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故郷
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アナスタシアの体調は少しずつ良くなって来たが、まだ全快には程遠い。
皇帝陛下からしばらく後宮を離れて、離宮で療養した方がいいのではないかと提案があり、リリー、レインとマリナが付いて離宮に移ることが決まった。
出発の朝、アナスタシア一行の責任者として挨拶に来たのは、エドだった。
「往復の警備及びアナスタシア様があちらに逗留中の物資補給の責任者、エドでございます。」
侍女の手前、丁寧に挨拶をしているが、アナスタシアを見てにっこりと笑ってくれた。
「片道5日程かかりますので、辛かったら言ってください。」
「はい。」
アナスタシアは、大きめの馬車の座面の間にクッションを敷き詰めた簡易ベッドに横になっての移動だったのと夜は宿屋に泊まるため、あまり疲れることはなかった。
そして到着し、馬車をエドに抱き抱えられて降りたアナスタシアが見たのは、自分の生まれ育ったクレアの城だった。
「エド…」
「慣れた場所の方がいいだろうと思って、マリナを探しに来た時に離宮に整備しておいたんだ。俺はずっと一緒にはいられないけれど、時間を作って会いに来るから、ここで療養して早く元気になって欲しい。」
エドに耳元でこっそりそう言われて、アナスタシアはうなづいた。
さすがに塔ではなく、代々王妃が使っていた部屋がアナスタシアの居室に用意されていた。
「エリザベータの使用していた趣味の悪い調度品は片付けて、アナスタシアの好みに合わせたよ。売ったお金で買い替えた。」
エドがそう言ってウィンクするので、アナスタシアは思わず笑ってしまった。
リリーやレインの手前、エドとは皇帝陛下の寵姫と陛下の命令で世話係をしている臣下の態度は崩せない。
到着して3日経ち、リリーとレインが外している時に、マリナがアナスタシアのベッドの側に来た。
「姫様は、皇帝陛下よりエド様が、お好きなのではありませんか。」
アナスタシアは顔が赤くなるので、思わず布団を上まで上げた。
「リリーさん達は気付いてないようですが、姫様とずっと一緒にいた私はごまかされませんよ。陛下と一緒にいらっしゃるところは、見たことありませんが、嘘をつけない姫様が、ふたりの男性を手玉にとるほどの事ができるわけないですから、エド様への好意がだだ漏れなことを考えるとそう答えが出ました。」
「…マリナには隠せないわね。私はエド様が好きよ。妻にするための準備をするから待っていて欲しいと言われて、この指輪を貰ったの。」
「姫様、カリアス帝国の風習をご存知ですか?」
「風習?」
「男性から女性に指輪を贈るとき、女性の瞳の色の石はあなたを愛しているで、自分の瞳の色は結婚してくださいなんですよ。」
「マリナは、なんでそんな風習を知っているの?」
「リリーさん達が、姫様の指輪見て、陛下に貰ったと思っているらしく、私に姫様は陛下のご寵愛があつく、瞳の色の指輪までいただいたのねと話していたんです。」
「それじゃリリーたちは、陛下に貰ったと思っているのね。」
「陛下の耳に入ったら、大変ですから母上様の形見とでも言っておきます。それから、そろそろエド様が来るはずですので、私は隣の控え室に移動しますね。姫様はエド様との時間を楽しんでくださいね。」
「ちょ、ちょっと待って。マリナ」
マリナと入れ違いにエドが部屋に入って来る。侍女が誰もいないので、ためらいながらアナスタシアのベッドに近づいて来た。
「アナスタシア?」
「エド様、マリナがね。2人だけの時間をくれたの。隣の控え室にいるからって。」
「そうか。俺は明後日には一旦、帝都に戻らないといけないから、その前にこんな時間をもらえてうれしいよ。」
「しばらく会えないのね。」
「次に会う時は、一緒に外へ行けるくらいに元気になっていてくれ。」
「わかったわ。がんばる。」
「頑張らなくていいから。」
そう言って、アナスタシアの頭を優しく撫でてくれた。
皇帝陛下からしばらく後宮を離れて、離宮で療養した方がいいのではないかと提案があり、リリー、レインとマリナが付いて離宮に移ることが決まった。
出発の朝、アナスタシア一行の責任者として挨拶に来たのは、エドだった。
「往復の警備及びアナスタシア様があちらに逗留中の物資補給の責任者、エドでございます。」
侍女の手前、丁寧に挨拶をしているが、アナスタシアを見てにっこりと笑ってくれた。
「片道5日程かかりますので、辛かったら言ってください。」
「はい。」
アナスタシアは、大きめの馬車の座面の間にクッションを敷き詰めた簡易ベッドに横になっての移動だったのと夜は宿屋に泊まるため、あまり疲れることはなかった。
そして到着し、馬車をエドに抱き抱えられて降りたアナスタシアが見たのは、自分の生まれ育ったクレアの城だった。
「エド…」
「慣れた場所の方がいいだろうと思って、マリナを探しに来た時に離宮に整備しておいたんだ。俺はずっと一緒にはいられないけれど、時間を作って会いに来るから、ここで療養して早く元気になって欲しい。」
エドに耳元でこっそりそう言われて、アナスタシアはうなづいた。
さすがに塔ではなく、代々王妃が使っていた部屋がアナスタシアの居室に用意されていた。
「エリザベータの使用していた趣味の悪い調度品は片付けて、アナスタシアの好みに合わせたよ。売ったお金で買い替えた。」
エドがそう言ってウィンクするので、アナスタシアは思わず笑ってしまった。
リリーやレインの手前、エドとは皇帝陛下の寵姫と陛下の命令で世話係をしている臣下の態度は崩せない。
到着して3日経ち、リリーとレインが外している時に、マリナがアナスタシアのベッドの側に来た。
「姫様は、皇帝陛下よりエド様が、お好きなのではありませんか。」
アナスタシアは顔が赤くなるので、思わず布団を上まで上げた。
「リリーさん達は気付いてないようですが、姫様とずっと一緒にいた私はごまかされませんよ。陛下と一緒にいらっしゃるところは、見たことありませんが、嘘をつけない姫様が、ふたりの男性を手玉にとるほどの事ができるわけないですから、エド様への好意がだだ漏れなことを考えるとそう答えが出ました。」
「…マリナには隠せないわね。私はエド様が好きよ。妻にするための準備をするから待っていて欲しいと言われて、この指輪を貰ったの。」
「姫様、カリアス帝国の風習をご存知ですか?」
「風習?」
「男性から女性に指輪を贈るとき、女性の瞳の色の石はあなたを愛しているで、自分の瞳の色は結婚してくださいなんですよ。」
「マリナは、なんでそんな風習を知っているの?」
「リリーさん達が、姫様の指輪見て、陛下に貰ったと思っているらしく、私に姫様は陛下のご寵愛があつく、瞳の色の指輪までいただいたのねと話していたんです。」
「それじゃリリーたちは、陛下に貰ったと思っているのね。」
「陛下の耳に入ったら、大変ですから母上様の形見とでも言っておきます。それから、そろそろエド様が来るはずですので、私は隣の控え室に移動しますね。姫様はエド様との時間を楽しんでくださいね。」
「ちょ、ちょっと待って。マリナ」
マリナと入れ違いにエドが部屋に入って来る。侍女が誰もいないので、ためらいながらアナスタシアのベッドに近づいて来た。
「アナスタシア?」
「エド様、マリナがね。2人だけの時間をくれたの。隣の控え室にいるからって。」
「そうか。俺は明後日には一旦、帝都に戻らないといけないから、その前にこんな時間をもらえてうれしいよ。」
「しばらく会えないのね。」
「次に会う時は、一緒に外へ行けるくらいに元気になっていてくれ。」
「わかったわ。がんばる。」
「頑張らなくていいから。」
そう言って、アナスタシアの頭を優しく撫でてくれた。
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