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44 最終話
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【アルヴィン視点】
王宮、国王陛下の執務室には、妙に落ち着かない側近(私)とそれに少し苛つく王の姿があり、他の事務官たちは、びくついていた。
「おい、筆頭事務官、何したか知っているか?」
「知らないよ。朝からずっとあんな感じで…」
事務官達がコソコソ話していると王が立ち上がって私のところに来る。
「アルヴィン、気になるなら帰れ。」
「しかし、今日の業務は…」
「気もそぞろなアルヴィンにいられても、鬱陶しい。命令だ。1週間でも1ヶ月でも休みをやるから、気が済むまで仕事に来なくていい。」
周りの事務官達は、ビクついていた。
おそらく私がクビか謹慎させられるような王の気を損なうことをしたのだと思っているのだろう。同情的な視線と私がいなくなる事で王のペースに直接晒されてることの不安な視線が交差していた。
が、私は許可が下りたので、さっさと机の上を片付け始めた。
こんなに早く帰れて、しばらく仕事休めるなんて思っていなかった。
「それではお先に失礼します。」
丁寧に挨拶して、執務室の扉を閉めると私は一目散に自宅へ向かった。
馬車がギルフォード公爵邸に辿り着くとエイミーが出迎えてくれた。
「お兄様、おかえりなさい。早かったわね。」
「陛下が帰してくれた。しばらく休んでいいそうだ。」
「アーノルドは、私がこっちに来ているから知っているものね。」
「それでティアは?」
「さっきから侍医が付いているわ。多分もう少しかかるけど。」
「私もティアに…」
「お兄様、お産に立ち会うのは無理だから、隣の部屋で大人しく部屋で待っていて。」
寝室の横、自分の居間で座っていてもティアが気になり、何も手につかない。ティアは大丈夫だろうか…
そういえばまだ名前を考えていなかったな。
男だろうか、女だろうか。
男ならデーヴッドがいいな。
女ならグレースかシャーロット…
そんな事を考えていた時、隣から赤ん坊の泣き声が聞こえた。
「うまれ…た。」
寝室の入り口に近寄って入ろうとすると中にいた侍女に止められる。
「旦那様、まだ入れません。もう少しかかります。」
私は頭に?が浮かぶ。
いま生まれたよな。
まだって、どういう事だ?
しばらくするとエイミーが、子どもを抱いて来てくれた。
「お兄様、おめでとうございます。男の子よ。抱いてあげて。」
エイミーから恐々受け取る。
タオルに包まれた赤ん坊は、まだとても小さくて嬉しいと思うと同時に守ってあげなくてはと思う。
そしてこんなステキな贈り物をくれた妻に感謝と労いの言葉を贈りたかった。
「ティアは?」
「んー。まだかな。」
「何か問題があったのか?」
「あと数時間はかかると思う。お兄様、クリスティアのお腹大きいと思わなかった?」
「たしかに普通の妊婦より大変そうだったが。」
「どうも双子みたいでね。」
「は?」
「まだお産、終わってないの。」
とりあえず赤ん坊を侍女に渡し、また部屋で待機に戻った。
外が暗くなって来た頃、寝室がまた騒がしくなってきた。
いよいよか?と立ち上がった時、また赤ん坊の泣き声が聞こえた来た。
ホッとして寝室の扉を見つめているとエイミーがまた赤ん坊を連れて来てくれた。
「お兄様、おめでとうございます。今度は女の子よ。」
渡された娘は、息子より少し小さめだったが確かな重みにじーんとしてくる。
「クリスティアに会えるわよ。」
「わかった。」
娘を抱いたまま寝室に入ると愛しいクリスティアが大仕事をやり終えて横になっていた。
右側に娘を置き、反対側に侍女が連れてきた息子を置いてクリスティアの手を握る。
「ありがとう、ティア。大変だっただろう。まさか2人もいっぺんに…」
「アル様。この子達の名前、考えていただけますか。」
「決めてある。デーヴッドとグレースだ。まさか一度に使うとは思っていなかったが。」
「そうですか。よろしくね。デーヴッド、グレース。」
それから数日後
王の執務室には、復帰したが、ため息ばかりで使い物にならない筆頭事務官(私)と不機嫌な王がいた。
「だから、しばらく来なくていいと言っただろうが。」
「周りの事務官がついていけないペースで仕事するあなたが悪いんです。おかげで早々に復帰して欲しいと各所から依頼されたんですから。せっかくティアと子ども達との楽しい時間を満喫していたのに。」
そう返すと陛下は、心当たりがあるらしく、「うっ」と詰まったような顔をしていた。
「わかった。私も気をつけるから落ち着いて仕事に集中できるまで来なくていい。」
「それではお先に失礼します。」
私は机を片付けるとサッサと扉に向かう。
「筆頭事務官って、切れ者だと思っていたけど、あんな顔もするんですね。」
「アルヴィンは、10年前から10歳下の妻にベタ惚れなんだよ。」
陛下がそう言うと事務官たちはびっくりしたようだ。
確かにこの部屋に貴族はほぼいないから知らなかったらしい。
「筆頭事務官の10歳下って、しかも10年前って8歳じゃないですか⁈」
「それってロリコン?」
「その前は妹溺愛だったし。」
「陛下、余計なことを言うな。」
「えー⁈ロリコンのシスコン?」
「私はロリコンでもシスコンでもない!」
仕事復帰後は、生暖かい目に晒されそうな予感はするが、とにかく愛する妻と子が待つ邸に帰ろうと足早に王宮をあとにするのだった。
The end
王宮、国王陛下の執務室には、妙に落ち着かない側近(私)とそれに少し苛つく王の姿があり、他の事務官たちは、びくついていた。
「おい、筆頭事務官、何したか知っているか?」
「知らないよ。朝からずっとあんな感じで…」
事務官達がコソコソ話していると王が立ち上がって私のところに来る。
「アルヴィン、気になるなら帰れ。」
「しかし、今日の業務は…」
「気もそぞろなアルヴィンにいられても、鬱陶しい。命令だ。1週間でも1ヶ月でも休みをやるから、気が済むまで仕事に来なくていい。」
周りの事務官達は、ビクついていた。
おそらく私がクビか謹慎させられるような王の気を損なうことをしたのだと思っているのだろう。同情的な視線と私がいなくなる事で王のペースに直接晒されてることの不安な視線が交差していた。
が、私は許可が下りたので、さっさと机の上を片付け始めた。
こんなに早く帰れて、しばらく仕事休めるなんて思っていなかった。
「それではお先に失礼します。」
丁寧に挨拶して、執務室の扉を閉めると私は一目散に自宅へ向かった。
馬車がギルフォード公爵邸に辿り着くとエイミーが出迎えてくれた。
「お兄様、おかえりなさい。早かったわね。」
「陛下が帰してくれた。しばらく休んでいいそうだ。」
「アーノルドは、私がこっちに来ているから知っているものね。」
「それでティアは?」
「さっきから侍医が付いているわ。多分もう少しかかるけど。」
「私もティアに…」
「お兄様、お産に立ち会うのは無理だから、隣の部屋で大人しく部屋で待っていて。」
寝室の横、自分の居間で座っていてもティアが気になり、何も手につかない。ティアは大丈夫だろうか…
そういえばまだ名前を考えていなかったな。
男だろうか、女だろうか。
男ならデーヴッドがいいな。
女ならグレースかシャーロット…
そんな事を考えていた時、隣から赤ん坊の泣き声が聞こえた。
「うまれ…た。」
寝室の入り口に近寄って入ろうとすると中にいた侍女に止められる。
「旦那様、まだ入れません。もう少しかかります。」
私は頭に?が浮かぶ。
いま生まれたよな。
まだって、どういう事だ?
しばらくするとエイミーが、子どもを抱いて来てくれた。
「お兄様、おめでとうございます。男の子よ。抱いてあげて。」
エイミーから恐々受け取る。
タオルに包まれた赤ん坊は、まだとても小さくて嬉しいと思うと同時に守ってあげなくてはと思う。
そしてこんなステキな贈り物をくれた妻に感謝と労いの言葉を贈りたかった。
「ティアは?」
「んー。まだかな。」
「何か問題があったのか?」
「あと数時間はかかると思う。お兄様、クリスティアのお腹大きいと思わなかった?」
「たしかに普通の妊婦より大変そうだったが。」
「どうも双子みたいでね。」
「は?」
「まだお産、終わってないの。」
とりあえず赤ん坊を侍女に渡し、また部屋で待機に戻った。
外が暗くなって来た頃、寝室がまた騒がしくなってきた。
いよいよか?と立ち上がった時、また赤ん坊の泣き声が聞こえた来た。
ホッとして寝室の扉を見つめているとエイミーがまた赤ん坊を連れて来てくれた。
「お兄様、おめでとうございます。今度は女の子よ。」
渡された娘は、息子より少し小さめだったが確かな重みにじーんとしてくる。
「クリスティアに会えるわよ。」
「わかった。」
娘を抱いたまま寝室に入ると愛しいクリスティアが大仕事をやり終えて横になっていた。
右側に娘を置き、反対側に侍女が連れてきた息子を置いてクリスティアの手を握る。
「ありがとう、ティア。大変だっただろう。まさか2人もいっぺんに…」
「アル様。この子達の名前、考えていただけますか。」
「決めてある。デーヴッドとグレースだ。まさか一度に使うとは思っていなかったが。」
「そうですか。よろしくね。デーヴッド、グレース。」
それから数日後
王の執務室には、復帰したが、ため息ばかりで使い物にならない筆頭事務官(私)と不機嫌な王がいた。
「だから、しばらく来なくていいと言っただろうが。」
「周りの事務官がついていけないペースで仕事するあなたが悪いんです。おかげで早々に復帰して欲しいと各所から依頼されたんですから。せっかくティアと子ども達との楽しい時間を満喫していたのに。」
そう返すと陛下は、心当たりがあるらしく、「うっ」と詰まったような顔をしていた。
「わかった。私も気をつけるから落ち着いて仕事に集中できるまで来なくていい。」
「それではお先に失礼します。」
私は机を片付けるとサッサと扉に向かう。
「筆頭事務官って、切れ者だと思っていたけど、あんな顔もするんですね。」
「アルヴィンは、10年前から10歳下の妻にベタ惚れなんだよ。」
陛下がそう言うと事務官たちはびっくりしたようだ。
確かにこの部屋に貴族はほぼいないから知らなかったらしい。
「筆頭事務官の10歳下って、しかも10年前って8歳じゃないですか⁈」
「それってロリコン?」
「その前は妹溺愛だったし。」
「陛下、余計なことを言うな。」
「えー⁈ロリコンのシスコン?」
「私はロリコンでもシスコンでもない!」
仕事復帰後は、生暖かい目に晒されそうな予感はするが、とにかく愛する妻と子が待つ邸に帰ろうと足早に王宮をあとにするのだった。
The end
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