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オオカミ少年
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「陸が、今度こそ、千夏にコクりたがっているそうだ」
「あれ?智己くんさ、前もそんなこと言ってなかった??」
智己にすかさず噛みつく、かえで。
「てゆーかさ、陸、まだコクってなかったのかよー!!」
あまりにもおかしいとでも言うように、おおげさに驚いてみせる、涼。
だけど僕が一番気にしてしまったのは、何も言わない栗本さんの表情だった。
その気はあったのに、いろいろあったりして、実行に移せなかったんだよ。
だけど、栗本さんのおかげで決心がついたあの日のことはうそじゃない。
そんな風に心の中で言い訳しながらも、あらためてこの場に立ってみると、みんなの応援がありながらもどうしてここまで引っ張ってしまったんだろう、と自分が情けなく思えてくるから悲しい。
修学旅行、3日目にして最終日。
初日の大阪、2日目の広島を経て僕たちは朝一番に神戸にやってきた。
今日で最後。
僕は今日こそ千夏に想いを伝える。
今度こそは、本当にちゃんと逃げずに言う。
班別行動のどこかのタイミングで実行するのが、僕の考えだった。
ただ、それを何とはなしにさっきの新幹線で智己に話してしまったのが間違いだった。
「みんな陸に協力してやってほしいんだよ。あっ、千夏のやつ、もう戻って来やがった」
僕の小さな決意は、なぜか必要以上に重大になろうとしている。
「先生が、もう出発していいって!行こー!」
小学生のころはおとなしかったのに、いつの間にこんなに太陽みたいな明るい存在になったんだろう。
今日のキーパーソンであり、この班の班長、千夏の登場だ。
「新幹線の出発時間の一時間前には集合らしいから、急ごう!」
「オッケー!!道順のことなら、任せてー!!!」
かえでもいつも以上にノリノリだ。
ただ、道順のことよりも智己がどんな作戦をたてていたのかが気になって仕方がない。
僕はみんなと一緒に駅のホームを歩きながら考えていた。
どうせ智己のことだ。
意図的に僕たちをはぐれさせ、むりやり二人っきりの空間を作らせたりするのだろう。
別に僕はそこまで徹底するつもりはなかったのだけれど。
そんなことを一人でぼうっと考えていると、ポケットの中で携帯が震えた。
取り出してみると、画面にこんなメッセージが表示されている。
『さっきの話の続きなんだけど、
一応、俺の作戦としてはみんなにわざと迷子になってもらって、
陸と千夏に二人っきりになってもらおうと思ってまーす!!
ではでは、協力のほうよろしくー!!』
智己からだ。
ちゃんとばれないように、千夏ぬきのグループを作って、そこに送信してある。
やるじゃん、智己。
だけど、あまりにも予想通りの内容だ。
ほんとにこれ、やるのかな。
でも今回こそは計画通りにするって決めたんだし、もう、後には引けない。
「どーしたの?ボーッとして」
千夏の声に激しくビクッとして急いで携帯をポケットに戻す。
「え!?今、僕の携帯見えた???」
「え?見えてないけど…」
よかった……。
僕は安堵のため息をついた。
「いや、なんかせっかくの修学旅行なのにみんなして携帯見てて寂しいなーって」
それもそのはずで、千夏以外の僕たち5人は同時に携帯を取り出して凝視していたのだ。
千夏が寂しがるのも無理ないよな。
華々しいチャイム音がなって、電車がホームに着いた。
そろって乗車したところでまた携帯が震える。送り主はさっきと同じく、智己だ。
『とりあえず昼飯までは普通に観光して、集合時間の一時間前くらいに決行しまーす!それまでにおみやげ買っといて下さい!!』
ふう、と息をついて携帯をポケットにしまう。
6人1列、奇跡的に座れた電車の座席で揺られながら僕はそわそわする気持ちを押さえられない。
とりあえず、昼ごはんまでは普通の修学旅行を楽しもう。
今日は今日でよかったと思えるくらい、楽しい思い出をいっぱい作ろう。
僕が頑張らなきゃいけないのは、その後からの話なのだから。
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