太陽に手を伸ばしても

松本まつも

文字の大きさ
23 / 29
オオカミ少年

しおりを挟む









「陸が、今度こそ、千夏にコクりたがっているそうだ」




「あれ?智己くんさ、前もそんなこと言ってなかった??」

智己にすかさず噛みつく、かえで。


「てゆーかさ、陸、まだコクってなかったのかよー!!」



あまりにもおかしいとでも言うように、おおげさに驚いてみせる、涼。

だけど僕が一番気にしてしまったのは、何も言わない栗本さんの表情だった。

その気はあったのに、いろいろあったりして、実行に移せなかったんだよ。
だけど、栗本さんのおかげで決心がついたあの日のことはうそじゃない。

そんな風に心の中で言い訳しながらも、あらためてこの場に立ってみると、みんなの応援がありながらもどうしてここまで引っ張ってしまったんだろう、と自分が情けなく思えてくるから悲しい。






修学旅行、3日目にして最終日。

初日の大阪、2日目の広島を経て僕たちは朝一番に神戸にやってきた。



今日で最後。

僕は今日こそ千夏に想いを伝える。
今度こそは、本当にちゃんと逃げずに言う。


班別行動のどこかのタイミングで実行するのが、僕の考えだった。

ただ、それを何とはなしにさっきの新幹線で智己に話してしまったのが間違いだった。



「みんな陸に協力してやってほしいんだよ。あっ、千夏のやつ、もう戻って来やがった」




僕の小さな決意は、なぜか必要以上に重大になろうとしている。







「先生が、もう出発していいって!行こー!」
 

小学生のころはおとなしかったのに、いつの間にこんなに太陽みたいな明るい存在になったんだろう。



今日のキーパーソンであり、この班の班長、千夏の登場だ。




「新幹線の出発時間の一時間前には集合らしいから、急ごう!」


「オッケー!!道順のことなら、任せてー!!!」

かえでもいつも以上にノリノリだ。




ただ、道順のことよりも智己がどんな作戦をたてていたのかが気になって仕方がない。 
僕はみんなと一緒に駅のホームを歩きながら考えていた。



どうせ智己のことだ。

意図的に僕たちをはぐれさせ、むりやり二人っきりの空間を作らせたりするのだろう。
別に僕はそこまで徹底するつもりはなかったのだけれど。


そんなことを一人でぼうっと考えていると、ポケットの中で携帯が震えた。


取り出してみると、画面にこんなメッセージが表示されている。





『さっきの話の続きなんだけど、

一応、俺の作戦としてはみんなにわざと迷子になってもらって、

陸と千夏に二人っきりになってもらおうと思ってまーす!!

ではでは、協力のほうよろしくー!!』 





智己からだ。
ちゃんとばれないように、千夏ぬきのグループを作って、そこに送信してある。

やるじゃん、智己。



だけど、あまりにも予想通りの内容だ。
ほんとにこれ、やるのかな。

でも今回こそは計画通りにするって決めたんだし、もう、後には引けない。





「どーしたの?ボーッとして」

千夏の声に激しくビクッとして急いで携帯をポケットに戻す。



「え!?今、僕の携帯見えた???」


「え?見えてないけど…」





よかった……。

僕は安堵のため息をついた。




「いや、なんかせっかくの修学旅行なのにみんなして携帯見てて寂しいなーって」




それもそのはずで、千夏以外の僕たち5人は同時に携帯を取り出して凝視していたのだ。
千夏が寂しがるのも無理ないよな。


華々しいチャイム音がなって、電車がホームに着いた。


そろって乗車したところでまた携帯が震える。送り主はさっきと同じく、智己だ。





『とりあえず昼飯までは普通に観光して、集合時間の一時間前くらいに決行しまーす!それまでにおみやげ買っといて下さい!!』




ふう、と息をついて携帯をポケットにしまう。



6人1列、奇跡的に座れた電車の座席で揺られながら僕はそわそわする気持ちを押さえられない。

とりあえず、昼ごはんまでは普通の修学旅行を楽しもう。
今日は今日でよかったと思えるくらい、楽しい思い出をいっぱい作ろう。


僕が頑張らなきゃいけないのは、その後からの話なのだから。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

処理中です...