16 / 17
告白
しおりを挟む
ぐっすり眠って目が覚めた時には、だいぶ疲れも取れていた。
到着した時は、昼間だったのにすっかり暗くなっている。
「姫様、目が覚めましたか。」
「ん…」
「陛下が一緒に夕食をとの事でしたので、お支度しましょう。レインさん、陛下へ姫様が目を覚ましたとお伝えしていただけますか。」
「はい。行ってきます。」
動きやすいワンピースに着替え、髪は軽く結ってもらう。
「食事は、どこへ行けばいいの。」
「案内が来るそうですから、もう少しお待ちください。」
ソファーに座って待っているとなぜか陛下がやって来た。
「目が覚めたか。」
「はい。お待たせして、済みません。もうだいぶ遅い時間ではないですか。」
「大丈夫だ。いつも仕事を片付けてから、食事にするからそんなに変わらない。」
アナスタシアはまた抱き上げられ、お姫様抱っこで食堂に移動する。付き添いは陛下が断ったので、2人きりだ。
「陛下、少しなら歩けます。」
「私が、こうしたいのだ。次に会う時は元気になって一緒に散歩できるようになるのを待っていたんだが…無理に帝都へ戻してしまった。」
アナスタシアの頭に?が浮かぶ。同じことをエド様には言われたけれど、陛下とはそんな話をしたかしら。
食堂には2人用のテーブルと2脚のいすがあり、向かい合わせに座る。部屋には給事の使用人も人払いされ、コース料理ではなくワンプレートに料理が用意されていた。あっという間に食事は終わり、食後のお茶をアナスタシアがいれた。
「陛下は、これで足りますか?」
「遅い時間にたくさん食べるともたれるから、充分だ。」
「私のせいですね。」
「あ、いや。いつもこんなもんだ。ここか執務室でとるから簡単なものが多い。」
「ここは、陛下の?」
「ここは、私の寝起きしている宮だ。その中にアナスタシア用のスペースを作ったんだ。寝室は一緒にしたが、別に専用の居室もあるから、普段はそこで過ごせる。」
「私以外の側妃の方が、それだと…」
「誰もいないよ。」
「えっ?」
「アナスタシアがここに来た日から後宮には誰もいなかった。私は、気に入らない女性が下げ渡されたり、行方不明になったりするという噂を放置していただけなんだ。」
「それは、どう言うことですか。」
「即位してすぐに早く妻を娶れ、子を成せと周りからうるさく言われて、まず近しい位置を狙う貴族の娘が何人か来た。その中には恋人と別れさせられて来たものがいたんだ。一応皇帝の命令ならみんな聞くから、寝所で一晩話だけして、気に入らなかったと元々の恋人に下げ渡す。向こうからすり寄ってくる女は、放っておくと勝手に浮気してくれたから、処分した事にして、名前を変えさせて、そいつのところに押し付けた。」
「あ、あの…」
「アナスタシアに一目惚れしてから、他の誰もいらないと思っていた。私は…あーもう面倒だ。俺はお前だけがいればいいんだ。ちゃんと迎えに行って、あの離宮で話したかったのに、伯父上が余計なことするから、予定がくるったじゃないかぁ。」
「陛下?」
「いいかげん、名前を呼んで欲しい。」
「それは…」
「いつものように俺の名前を呼んでくれ。」
「エド様?」
アナスタシアは陛下の名前を呼んだ事はない、名前で呼んでいたのはただひとり。
そこにいるのは髪は黒いが、確かに優しいけれど、ちょっとやんちゃな雰囲気のエドに間違いなかった。
「改めて、アレックス・エドワード・カリアスは、アナスタシア・クレアキンをただひとりの妻に迎えたいが受けてもらえるか?」
「はい。喜んで。」
その瞬間、優しく抱きしめられて額にキスを落とされた。
「アナスタシア、黙っていてごめん。陛下の側妃が良かったら、そのまま皇帝らしくしていようと思っていた。だが、何にもないエドをアナスタシアが好きになってくれたから、ちゃんとアナスタシアと2人で歩けるように準備して来たんだ。もし、それが周りに認められなければ、皇帝は誰かに譲って、ただのエドとしてアナスタシアを連れて、どこかへ行くつもりだったから言えなかった。」
「エド様。私でいいのですか。」
「お前がいい。お前じゃなきゃダメだ。」
「はい。」
「ところでエド様って?」
「昔、伯父上の所にいた頃、屋敷を抜け出して、オーウェン将軍のところで剣を習ったり、街で諜報活動の手伝いをしていたんだ。だから、クレアに行った時も皇帝には身代わりを置いて自分で動いていた。オーウェン将軍は、俺の事わかっているから自分の側仕えの振りをしていた。」
「茶色の髪は、カツラだったのね。でも地はエド様ね。」
「そう。漆黒の覇王っていうより、諜報活動しているエドの方が自分にしっくり来る。」
「私は陛下の元に残るから、エド様を諦めようと思っていたのよ。」
「それは、本当にごめん。」
「でもどちらも同じ人で良かった。」
「なんで?」
「だって…私の初めての人がエド様だって…」
「アナスタシア、なんてかわいいんだよ。」
エドは、さらに強く抱きしめ指輪の石にキスをする。
「今度は黒い石の指輪を送るよ。」
到着した時は、昼間だったのにすっかり暗くなっている。
「姫様、目が覚めましたか。」
「ん…」
「陛下が一緒に夕食をとの事でしたので、お支度しましょう。レインさん、陛下へ姫様が目を覚ましたとお伝えしていただけますか。」
「はい。行ってきます。」
動きやすいワンピースに着替え、髪は軽く結ってもらう。
「食事は、どこへ行けばいいの。」
「案内が来るそうですから、もう少しお待ちください。」
ソファーに座って待っているとなぜか陛下がやって来た。
「目が覚めたか。」
「はい。お待たせして、済みません。もうだいぶ遅い時間ではないですか。」
「大丈夫だ。いつも仕事を片付けてから、食事にするからそんなに変わらない。」
アナスタシアはまた抱き上げられ、お姫様抱っこで食堂に移動する。付き添いは陛下が断ったので、2人きりだ。
「陛下、少しなら歩けます。」
「私が、こうしたいのだ。次に会う時は元気になって一緒に散歩できるようになるのを待っていたんだが…無理に帝都へ戻してしまった。」
アナスタシアの頭に?が浮かぶ。同じことをエド様には言われたけれど、陛下とはそんな話をしたかしら。
食堂には2人用のテーブルと2脚のいすがあり、向かい合わせに座る。部屋には給事の使用人も人払いされ、コース料理ではなくワンプレートに料理が用意されていた。あっという間に食事は終わり、食後のお茶をアナスタシアがいれた。
「陛下は、これで足りますか?」
「遅い時間にたくさん食べるともたれるから、充分だ。」
「私のせいですね。」
「あ、いや。いつもこんなもんだ。ここか執務室でとるから簡単なものが多い。」
「ここは、陛下の?」
「ここは、私の寝起きしている宮だ。その中にアナスタシア用のスペースを作ったんだ。寝室は一緒にしたが、別に専用の居室もあるから、普段はそこで過ごせる。」
「私以外の側妃の方が、それだと…」
「誰もいないよ。」
「えっ?」
「アナスタシアがここに来た日から後宮には誰もいなかった。私は、気に入らない女性が下げ渡されたり、行方不明になったりするという噂を放置していただけなんだ。」
「それは、どう言うことですか。」
「即位してすぐに早く妻を娶れ、子を成せと周りからうるさく言われて、まず近しい位置を狙う貴族の娘が何人か来た。その中には恋人と別れさせられて来たものがいたんだ。一応皇帝の命令ならみんな聞くから、寝所で一晩話だけして、気に入らなかったと元々の恋人に下げ渡す。向こうからすり寄ってくる女は、放っておくと勝手に浮気してくれたから、処分した事にして、名前を変えさせて、そいつのところに押し付けた。」
「あ、あの…」
「アナスタシアに一目惚れしてから、他の誰もいらないと思っていた。私は…あーもう面倒だ。俺はお前だけがいればいいんだ。ちゃんと迎えに行って、あの離宮で話したかったのに、伯父上が余計なことするから、予定がくるったじゃないかぁ。」
「陛下?」
「いいかげん、名前を呼んで欲しい。」
「それは…」
「いつものように俺の名前を呼んでくれ。」
「エド様?」
アナスタシアは陛下の名前を呼んだ事はない、名前で呼んでいたのはただひとり。
そこにいるのは髪は黒いが、確かに優しいけれど、ちょっとやんちゃな雰囲気のエドに間違いなかった。
「改めて、アレックス・エドワード・カリアスは、アナスタシア・クレアキンをただひとりの妻に迎えたいが受けてもらえるか?」
「はい。喜んで。」
その瞬間、優しく抱きしめられて額にキスを落とされた。
「アナスタシア、黙っていてごめん。陛下の側妃が良かったら、そのまま皇帝らしくしていようと思っていた。だが、何にもないエドをアナスタシアが好きになってくれたから、ちゃんとアナスタシアと2人で歩けるように準備して来たんだ。もし、それが周りに認められなければ、皇帝は誰かに譲って、ただのエドとしてアナスタシアを連れて、どこかへ行くつもりだったから言えなかった。」
「エド様。私でいいのですか。」
「お前がいい。お前じゃなきゃダメだ。」
「はい。」
「ところでエド様って?」
「昔、伯父上の所にいた頃、屋敷を抜け出して、オーウェン将軍のところで剣を習ったり、街で諜報活動の手伝いをしていたんだ。だから、クレアに行った時も皇帝には身代わりを置いて自分で動いていた。オーウェン将軍は、俺の事わかっているから自分の側仕えの振りをしていた。」
「茶色の髪は、カツラだったのね。でも地はエド様ね。」
「そう。漆黒の覇王っていうより、諜報活動しているエドの方が自分にしっくり来る。」
「私は陛下の元に残るから、エド様を諦めようと思っていたのよ。」
「それは、本当にごめん。」
「でもどちらも同じ人で良かった。」
「なんで?」
「だって…私の初めての人がエド様だって…」
「アナスタシア、なんてかわいいんだよ。」
エドは、さらに強く抱きしめ指輪の石にキスをする。
「今度は黒い石の指輪を送るよ。」
10
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので隣国に逃げたら、溺愛公爵に囲い込まれました
鍛高譚
恋愛
婚約破棄の濡れ衣を着せられ、すべてを失った侯爵令嬢フェリシア。
絶望の果てに辿りついた隣国で、彼女の人生は思わぬ方向へ動き始める。
「君はもう一人じゃない。私の護る場所へおいで」
手を差し伸べたのは、冷徹と噂される隣国公爵――だがその本性は、驚くほど甘くて優しかった。
新天地での穏やかな日々、仲間との出会い、胸を焦がす恋。
そして、フェリシアを失った母国は、次第に自らの愚かさに気づいていく……。
過去に傷ついた令嬢が、
隣国で“執着系の溺愛”を浴びながら、本当の幸せと居場所を見つけていく物語。
――「婚約破棄」は終わりではなく、始まりだった。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます
藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。
彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。
直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。
だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。
責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。
「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」
これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~
深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
婚約破棄されたスナギツネ令嬢、実は呪いで醜くなっていただけでした
宮之みやこ
恋愛
細すぎる一重の目に、小さすぎる瞳の三百眼。あまりの目つきの悪さに、リュシエルが婚約者のハージェス王子に付けられたあだ名は『スナギツネ令嬢』だった。
「一族は皆美形なのにどうして私だけ?」
辛く思いながらも自分にできる努力をしようと頑張る中、ある日ついに公の場で婚約解消を言い渡されてしまう。どうやら、ハージェス王子は弟のクロード王子の婚約者であるモルガナ侯爵令嬢と「真実の愛」とやらに目覚めてしまったらしい。
(この人たち、本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる