男装令嬢とわがまま王子

里中一叶

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婚約解消

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通されたのは、王の私室だった。今日は正式な謁見ではなく、簡単な訪問という扱いになるらしい。
ソファーには国王陛下と王妃様が座って待っていた。
「ジャルフ伯爵、ミリアリア嬢。そこへ掛けてくれ。」
「失礼いたします。」
挨拶をして陛下の前にお父様が、王妃様の前に私が座る。
「まずジャルフ伯爵、こちらから持ちかけた話ではあるが、第三王子レイモンドとジャルフ伯爵令嬢ミリアリアの婚約は解消とさせていただきたい。」
「陛下。それは王家としてジャルフと縁を切ると言うことですか。」
お父様がいつもの温厚さを消し、殺気が増した。こういうところは、やはり影だった人だと思う。
「私自身、伯爵家の血縁であり、影と一緒に成長した。重要性分かっているし縁を切るつもりはない。レイモンドがあまりにもミリアリア嬢と共に伯爵家を継ぐに足りないので、引かせて欲しい。」
一国の国王が、私的空間とは言え伯爵に頭を下げている。人払いしているが侍女もいるのに。そう思っていると侍女が私ににっこり笑った。
「陛下、この件については、王宮勤務の者も全員同意しております。」
「ニーナ。いままでリアにしかレイモンドの行動を報告しなかったお前たちにも一言言いたいのだが。」
「陛下が確認なさらないからです。」
どうやら侍女のニーナさんも影のようで、どうもこの部屋で一番陛下の扱いが可哀想なことになっていそう。
「あの…今日レイモンドは?」
私の質問に答えてくれたのは、陛下だった。
「今朝、早くゲーナットへ大使として出発した。ミリアリアには、迷惑かけてすまなかったと伝えて欲しいと言っていた。」
「今日、私たちの話を聞いて決めるってレイ…いえレイモンド殿下はおっしゃってましたが。」
「私もそのつもりだったが、レイモンドがミリアリアは婚約解消したがっているし、自分は決めたと言っていたから。違うのか?」
私の気持ち…レイモンドに対してどう思っているのか、正確にわからない。幼なじみでけんかばかりで、でもリリーと何でもないとホッとして…ただの独占欲だったのかな。
考えがまとまらない私を余所に婚約解消は決定した。
どうやって挨拶して帰ったのか?気がついたら部屋でベッドに座っていた。
婚約者じゃなくなって、遠いゲーナットへ行ってしまったレイモンドとは、もう気楽に会うこともないのだと思うと涙が溢れてくる。
もう遅いけれど、私、レイモンドのこと好きだったんだと自覚したのだった。
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