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その後のふたり
【クリスティア視点】
いつものように自分の部屋で目を覚ますと侍女が支度をしてくれる。夜着からデイドレスに着替え食堂に行くと、もうアル様が食後のコーヒーを飲んでいた。
アル様は、仕事に行く日はとても早く起きてしまうので一緒に朝食を取れない。半分は私が起きるのが遅いせいだが。
「おはようございます。アル様。」
「ティア、おはよう。」
私の旦那様。アルヴィン・ギルフォード公爵は、26歳。現在国王陛下の側近中の側近として政務補佐をしている。私は8歳の時にアル様と結婚し、もうすぐ父よりアル様と過ごす時間の方が長くなろうとしていた。
「ティア、明日なんだが出かけることにした。」
明日は休みだと思っていたが、仕事になったなら仕方ないと少し残念に思って下を向いた。
そんな私を見て慌ててアル様が私の横に来て手を握ってくれた。
「ティア?一緒に出かけるのは嫌なのか?」
「え?私、てっきりお仕事だと…」
「大切なティアの誕生日に仕事は休むのは当たり前だ。」
「アル様…」
そう
明日は私の16歳の誕生日。
アル様は、ずっと私に優しい。
ただ、最近不安なのは、アル様にとって私は名ばかりの妻で、かわいい妹の代わりなんじゃないのかってこと。
アル様は結婚以来、キスさえもしてくれたことはない。膝に乗せて頭を撫でてくれるのは幼い頃と変わらないけれど、私だってそろそろ次のステップに行けると思う。
やっぱり嫁いできた時が幼すぎて、まだ小さい子と思っているのかしら?
夜会で知り合った令嬢方からは、既婚者の私は経験豊富と思われているらしい。アル様世代の方々は、あのモテモテだったギルフォード公爵が妻がいるからと女遊びをしないのは、よほど私がいいのだろうと噂されているので、仕方がないが、聞かれても何も経験なくてごめんなさいとしか言えない。
私が本当に妻になれる日は来るのかしら?
翌日、アル様は私を連れて王都の宝飾店を訪れていた。
「いらっしゃいませ。ギルフォード公爵様。」
「頼んでいたものは、出来ているか。」
「はい。奥へどうぞ。」
店主が取り出したのは、アル様の瞳と同じ緑の石がついた指輪だった。サイズもぴったりで裏に何か模様のようなものが彫られている。
「奥様、よくお似合いです。公爵様、包装はどうされますか。」
「そのままつけていく。いや、一度ケースに入れてくれ。」
アル様は、ケースに戻した指輪を持って、店を後にする。
着れて行かれた先は、王都の中央部にある公園だった。
銀杏並木の下でアル様にいきなり跪かれた。
「アル様?」
先ほどの指輪を持ち、アル様は真剣な顔をしている。
「クリスティア。私の妻になってくれないか。」
「私はあなたの妻じゃなかったのですか?」
今更ながらびっくりする。あの神殿での誓いは嘘だったというのか?
「いや、ティアは正式にギルフォード公爵夫人だ。そうではなくて、私のちゃんとした妻に…あーもう面倒だ。君を抱きたい。いいだろうか。」
顔を真っ赤にして、髪をかきあげるアル様に私もたぶん真っ赤になりながら飛びついた。
「はい。ちゃんと奥さんにしてください。」
「ティア、飛びつくのはレディとしてどうなのかな?」
「ごめんなさい。私、ずっとアル様にとって何なんだかわからないって不安だったから…」
「なんで?」
「だってキスもしてくれなかったじゃない。」
「それは…」
「それは?」
「キスだけで止められる自信が全くなかったんだ。」
アル様は額に手を当てながら恥ずかしそうに告白してくれた。
私にキスしたら、まだ幼いと分かっていても押し倒してしまいそうで、抱きしめる以上のことは出来なかったと言うのだ。
私が16歳になるまでは我慢していてくれたと聞いて、少し心配になる。
「アル様、その間どうしていらっしゃったの?」
「自分でしていた。実はティアのことを想像しながら…」
私?顔がボンと音を立てて沸騰したような気になる。
「私のこと考えながら、していたの?」
「他の女とする気にはならなかったから…とりあえず邸に帰ろう。」
私達は、馬車の中で手を繋ぎながら、恥ずかしくて顔を合わせられずに公爵邸に戻るのだった。
【クリスティア視点】
いつものように自分の部屋で目を覚ますと侍女が支度をしてくれる。夜着からデイドレスに着替え食堂に行くと、もうアル様が食後のコーヒーを飲んでいた。
アル様は、仕事に行く日はとても早く起きてしまうので一緒に朝食を取れない。半分は私が起きるのが遅いせいだが。
「おはようございます。アル様。」
「ティア、おはよう。」
私の旦那様。アルヴィン・ギルフォード公爵は、26歳。現在国王陛下の側近中の側近として政務補佐をしている。私は8歳の時にアル様と結婚し、もうすぐ父よりアル様と過ごす時間の方が長くなろうとしていた。
「ティア、明日なんだが出かけることにした。」
明日は休みだと思っていたが、仕事になったなら仕方ないと少し残念に思って下を向いた。
そんな私を見て慌ててアル様が私の横に来て手を握ってくれた。
「ティア?一緒に出かけるのは嫌なのか?」
「え?私、てっきりお仕事だと…」
「大切なティアの誕生日に仕事は休むのは当たり前だ。」
「アル様…」
そう
明日は私の16歳の誕生日。
アル様は、ずっと私に優しい。
ただ、最近不安なのは、アル様にとって私は名ばかりの妻で、かわいい妹の代わりなんじゃないのかってこと。
アル様は結婚以来、キスさえもしてくれたことはない。膝に乗せて頭を撫でてくれるのは幼い頃と変わらないけれど、私だってそろそろ次のステップに行けると思う。
やっぱり嫁いできた時が幼すぎて、まだ小さい子と思っているのかしら?
夜会で知り合った令嬢方からは、既婚者の私は経験豊富と思われているらしい。アル様世代の方々は、あのモテモテだったギルフォード公爵が妻がいるからと女遊びをしないのは、よほど私がいいのだろうと噂されているので、仕方がないが、聞かれても何も経験なくてごめんなさいとしか言えない。
私が本当に妻になれる日は来るのかしら?
翌日、アル様は私を連れて王都の宝飾店を訪れていた。
「いらっしゃいませ。ギルフォード公爵様。」
「頼んでいたものは、出来ているか。」
「はい。奥へどうぞ。」
店主が取り出したのは、アル様の瞳と同じ緑の石がついた指輪だった。サイズもぴったりで裏に何か模様のようなものが彫られている。
「奥様、よくお似合いです。公爵様、包装はどうされますか。」
「そのままつけていく。いや、一度ケースに入れてくれ。」
アル様は、ケースに戻した指輪を持って、店を後にする。
着れて行かれた先は、王都の中央部にある公園だった。
銀杏並木の下でアル様にいきなり跪かれた。
「アル様?」
先ほどの指輪を持ち、アル様は真剣な顔をしている。
「クリスティア。私の妻になってくれないか。」
「私はあなたの妻じゃなかったのですか?」
今更ながらびっくりする。あの神殿での誓いは嘘だったというのか?
「いや、ティアは正式にギルフォード公爵夫人だ。そうではなくて、私のちゃんとした妻に…あーもう面倒だ。君を抱きたい。いいだろうか。」
顔を真っ赤にして、髪をかきあげるアル様に私もたぶん真っ赤になりながら飛びついた。
「はい。ちゃんと奥さんにしてください。」
「ティア、飛びつくのはレディとしてどうなのかな?」
「ごめんなさい。私、ずっとアル様にとって何なんだかわからないって不安だったから…」
「なんで?」
「だってキスもしてくれなかったじゃない。」
「それは…」
「それは?」
「キスだけで止められる自信が全くなかったんだ。」
アル様は額に手を当てながら恥ずかしそうに告白してくれた。
私にキスしたら、まだ幼いと分かっていても押し倒してしまいそうで、抱きしめる以上のことは出来なかったと言うのだ。
私が16歳になるまでは我慢していてくれたと聞いて、少し心配になる。
「アル様、その間どうしていらっしゃったの?」
「自分でしていた。実はティアのことを想像しながら…」
私?顔がボンと音を立てて沸騰したような気になる。
「私のこと考えながら、していたの?」
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私達は、馬車の中で手を繋ぎながら、恥ずかしくて顔を合わせられずに公爵邸に戻るのだった。
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