私は悪役令嬢のはずだけどお兄様の小姑役だけ全うしたい。

里中一叶

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ギルフォード公爵領邸で1ヶ月以上寝込んでいたことになっていた私は、そのままベッドで両親とお兄様との対面となった。

3人にはとにかく泣かれた。

「心配かけてごめんなさい。」
「帰って来てくれて良かったよ。そのままここにいようか。」

お兄様の提案に乗れないことを話さないといけない。

「お父様、お母様、お兄様。私はアーノルドと結婚します。」
「あんな事があったから、家を出たんだろう。無理しなくても…」

一番心配そうなお兄様に答える。

「アーノルドの子がお腹にいます。それに私もアーノルドを支えると決めました。」
「はぁ?どういう事だ。アーノルド。」

お父様とお兄様が部屋の気温を10度くらい落としたような気がする。

「あの日、エイミーを抱いたのは、あいつの影にエイミーが怯えていたから。だから、謝る気はない。それにアルヴィン、誰に口をきいているつもりだ。」

途端にお兄様の態度がすっと改まる。

「失礼致しました。殿下。」

「ギルフォード公爵には、正式な婚姻前に妊娠させてしまって外聞が悪いかもしれないが、すでに婚約中であり、了承してくれるな。」
「娘をバカから救った上、醜聞から守り、更に大切にしていただき感謝いたします。しかし父親としては、順番は守っていただきたかったと愚痴は申したいですね。」
「まぁ、そこはな。私も一晩で出来るとは思っていなかったというか…」

なんとなくしどろもどろになったアーノルドを見てお母様と私は顔を見合わせて笑う。
お母様が、お父様とお兄様に話し始めた。

「あなた、アルヴィン。アーノルドは、エイミーの心を守ったご褒美に子どもを授かったのよ。それは、あの日他の誰にも出来ない事だし、迷惑かけたくないと家を出たエイミーが、戻る気になったのも子どもの存在とアーノルドの説得であって、私達は何もできなかったでしょうね。それにそのままキャンベルに連れて行っても私達は文句言えないのに、態々ここに連れて来てくれた御礼もしっかりと言ってないんじゃなくて?」
「たしかに。殿下。娘を連れて帰っていただいた御礼を申し上げず、失礼致しました。」

アーノルドはうなづくと話を続けた。

「ギルフォード公爵、この点だけは申し訳ないが、この状態でエイミーをギルフォード公爵家に置いておくわけにもいかないので、エイミーの体調をみて、なるべく早くキャンベルで婚姻の儀を行うつもりだが良いか。」
「はい。」
「いまなら、お腹が目立つ前に正妃に出来るから、エイミーにもいいと思う。」
「お心遣いに感謝いたします。」

こうして家族水入らずな時間は、私のための移動準備が出来るまで数日間と駆け足で決まった。

お父様とお兄様が部屋を出て行き、お母様とアーノルドと私の3人になるとアーノルドは、お母様には頭を下げた。

「伯母上、お口添えありがとうございます。」
「いいのよ、エミルフェシアの事、お願いね。まぁ頼まなくてもあなたは守ってくれるだろうけれど。エイミー、もう分かっているだろうけれど、キャンベル王家の人間は、愛した人への執着がすごいから覚悟してね。」
「お母様、ありがとう。私頑張ってアーノルドを支えるから、見ていてね。」
「それじゃ、また来るわね。」

お母様が部屋から出て、2人きりになった。

「父上には、エイミーの家出の話はしていない。体調不良で寝込んでいたのは子どもができたからと伝えてある。向こうでは、結婚の儀を早める準備に入っているはずだ。日程は、3月の式典を前倒しで、来月12月の雪祭りに併せてやる事にした。来賓への招待も国民へのお披露目やパーティも雪祭りと重なる部分が多いから、準備の手間があまりかからずに済むから。」
「そうね。管理の皆さんに負担をかけないようにしないとね。」
「あと、聞きたくないかもしれないが、アラン王子の事だが…」

アラン王子と聞いて、私の身体は小刻みに震える。
慌ててアーノルドが抱きしめてくれた。

「ごめん。聞きたくないならいい。」
「アーノルドが、こうしてくれているなら、大丈夫。ちゃんと聞くわ。」
「事後報告だから、聞き流してくれればいいよ。あいつは、私が1発殴ったあとアルヴィンに連れられて王宮へ戻された。ギルフォード公爵家からグレンスティッド王には、私とエミルフェシアが正式な婚約者である事と横恋慕したあいつが、エイミーを襲おうとした事を話したそうだ。結果、エイミーの名誉の為に本当の理由は、隠したまま廃嫡、北の離宮に幽閉された。それまでの行動で理由はなんとでもついたらしいが。」
「アーノルド。学園の方は?」
「まずエイミーは、私の婚約者でお妃教育と結婚の日程が決まったから途中退学と公表した。他のやつらは、いまお妃教育期間だと思っているだろう。私は婚姻準備のため一時帰国中。留学は途中でやめるのもおかしいだろうからと一応2月まで学園には行くつもりだ。その間、離れて寂しいだろうから、伯母上にキャンベル王宮に滞在してもらうつもりだ。アルヴィンの卒業と同時に2人で帰国だな。」
「ところで聖女様は?」
「あれは、バカを唆していたからちょっとお仕置きしておいたよ。今頃、北の離宮で2人楽しく暮らしているんだろうな。」

アーノルドのお仕置きって、何をしたのか、興味はあるけれど黒い笑顔みたら、怖くて聞いちゃいけないと思う。

「とにかく心配いらないから、私と子どもの事だけを今は考えて。ね。」
「うん。」
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