
でも、3人やあの時亡くなったみんなのために私は真実と向き合うべきなんじゃないだろうか。
そしてお母様の「いきなさい」は私に「生きなさい」と言ったような気がしてきた。
私は真実と向き合いエルフェリアてして生きる道を選ぶことを決心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

処理中です...