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馬車の移動と休憩、宿での宿泊の生活に疲れ始めた5日目の午後、王都の公爵邸に到着した。
王都の中でも公爵邸は大きいらしく最初、王宮かと思ってしまうほど広く、建物も大きい。
「これが公爵邸ですか。迷子になりそう…」
「自分の担当以外は、ほとんど知らないですよ。全て把握しているのは、統括の執事長とメイド長と旦那様くらいです。」
オリバーさんの言葉にちょっとホッとする。
「ただ大まかな位置と自分の担当場所は知っていないと本当に迷子になりますよ。」
「ですよね。がんばります。」
到着してすぐに公爵の執務室に連れて行かれた。部屋には公爵と奥様が待っていた。
「はじめまして。モルトン伯爵が娘、セリーナでございます。」
今日は、まだ使用人ではないので、令嬢として挨拶する。
「セリーナ、来てもらって早々だが、話があるので座ってくれ。」
「はい。」
奥様は、目の前に座った私を見て何か言いたげに視線を動かしている。
「あ、あなた。本当に…」
「そうだな。私から話そう。」
2人の間で何か話がまとまったようで公爵がこちらに向き直る。
「セリーナ、これから話す内容は、他言無用だ。いいな。」
貴族にはいろんな事情があるのは、私だってわかっているのでうなづく。
「私たちにはセリーナと同じ17歳になるアイリスという娘がいる。先日、王太子の花嫁候補5人の1人に選ばれた。」
私の住むカートランド王国の王太子様は現在22歳。まだ実物は見たことがない…お会いしたことはないがかなりステキな方らしい。その王太子様のお相手として、5人の令嬢が選ばれて3ヶ月王宮で過ごした後、一番相応しい令嬢を婚約者に選定するそうだ。
「ところがアイリスは現在とある理由で王宮にあげることができない。公爵家でなおかつ宰相としては、ほかの貴族の手前、辞退ではなく、王太子に選ばれなかったという立場をとりたいのだ。王宮に貸しを作りたくないのもある。という訳でセリーナにはアイリスとして王太子の花嫁候補を3ヶ月つとめて欲しい。報酬は、口止め料込みで3000ポルトだ。」
3000ポルトと言えば、うちの領地の2年分の収入、あるところにはあるんだなと思うが、それだけ大変なことなんじゃないのか?
「すみません。私がアイリス様じゃないって、すぐにわかってしまうと思いますが。」
「セリーナは、アイリスによく似ている。アイリスの写真だ。」
写真のアイリス様は、私より淡い色の瞳が違うだけで、鏡を見ているようにそっくりだった。
「エレナ、あなたのお母様と私は従姉妹だけれど姉妹のようだと言われるほど似ているから、大丈夫だろうと来てもらったのよ。まさかここまで似ているとはとびっくりしたわ。」
奥様が言う通り、奥様とお母様は良く似ている。だから私とアイリス様も似ているのだろう。ただ、
顔は似ているけれど、儚げなお姫様と田舎の貧乏伯爵家で家のために働く逞しい長女な私とはかなり違うと思う。とは言え、嫌とは言えない。支度金使っちゃったし、報酬もいい。
「精一杯頑張りますから、色々教えてください。公爵様、私は3ヶ月間、王宮で候補の中、目立たずにアイリス様の振りをして過ごしてくればいいんですよね?終われば家に帰れるということで。」
「そうだ。念のためアイリス付きの侍女を王宮行きに付けるから、困ったときは、頼ればいい。」
「ところで、アイリス様はどうして王太子様のお相手にならないのですか?途中で入れ替わるという可能性もありますか?」
「アイリスはなんというか…うちの執事の1人チャーリーと駆け落ちして…いま行方を探しているんだ。」
「はあ…」
そりゃ、隠したい話だわ。
「見つけたら連れ戻すつもりだが、場合によっては、しばらく領地の屋敷の別棟に2人で住まわせて、ゆくゆくはチャーリーを養子にすることも考えている。いまそのことが他の貴族にバレるのは非常にまずいのだ。」
「…わかりました。そう言う理由なんですね。ひとつお願いがあるのですが…」
「なんだ?」
「おそらく3ヶ月の間に私の弟が進学の為、王都にやって来ます。私に会いに来る可能性があるので、その対応をお願いしたいんです。」
「わかった。そちらはなんとかしよう。」
そこで大事なことに気付いた。
「3ヶ月後、私がこの屋敷にいたら、都合悪いですよね?アイリス様の偽物になるんですから…そこでクビですか?」
「その後は、また考えるから心配しなくても大丈夫だ。」
王都の中でも公爵邸は大きいらしく最初、王宮かと思ってしまうほど広く、建物も大きい。
「これが公爵邸ですか。迷子になりそう…」
「自分の担当以外は、ほとんど知らないですよ。全て把握しているのは、統括の執事長とメイド長と旦那様くらいです。」
オリバーさんの言葉にちょっとホッとする。
「ただ大まかな位置と自分の担当場所は知っていないと本当に迷子になりますよ。」
「ですよね。がんばります。」
到着してすぐに公爵の執務室に連れて行かれた。部屋には公爵と奥様が待っていた。
「はじめまして。モルトン伯爵が娘、セリーナでございます。」
今日は、まだ使用人ではないので、令嬢として挨拶する。
「セリーナ、来てもらって早々だが、話があるので座ってくれ。」
「はい。」
奥様は、目の前に座った私を見て何か言いたげに視線を動かしている。
「あ、あなた。本当に…」
「そうだな。私から話そう。」
2人の間で何か話がまとまったようで公爵がこちらに向き直る。
「セリーナ、これから話す内容は、他言無用だ。いいな。」
貴族にはいろんな事情があるのは、私だってわかっているのでうなづく。
「私たちにはセリーナと同じ17歳になるアイリスという娘がいる。先日、王太子の花嫁候補5人の1人に選ばれた。」
私の住むカートランド王国の王太子様は現在22歳。まだ実物は見たことがない…お会いしたことはないがかなりステキな方らしい。その王太子様のお相手として、5人の令嬢が選ばれて3ヶ月王宮で過ごした後、一番相応しい令嬢を婚約者に選定するそうだ。
「ところがアイリスは現在とある理由で王宮にあげることができない。公爵家でなおかつ宰相としては、ほかの貴族の手前、辞退ではなく、王太子に選ばれなかったという立場をとりたいのだ。王宮に貸しを作りたくないのもある。という訳でセリーナにはアイリスとして王太子の花嫁候補を3ヶ月つとめて欲しい。報酬は、口止め料込みで3000ポルトだ。」
3000ポルトと言えば、うちの領地の2年分の収入、あるところにはあるんだなと思うが、それだけ大変なことなんじゃないのか?
「すみません。私がアイリス様じゃないって、すぐにわかってしまうと思いますが。」
「セリーナは、アイリスによく似ている。アイリスの写真だ。」
写真のアイリス様は、私より淡い色の瞳が違うだけで、鏡を見ているようにそっくりだった。
「エレナ、あなたのお母様と私は従姉妹だけれど姉妹のようだと言われるほど似ているから、大丈夫だろうと来てもらったのよ。まさかここまで似ているとはとびっくりしたわ。」
奥様が言う通り、奥様とお母様は良く似ている。だから私とアイリス様も似ているのだろう。ただ、
顔は似ているけれど、儚げなお姫様と田舎の貧乏伯爵家で家のために働く逞しい長女な私とはかなり違うと思う。とは言え、嫌とは言えない。支度金使っちゃったし、報酬もいい。
「精一杯頑張りますから、色々教えてください。公爵様、私は3ヶ月間、王宮で候補の中、目立たずにアイリス様の振りをして過ごしてくればいいんですよね?終われば家に帰れるということで。」
「そうだ。念のためアイリス付きの侍女を王宮行きに付けるから、困ったときは、頼ればいい。」
「ところで、アイリス様はどうして王太子様のお相手にならないのですか?途中で入れ替わるという可能性もありますか?」
「アイリスはなんというか…うちの執事の1人チャーリーと駆け落ちして…いま行方を探しているんだ。」
「はあ…」
そりゃ、隠したい話だわ。
「見つけたら連れ戻すつもりだが、場合によっては、しばらく領地の屋敷の別棟に2人で住まわせて、ゆくゆくはチャーリーを養子にすることも考えている。いまそのことが他の貴族にバレるのは非常にまずいのだ。」
「…わかりました。そう言う理由なんですね。ひとつお願いがあるのですが…」
「なんだ?」
「おそらく3ヶ月の間に私の弟が進学の為、王都にやって来ます。私に会いに来る可能性があるので、その対応をお願いしたいんです。」
「わかった。そちらはなんとかしよう。」
そこで大事なことに気付いた。
「3ヶ月後、私がこの屋敷にいたら、都合悪いですよね?アイリス様の偽物になるんですから…そこでクビですか?」
「その後は、また考えるから心配しなくても大丈夫だ。」
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