月光の乙女と漆黒の覇王

里中一叶

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正妃

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少しずつ回復していくアナスタシアに故郷の風は優しく、のんびりと過ごしていたが、用事で帝都に行って来たリリーの土産話によって、のんびりムードは一気に消し去られてしまった。

「おめでとうございます。陛下がアナスタシア様を側妃から正妃にする準備をされているそうですよ。」
「すごいわ。」

リリーと一緒にレインが喜ぶが、マリナは倒れそうになるアナスタシアの背中を支えて優しく撫でて確認する。

「リリーさん。それはどこからの話ですか。」
「今回、帝都に行った目的の用事を済ませに宮の事務局に行ったんですが、そこの職員さんが私たちが戻る時にあわせて正妃の宮に引っ越しだねって言われたんです。療養中に正妃の宮の整備と荷物を移動させているそうですよ。」
「リリー、それって先にアナスタシア様に言っちゃダメだったんじゃないの。絶対に陛下はサプライズプレゼントにしたかったんだと思うよ。」

リリーがレインに突っ込まれて、まずいという顔をしているが、それ以上にアナスタシアはショックを受けていた。

側妃なら臣下へ下げ渡しという前例があるが、寵姫と言われ正妃に据えるというなら手放す気はないだろうし、万が一陛下が亡くなっても誰にも再嫁できないので、修道院に入るしかない。
エド様は、陛下に言ったのだろうか。それとも言う前にこうなってしまったのだろうか。

陛下の寵姫を望んだと知られて、エドが閑職に追いやられたり、会えなくなるような遠い場所に行ってしまわないかと心配になってくる。

「姫様?」
「マリナ、少し疲れたから横になるわ。」
「リリーさん、レインさん。姫様をベッドにお連れしますので、こちらの片付けをお願いします。」
「は、はい。」

ベッドまで連れて行ってもらい、横になる。

「姫様、もしエド様が迎えに来たら、後のことは私に任せて一緒にお逃げください。陛下は、今姫様を気に入っていらっしゃるとは言え、他の人を好きだと知ったら、今までの噂の女たちのように、ある日突然いなくなるという目に合わせるかもしれませんし、姫様もエド様と離れたくないでしょう。」
「でもマリナ、あなたが危険だわ。」
「私は、姫様があの日、ひとりでクレアを守ってくださったおかげで、助かったと感謝しております。グレゴリー様が見つかり、処分を受けた以上、姫様が縛られるものはないと思います。」
「マリナ、大丈夫よ。私はエド様もあなたも守るためなら、何でもするわ。ただ、私が正妃になったら、私の側にいてくれる?」
「もちろんです。」
「エド様が次に来た時には、お別れを言わないとね。怒られるかもしれないけど、こちらからさよならを言って離れないと陛下からエド様を守れないもの。」
「エド様が来たら、お2人で会えるようにしますね。」



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