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私の支度を待っている間にホーリーウッド王宮そばに屋敷を持つ高位貴族には、ゼルド王が滞在中のフェルティ王国王太子と問題を起こしたため、フェルティ王国外交ルートからの招集をしたという。私は招集された高位貴族たちの待つ広間へクリスと一緒に行くことになった。
おそらく事情説明のあとゼルド王と対応協議になるのだろう。
「リア、大丈夫?」
「クー、行けるわ。」
事前に呼び出しをしていた宰相や公爵、侯爵らが集まった広間は、皆落ち着かず、ばたついている。
クリスが入って来たことに気付いた親フェルティ派の公爵が近づいてきた。
「殿下、いったい何があったのですか。」
クリスは聞き耳を立てているであろう出席貴族に聞こえるようにはっきりとした声で応える。
「ザーレット公爵、こちらは私の大切な女性でホーリーウッドに同行して来たジャルフ伯爵令嬢です。事もあろうにゼルド王は、彼女を気に入ったからと薬をもって自分のものにしようとしたのです。なおかつ私にも毒をもり、体調を崩した私を自分の侍医に診察させ、殺させようとしました。」
「いくらなんでもそこまでするか。」
「証拠もいくつかおさえましたが、理由は彼女の顔を見ていただければわかると思います。」
「レティシアさま⁈」
「そういう事です。ゼルド王には、前王の時のこともありますから。」
「それでフェルティ王国は、何を要求されるのですか?」
「フェルティ王国王太子としてホーリーウッド王に国際裁判を要求します。私の毒殺未遂、彼女への強姦未遂並びに前国王毒殺について、すでに国際裁判所には訴えてあります。ゼルド王の処遇については、ホーリーウッド王国重鎮の皆様でお決めください。」
そこまでクリスが言うと貴族たちは騒ぎ出した。
「あの王はなんてことをしてくれたんだ。外交ルートから招集がらきた時点でまずいとは思ったが、宰相!どう責任をとりますか?」
「しかし王を廃位しても跡を継ぐ者がゼルド王の子では…」
「他に王族の血筋は…」
クリスがそのタイミングでこともなげに答える。
「皆さんの目の前にいるじゃないですか。彼女は、今はフェルティ王国ジャルフ伯爵家の養女になっていますが、前王とレティシア様の一人娘エルフェリアですよ。」
「しかし、姫さまは、火災で王妃様と亡くなったはず。」
「エルフェリアの婚約者である私が認めてレティシア様の実家ジャルフ伯爵家の養女であるのですが、まだ信じられない方には…リア。持っているペンダントの写真を見せてあげて。」
「はい。」
ペンダントの写真を見て、皆納得の方に舵を切ったようだ。確かに前王と王妃のプライベート写真を持っていてレティシア様にそっくりなのだ。
「しかし、姫さまは金髪では?」
「あの日の出来事がショックで髪色が落ちてしまい銀色になってしまったそうだ。」
まだ信じられない方に私が唯一覚えている話をすることにした。それは、一部の貴族と私しか知らない話、幼い頃父王の座る玉座に私がいたずら書きをしたこと。
「姫さまに間違いない。しかしそうなると正式な王位継承権1位のエルフェリア様にゼルド王は無体を働こうとしたということでは?」
騒がしい広間に一緒、静寂が訪れた。
ゼルドがそのまま王位についていては、非常にまずいという共通認識ができたようだ。
ちょうどそのタイミングで貴族たちが来ている事を知ったゼルドが広間に入って来た。
「お前たち、私は招集もパーティーの招待もしていないのに、なぜ集まっているのだ?しかもリアーナ嬢…王太子殿もいらしたか。」
ザーレット公爵がゼルドの前に移動した。
「ゼルド王、あなたをホーリーウッド王国高位貴族を代表して、退位勧告します。」
「何を言う。ザーレット、私がなぜ退位するのだ。」
クリスがザーレット公爵の横に立った。
「リックとルパートは押さえました。それであなたにも理解できるでしょう。近日中に国際裁判所から連絡が来ます。従わなければフェルティ王国とジャルフ伯爵家がこの国を滅ぼします。」
ゼルドは、理解したのか、床に座り込み茫然としていた。
すぐに衛兵がゼルドを連れて部屋から出て行く。おそらく貴族用の牢に入れるのだろう。
「クー、王妃様たちはどうなるの?」
「離縁して実家に帰るか修道院に入るかだろう。側妃は子どもも一緒に修道院に入って一生出ることはないはずだ。」
確かに政略結婚でほとんど飾りだった王妃を修道院に入れるのはしのびない。
「リア、これからこの国をどうしたい?私としてはリアに一緒にフェルティへ来て欲しいが。」
おそらく事情説明のあとゼルド王と対応協議になるのだろう。
「リア、大丈夫?」
「クー、行けるわ。」
事前に呼び出しをしていた宰相や公爵、侯爵らが集まった広間は、皆落ち着かず、ばたついている。
クリスが入って来たことに気付いた親フェルティ派の公爵が近づいてきた。
「殿下、いったい何があったのですか。」
クリスは聞き耳を立てているであろう出席貴族に聞こえるようにはっきりとした声で応える。
「ザーレット公爵、こちらは私の大切な女性でホーリーウッドに同行して来たジャルフ伯爵令嬢です。事もあろうにゼルド王は、彼女を気に入ったからと薬をもって自分のものにしようとしたのです。なおかつ私にも毒をもり、体調を崩した私を自分の侍医に診察させ、殺させようとしました。」
「いくらなんでもそこまでするか。」
「証拠もいくつかおさえましたが、理由は彼女の顔を見ていただければわかると思います。」
「レティシアさま⁈」
「そういう事です。ゼルド王には、前王の時のこともありますから。」
「それでフェルティ王国は、何を要求されるのですか?」
「フェルティ王国王太子としてホーリーウッド王に国際裁判を要求します。私の毒殺未遂、彼女への強姦未遂並びに前国王毒殺について、すでに国際裁判所には訴えてあります。ゼルド王の処遇については、ホーリーウッド王国重鎮の皆様でお決めください。」
そこまでクリスが言うと貴族たちは騒ぎ出した。
「あの王はなんてことをしてくれたんだ。外交ルートから招集がらきた時点でまずいとは思ったが、宰相!どう責任をとりますか?」
「しかし王を廃位しても跡を継ぐ者がゼルド王の子では…」
「他に王族の血筋は…」
クリスがそのタイミングでこともなげに答える。
「皆さんの目の前にいるじゃないですか。彼女は、今はフェルティ王国ジャルフ伯爵家の養女になっていますが、前王とレティシア様の一人娘エルフェリアですよ。」
「しかし、姫さまは、火災で王妃様と亡くなったはず。」
「エルフェリアの婚約者である私が認めてレティシア様の実家ジャルフ伯爵家の養女であるのですが、まだ信じられない方には…リア。持っているペンダントの写真を見せてあげて。」
「はい。」
ペンダントの写真を見て、皆納得の方に舵を切ったようだ。確かに前王と王妃のプライベート写真を持っていてレティシア様にそっくりなのだ。
「しかし、姫さまは金髪では?」
「あの日の出来事がショックで髪色が落ちてしまい銀色になってしまったそうだ。」
まだ信じられない方に私が唯一覚えている話をすることにした。それは、一部の貴族と私しか知らない話、幼い頃父王の座る玉座に私がいたずら書きをしたこと。
「姫さまに間違いない。しかしそうなると正式な王位継承権1位のエルフェリア様にゼルド王は無体を働こうとしたということでは?」
騒がしい広間に一緒、静寂が訪れた。
ゼルドがそのまま王位についていては、非常にまずいという共通認識ができたようだ。
ちょうどそのタイミングで貴族たちが来ている事を知ったゼルドが広間に入って来た。
「お前たち、私は招集もパーティーの招待もしていないのに、なぜ集まっているのだ?しかもリアーナ嬢…王太子殿もいらしたか。」
ザーレット公爵がゼルドの前に移動した。
「ゼルド王、あなたをホーリーウッド王国高位貴族を代表して、退位勧告します。」
「何を言う。ザーレット、私がなぜ退位するのだ。」
クリスがザーレット公爵の横に立った。
「リックとルパートは押さえました。それであなたにも理解できるでしょう。近日中に国際裁判所から連絡が来ます。従わなければフェルティ王国とジャルフ伯爵家がこの国を滅ぼします。」
ゼルドは、理解したのか、床に座り込み茫然としていた。
すぐに衛兵がゼルドを連れて部屋から出て行く。おそらく貴族用の牢に入れるのだろう。
「クー、王妃様たちはどうなるの?」
「離縁して実家に帰るか修道院に入るかだろう。側妃は子どもも一緒に修道院に入って一生出ることはないはずだ。」
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