8 / 12
8.
しおりを挟む
教会とは、神に祈りを捧げる以外にも怪我人を手当てをする場所でもあるらしい。僕がその人物を目にした時は咄嗟に行動に移していた。
「その冒険者を、横に寝かせてください!僕が治癒魔法をかけますから!!」
村長さんは大怪我をした人物を僕の傍に寝かせるように運んでいる人物らに指示した。怪我をした冒険者は腹から血を流して、気を失っている。下手したら、死んでしまうかも!助けられる人は助けないと!
血が流れている腹部を包帯で押さえると、僕は咳払いをする。上手く声が出せるように。
僕の心の準備が出来てから、歌を歌い始める。
♪~♪♪
歌い始めると、冒険者さんの顔色が良くなってくる。しかし、雑念が入らぬように歌う。歌い終わると、僕は冒険者さんに駆け寄る。
「あの、大丈夫でしょうか?」
僕は冒険者さんの肩を揺らす。しかし、返事はない。けれど、規則的な呼吸音が聞こえるので、どうやら無事らしい。腹部の怪我もなくなって、血流が良くなっている。僕は安堵した。
「ハァ・・・ハァ。良かったぁ。また、助けられる命を助ける事が出来た。」
『グレイシア。お疲れ様。人々の役に立つって気分良いよね!』
アポロンが言ったのと同時に、教会内から拍手が湧き起こる。近くにいた村長さんなんか僕に祈りを捧げている。
「やはり貴方は神の愛し子ですぞ!こりゃーめでたい!」
「そ、そんな・・・。僕は僕の出来る事をしたまでです。」
「・・・村長さん、この冒険者をどうする?」
「それは、この教会で預かる事にしよう。・・・そう言えば貴方様の名前を伺っていませんでしたね。名前を伺ってもよろしいか?」
村長さんにそう聞かれ、僕は戸惑った。でも、悪い事はしていないし、それくらいは良いよね?
「・・・僕の名前はグレイシアです。」
「グレイシア様!なんと高貴な名前だ・・・。」
「グレイシア様、最高!!」
「グレイシア様は神の愛し子!!」
なんと名前を名乗っただけなのにこうも持ち上げられるとは思わなかった。僕は冒険者さんの怪我を治しただけだよ?
『ヒュー。グレイシア様、最高!!』
もう、アポロンまで何を言っているの!
『でも、グレイシアがやった事でしょ?褒められるような事だよ!』
でも、やっぱり自分のした事が褒められるなんて、嬉しいなぁ。ちょっと、照れるような。
「グレイシア様、よろしければ夕食を食べていかれては?」
そう、村長さんは言う。僕はご厚意に乗る事にした。
☆☆☆☆
夕食は村長さん宅で取る事になった。正直に言って、誰かと一緒に食べるご飯は美味しいものだと知った。勿論、アポロンがいるのは悪い事じゃないよ。でも、やっぱりご飯、美味しいや。
夕食を頂くと、泊まるように促されるが、そこまでお世話になるのは悪いと思う。だから、断りを入れて、自宅に帰る事にした。
「このメチュアートの村人さん達にはお世話になりました。ありがとうございます。」
僕は村人さん達にお礼をする。村長さんは名残惜しいようである。
「そんな!こちらこそお世話になりました!」
雨の事なら偶然なのになぁ。僕が降らせるなんて芸当、出来やしないのに。
☆☆☆☆
僕はテレポートで自宅に戻ろうとすると、先程助けた冒険者さんの姿があった。
「・・・アディエル王子?」
しまった!この冒険者さんはアディエル王子の事を知っているのか!こんなところにいるとバレると僕は殺されてしまうかも!僕はただでさえ注目を集める存在なのに!
どうにか誤魔化さないと。
「・・・我が名はグレイシア。神に仕える者です。」
『・・・ククッ。急に、口調を変えてきた!こりゃー、面白い!ちょっと、グレイシア、テンパりすぎだよ!』
アポロンに笑われたけど、この場をどうにかしないとという気持ちが強かった。それに、冒険者さんも変に納得していた。
「・・・そうか。こんなところに王子様がいる訳ないか。」
「どうかされましたか?」
逃げ出したい気持ちが強い癖に、聞いちゃうのは何故かなぁ?
「・・・貴方が俺を助けてくれたと聞きました。俺は所属していたパーティを突如として追い出されて、強い魔物の盾に使われて、もうここで死んでしまうかと思ってしまいました。でも、運が良い事に貴方と出会って、魔物につけられた傷を治して頂き、俺を生かしてくれました。だから、なんと言ってお礼を申し上げたら・・・!」
へー?この人にも色々とあったんですね。しかも、仲間を見捨てるなんて、とてもじゃないですが酷いです。
「・・・ぼ、私は自分の出来る事をしたまでです。礼など不要です。しかし、それでも、礼を言いたいなら、私と引き合わせたこのメチュアートの村人に礼を言ってください。彼らがいなければ、貴方は死んでいたのですから。」
ちょっと、偉そうな事を言ったかなぁ?でも、事実だし。そして、そろそろ帰ろう。その人が余所見をしている隙に僕は自宅までテレポートしたのだった。
「その冒険者を、横に寝かせてください!僕が治癒魔法をかけますから!!」
村長さんは大怪我をした人物を僕の傍に寝かせるように運んでいる人物らに指示した。怪我をした冒険者は腹から血を流して、気を失っている。下手したら、死んでしまうかも!助けられる人は助けないと!
血が流れている腹部を包帯で押さえると、僕は咳払いをする。上手く声が出せるように。
僕の心の準備が出来てから、歌を歌い始める。
♪~♪♪
歌い始めると、冒険者さんの顔色が良くなってくる。しかし、雑念が入らぬように歌う。歌い終わると、僕は冒険者さんに駆け寄る。
「あの、大丈夫でしょうか?」
僕は冒険者さんの肩を揺らす。しかし、返事はない。けれど、規則的な呼吸音が聞こえるので、どうやら無事らしい。腹部の怪我もなくなって、血流が良くなっている。僕は安堵した。
「ハァ・・・ハァ。良かったぁ。また、助けられる命を助ける事が出来た。」
『グレイシア。お疲れ様。人々の役に立つって気分良いよね!』
アポロンが言ったのと同時に、教会内から拍手が湧き起こる。近くにいた村長さんなんか僕に祈りを捧げている。
「やはり貴方は神の愛し子ですぞ!こりゃーめでたい!」
「そ、そんな・・・。僕は僕の出来る事をしたまでです。」
「・・・村長さん、この冒険者をどうする?」
「それは、この教会で預かる事にしよう。・・・そう言えば貴方様の名前を伺っていませんでしたね。名前を伺ってもよろしいか?」
村長さんにそう聞かれ、僕は戸惑った。でも、悪い事はしていないし、それくらいは良いよね?
「・・・僕の名前はグレイシアです。」
「グレイシア様!なんと高貴な名前だ・・・。」
「グレイシア様、最高!!」
「グレイシア様は神の愛し子!!」
なんと名前を名乗っただけなのにこうも持ち上げられるとは思わなかった。僕は冒険者さんの怪我を治しただけだよ?
『ヒュー。グレイシア様、最高!!』
もう、アポロンまで何を言っているの!
『でも、グレイシアがやった事でしょ?褒められるような事だよ!』
でも、やっぱり自分のした事が褒められるなんて、嬉しいなぁ。ちょっと、照れるような。
「グレイシア様、よろしければ夕食を食べていかれては?」
そう、村長さんは言う。僕はご厚意に乗る事にした。
☆☆☆☆
夕食は村長さん宅で取る事になった。正直に言って、誰かと一緒に食べるご飯は美味しいものだと知った。勿論、アポロンがいるのは悪い事じゃないよ。でも、やっぱりご飯、美味しいや。
夕食を頂くと、泊まるように促されるが、そこまでお世話になるのは悪いと思う。だから、断りを入れて、自宅に帰る事にした。
「このメチュアートの村人さん達にはお世話になりました。ありがとうございます。」
僕は村人さん達にお礼をする。村長さんは名残惜しいようである。
「そんな!こちらこそお世話になりました!」
雨の事なら偶然なのになぁ。僕が降らせるなんて芸当、出来やしないのに。
☆☆☆☆
僕はテレポートで自宅に戻ろうとすると、先程助けた冒険者さんの姿があった。
「・・・アディエル王子?」
しまった!この冒険者さんはアディエル王子の事を知っているのか!こんなところにいるとバレると僕は殺されてしまうかも!僕はただでさえ注目を集める存在なのに!
どうにか誤魔化さないと。
「・・・我が名はグレイシア。神に仕える者です。」
『・・・ククッ。急に、口調を変えてきた!こりゃー、面白い!ちょっと、グレイシア、テンパりすぎだよ!』
アポロンに笑われたけど、この場をどうにかしないとという気持ちが強かった。それに、冒険者さんも変に納得していた。
「・・・そうか。こんなところに王子様がいる訳ないか。」
「どうかされましたか?」
逃げ出したい気持ちが強い癖に、聞いちゃうのは何故かなぁ?
「・・・貴方が俺を助けてくれたと聞きました。俺は所属していたパーティを突如として追い出されて、強い魔物の盾に使われて、もうここで死んでしまうかと思ってしまいました。でも、運が良い事に貴方と出会って、魔物につけられた傷を治して頂き、俺を生かしてくれました。だから、なんと言ってお礼を申し上げたら・・・!」
へー?この人にも色々とあったんですね。しかも、仲間を見捨てるなんて、とてもじゃないですが酷いです。
「・・・ぼ、私は自分の出来る事をしたまでです。礼など不要です。しかし、それでも、礼を言いたいなら、私と引き合わせたこのメチュアートの村人に礼を言ってください。彼らがいなければ、貴方は死んでいたのですから。」
ちょっと、偉そうな事を言ったかなぁ?でも、事実だし。そして、そろそろ帰ろう。その人が余所見をしている隙に僕は自宅までテレポートしたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる