10 / 37
10.
しおりを挟む
「これでしばらくは見つからないはずね。」
使用人部屋には何もなく、2人で身を寄せ合い床にそのまま座る。
「そうですね。ただ助けに来た方も気づかない可能性があります。」
「男たちに気づかないで、連絡する方法か。」
「もしオリバーが来ていれば…ちょっと試していいですか?」
マリーが首から下げていたペンダントのようなものを外して口にあてるとフクロウの鳴き声のような音がする。
「鳥笛?」
「オリバーの手作りです。彼の出身地の名産で上から吹くとフクロウ、下から吹くとひばりだったかしら?の鳴き声がするんですよ。」
静かになってすぐに外から2回フクロウの鳴き声がした。
「迎えが来ました。」
オリバーさんに感謝だ。マリーに渡してくれていたおかげで助かった。
男たちの叫び声と剣の擦れる音がして静かになった頃、廊下側からフクロウの鳴き声がする。マリーが返すと
「マリー!」
オリバーさんの声がして、マリーは部屋のドアを開けた。
マリーを抱きしめるオリバーさんに納得すると同時に危険に巻き込んで申し訳なく思う。
「オリバーさん。マリーを巻き込んで、ごめんなさい。」
「いえ、お嬢様。守りきれなかった我々の責任です。妻はあなたを守るべきところ、助けていただきありがとうございます。」
「つま⁈マリーって結婚してたの?」
「はい。子どももおりますよ。」
3人で話していると公爵様と執事長が現れた。
「無事か?」
「はい。ご心配をおかけしました。」
そう言うとホッとしたような顔で公爵様が抱きしめてくれた。
「セリーナ、無事で良かった。君に何かあったら伯爵や夫人に顔向け出来なかったよ。」
短い間だけど親子のように思ってくれていたのだと嬉しい。
男たちは警護兵に引き渡され、私はこれを理由として王宮には戻らず、公爵邸でしばらくアイリス様として過ごし、その後公爵領に静養に行くと見せかけて実家に戻ることになった。
「アイリス。お客様よ。」
公爵夫人がサンルームで読書している私のところに来たのは、事件から1週間ほど経つ頃だった。
「お客様?」
「アイリス嬢、遅くなってすまない。少しは元気になったか。」
公爵夫人の後ろから現れたのは、薔薇の花束を持った王太子殿下だった。
「王太子殿下、お見舞いくださりありがとうございます。けれど私は、候補を外れましたのでもうお越しにならないでください。私は、これから領地にてしばらく過ごす予定ですし、もう個人的にお会いすることもないと思います。」
「公爵からは無事だったと聞いている。問題ないだろう。」
「私はもう候補ではありません。お帰りくださらないのであれば、私が御前を失礼させていただきます。」
ここまですれば、諦めてくれるだろう。早く伯爵領に帰りたい。流れてくる涙を拭いて私は部屋に戻るのだった。
使用人部屋には何もなく、2人で身を寄せ合い床にそのまま座る。
「そうですね。ただ助けに来た方も気づかない可能性があります。」
「男たちに気づかないで、連絡する方法か。」
「もしオリバーが来ていれば…ちょっと試していいですか?」
マリーが首から下げていたペンダントのようなものを外して口にあてるとフクロウの鳴き声のような音がする。
「鳥笛?」
「オリバーの手作りです。彼の出身地の名産で上から吹くとフクロウ、下から吹くとひばりだったかしら?の鳴き声がするんですよ。」
静かになってすぐに外から2回フクロウの鳴き声がした。
「迎えが来ました。」
オリバーさんに感謝だ。マリーに渡してくれていたおかげで助かった。
男たちの叫び声と剣の擦れる音がして静かになった頃、廊下側からフクロウの鳴き声がする。マリーが返すと
「マリー!」
オリバーさんの声がして、マリーは部屋のドアを開けた。
マリーを抱きしめるオリバーさんに納得すると同時に危険に巻き込んで申し訳なく思う。
「オリバーさん。マリーを巻き込んで、ごめんなさい。」
「いえ、お嬢様。守りきれなかった我々の責任です。妻はあなたを守るべきところ、助けていただきありがとうございます。」
「つま⁈マリーって結婚してたの?」
「はい。子どももおりますよ。」
3人で話していると公爵様と執事長が現れた。
「無事か?」
「はい。ご心配をおかけしました。」
そう言うとホッとしたような顔で公爵様が抱きしめてくれた。
「セリーナ、無事で良かった。君に何かあったら伯爵や夫人に顔向け出来なかったよ。」
短い間だけど親子のように思ってくれていたのだと嬉しい。
男たちは警護兵に引き渡され、私はこれを理由として王宮には戻らず、公爵邸でしばらくアイリス様として過ごし、その後公爵領に静養に行くと見せかけて実家に戻ることになった。
「アイリス。お客様よ。」
公爵夫人がサンルームで読書している私のところに来たのは、事件から1週間ほど経つ頃だった。
「お客様?」
「アイリス嬢、遅くなってすまない。少しは元気になったか。」
公爵夫人の後ろから現れたのは、薔薇の花束を持った王太子殿下だった。
「王太子殿下、お見舞いくださりありがとうございます。けれど私は、候補を外れましたのでもうお越しにならないでください。私は、これから領地にてしばらく過ごす予定ですし、もう個人的にお会いすることもないと思います。」
「公爵からは無事だったと聞いている。問題ないだろう。」
「私はもう候補ではありません。お帰りくださらないのであれば、私が御前を失礼させていただきます。」
ここまですれば、諦めてくれるだろう。早く伯爵領に帰りたい。流れてくる涙を拭いて私は部屋に戻るのだった。
23
あなたにおすすめの小説
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)
モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。
そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!?
「わん!」(なんでよ!)
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
当て馬失恋した私ですが気がついたら護衛騎士に溺愛されてました。
ぷり
恋愛
ミルティア=アシュリードは、伯爵家の末娘で14歳の少女。幼い頃、彼女は王都の祭りで迷子になった時、貧民街の少年ジョエルに助けられる。その後、彼は彼女の護衛となり、ミルティアのそばで仕えるようになる。ただし、このジョエルはとても口が悪く、ナマイキな護衛になっていった。
一方、ミルティアはずっと、幼馴染のレイブン=ファルストン、18歳の辺境伯令息に恋をしていた。そして、15歳の誕生日が近づく頃、伯爵である父に願い、婚約をかなえてもらう。
デビュタントの日、レイブンにエスコートしてもらい、ミルティアは人生最高の社交界デビューを迎えるはずだったが、姉とレイブンの関係に気づいてしまう……。
※残酷な描写ありは保険です。
※完結済作品の投稿です。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる