私は悪役令嬢のはずだけどお兄様の小姑役だけ全うしたい。

里中一叶

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「はい、今日のダンスの授業は、いつものペアで踊ったあと、違う人3人と踊ってもらいます。自分のパートナーと比べて、良いところ悪いところをレポートで提出になります。」
「チッ。」

アーノルド、いま舌打ちした⁈
完璧王子が何してるの?

「アーノルド?」
「エイミー以外は、触れたくないんだけど、仕方ないね。王子様の仮面被ってやってくるよ。でもエイミーは、無理しなくていいからね。やりたくないなら…と言うか、やらせたくないな。」
「アーノルド、授業だから仕方ないでしょ?」
「とりあえずお手をどうぞ。私のお姫様。」

アーノルドと一曲目を踊る。リードがうまいだけでなく、私の癖も分かっていてサポートしてくれるので、とても踊りやすい。
最近、アーノルドとしか踊っていないから、比較してみようと考えて、次のパートナーを探そうと首を回す前にアラン王子に手を取られた。

「エイミー。ダンスの授業を取ってくれたから、久しぶりに踊れるな。」

アラン王子は、相変わらず強引だった。どちらかというと自分の思った通りに相手が合わせるものと思っているリードで、振り回されるばかりだ。
それでも、幼い頃からダンスを叩き込まれている私には、水面下で必死に脚をかいていることを分からせない水鳥のようにアラン王子に合わせていく。
さすがにアーノルドの時より、疲労感が半端ないが。

「やはりエイミーとは、相性がいいんだな。ちゃんとリードについて来てくれる。」
「いえ、私は、まだまだアラン殿下と一緒に踊れるレベルではありません。」

謙遜してこたえるが、内心
『あなたと一緒に踊りたい気持ちのレベルではありません。』なんですけれど。

最後は誰と踊ろうかと思って辺りを見たが、既にペアが出来ていて女子が1人余るこの展開は、先生とのパターンだと気付いた。本来なら男女同数なのだが、今日はたまたま男子が1人欠席しているらしかった。

「先生、お願いします。」
「ギルフォード様。よろしく。」

手をとって踊り始める。
先生は、上手だがアーノルドより少し踊りにくい。何が違うのだろう。そこで気付く。先生は、生徒が基本通りのステップを踏めるように踊る、教本のようなダンスだが、アーノルドは基本はちゃんと押さえた上で私が疲れず楽しく踊れるようにサポートしてくれていたのだと。
やはりアーノルドがいいなぁと探すと割と近くで聖女様と踊っていた。楽しそうに頬を染めて笑う聖女様と王子様のダンス。
スチルでは、アラン王子と聖女様だったと思うけれど、アーノルドの方が、THE王子様という感じで更にキラキラしている。

私の心が、軋んだ音がしたような気がして辛くなる。
やはりアーノルドも攻略対象なら聖女様に心を奪われてしまうのかしら?
私がこれ以上、アーノルドを好きになってしまったら、やきもちから聖女様を虐めてしまいそうだ。
そうしたら、断罪されてしまうのだろう。やはりこの気持ちに蓋をして、お兄様と領地に引っ込んだ方がいいのかも?

「はい。今日はこれで終了です。レポートは次の授業までに書いてくるように。では、解散。」
「「ありがとうございました。」」

授業が終わって、更衣室でダンス用のドレスから制服に着替えて、アーノルドを待たずにランチを食べにカフェテリアに向かった。
いま会ったら、泣いてしまいそうだったから…


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