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17.一難去ってまた一難。
しおりを挟む一同はしばらく、何が起きたのか理解出来なかった。仕方ないので、グループ内では説明しよう。俺は“有明月”さんの手を引いて、“黒狼”の方に連れていく。・・・“黒狼”でさえ、疑問符を浮かべている。
「・・・一体、何が起きたんだ?」
「説明しようか?」
メイディスは俺の方を見ながら、今さらになって気分が悪そうにする。それもそのはず。ミノタウロスの腕をたたき落とした時に、ミノタウロスの血液が思いっきり噴き出たからなぁ。俺も、ミノタウロスの血液まみれだよ。光魔法で浄化したけど。しかし、メイディスにはその余裕がないらしい。仕方ないので、浄化させる。少し落ち着いたようだ。
「これで落ち着きました?では、説明するとまず、俺がミノタウロスの左腕を切り落とし、次にメイディス王子が右腕を、光魔法と炎魔法を併用して、切り落としました。それで、隙が出来たので、“有明月”さんがミノタウロスの背後にガ・いえ、武器保有型ゴーレム?を出し、ミノタウロスの動きを封じました。それで、最後にトドメを刺したのはこく・・・ヴォルフが出したゴーレムがミノタウロスのコアをぶっ壊しました。」
「簡潔で分かりやすかったのですが、何故僕が炎魔法を使えたんでしょうね?本当に・・・ね?」
メイディスは意味ありげにこちらを見る。きっと、バレているな。“黒狼”も理解はしたみたい。何故か、使えないはずの魔法が使えた理由には辿り着いていないようだが。
「俺、土魔法使えないはずだが?」
「属性魔法は突発的に発動すると考えられています。咄嗟のピンチで発動しちゃったんじゃないですか?」
「・・・確かに、それもそうか。それにしても“朧月”、まるで魔法騎士のような戦いをするな。相変わらず、咄嗟の判断じゃ、手が先に出るよな。お前。」
「今日の貴方に言われたくないですよ!!まるで、魔術師のような戦いでしたけど。特に、トドメを刺した時なんか。」
“黒狼”は思い出したように、“有明月”を呼ぶ。そして、説教じみた事を言い出す。
「おい、お前。・・・確か、“有明月”だったか?今回は助かったが、無駄な造形が細けーゴーレムは、魔力の消費が激しいんだ。それで倒れたら、元もこうもねーだろ。次から気を付けろ。」
「はい・・・。」
しゅうんとする“有明月”さん。でも、嫌気を差している訳ではないから、これからの活躍で破滅フラグをぶっ壊せるんじゃない?そして、“有明月”さんは俺に文句を言ってくる。
「思いっきり前線で戦う事になったじゃないですか!これでも怖かったんですよ!!」
「それは悪かったと思ってる!!本当にごめん!!」
必死に謝っていると、魔法騎士隊第一部隊の隊長がライトを連れていく。思いっきり、説教されている。こりゃあ、時間がかかりそうだ。置いていこう。“黒狼”は仕事モードに入る。まだ、仕事は残っているもんね。“有明月”さんはすっかり仕事が終わったと思っているが。
「さて、仕事に戻るか。」
「「え?仕事終わりじゃないんですか?」」
ハモるメイディスと“有明月”さん。街を襲っている魔物を退治する仕事が残っているよ!!元凶倒して、はい、終了という訳にはいかないんだよ!!ここは最後まで仕事完遂させようよ!!
「は?街にまだ魔物が蔓延っているじゃねーか。それを退治するまでが今回の仕事だ。」
すっかり、気落ちする二人。あともうちょっとだから・・・ん?確か、“有明月”さんの言葉で思い出したけれど、この街って乙女ゲームが始まる頃には廃墟と化しているんじゃなかった?“黒狼”ルートで明かされるんだが。“黒狼”ルートはどちらかと言えば、RPG寄りなんだよな。・・・って、そんな事より“有明月”さんに確認しないと!
俺は“有明月”さんにこっそりと耳打ちする。
「確か、この街って、“黒狼”が左目が見えなくなった後に、魔物の襲撃が横行して滅ぼなかったっけ?」
“有明月”さんは頷く。少し考え込むと断言する。
「確か、ルートに入って、しばらくすると、珍しく気落ちしていた“黒狼”さんが左目が見えなくなった後、この街が壊滅的になって魔物の棲み処となった事を酷く気にしているイベント、そしてスチルがあったので、よく覚えています!・・・確か、蠱毒という呪いでしょうか?」
おっと、ここで蠱毒とくるか?この街にはそんなものがあるのかよ!?また、元凶倒しに行かないといけないの!?確か、蠱毒の呪いを仕掛けた隠れた遺跡がある(ゲームより)。呪いは大分前に完成している。しかも、場所が遺跡なだけにどっかのバカが盗掘目的で呪いを解放したとか、なんとか。そこから、強い魔物が日々出現しているという、ゲームの流れがあったよ!!過去に立ち向かう“黒狼”、あれはいいシーンだが、今この街で生きている人達を無視していいのか?今の“黒狼”とゲームの中の“黒狼”は違うんだぞ?俺は覚悟を決めた。
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