えるんぺい・もっぱいぱい

ゔぇろっへ

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第1話 さらば! ”凡”

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 うおおおおおおお!!!

 退屈! 退屈! 退屈!!!

 平日は仕事場と自宅を往復し、休日はゴロゴロしながらテレビ! そしてエロビデオ! 昨日は給料日のご褒美で焼き肉! はっ! 普通だっつーの!!
 つまんねー! こんな退屈な日々、ぶち壊してえーーー!!

 俺は会社に体調不良と連絡して休みをもらってから家を飛び出し、チャリにまたがり全力で漕いだ。その行き先は意中の女性の家……!

 ピンポーン、がちゃっ

「あれ? 山内さん。どうしたんですか?」
「はぁ、はぁ、須川さん、僕とお付き合いしてください!」
「はい!?」
「もう僕はくだらない日々を過ごすのは嫌なんです。でも、あなたと一緒なら耐えられる……!! 僕と、お付き合いしてくださいッ!!」
 
 当たって砕けろ……!

「ご、ごめんなさい。私、実は婚約者がいるんです……お気持ちは」
「ありゅりゃしたァッッ!!!」

 これでいい……! その言葉が聞きたかったんだ!! 
 ビシッ! と空を切るほどのスピードで6時15分の角度で頭を下げ、俺はまたチャリに飛び乗り一心不乱に漕いだ。向かい風がハンドドライヤーのように涙を吹き飛ばす。

 山のふもとについた。俺は全力で山を駆け上がり、頂上へ。そして、呼吸を整え、肺いっぱいに空気を蓄え、叫んだ!

「うぉおおあああああぁぁぁぁああぁぁああああああ!!!! 神様よお! 俺は何でこんなに ”凡” なんだ! こんなしょーもない人生いらねぇ!!! 死んでやるうーーーーッ!!!!」

 さらば人生、さらば ”凡” !!! 俺は思いっきりジャンプし、この世を去ろうとした。

 ピカーッ!!!! 

 突如まばゆい光が俺の目をくらませた。……なんだか優しい感触だ。これが死の瞬間なのか? すると、どこからともなく包み込むような女性の美しい声が……!

「――――人の子よ。早まるでない」
「……誰だ?」
「我の名はえるんぺい・もっぱいぱい。この世の神。全てを超越する存在」

 なんちゅー名前だ……。吹き出しそうになったのを飲み込み、落ち着いて返した。

「神だって?」
「いかにも。……そなたは健康だ。特に辛い目にも遭ってはいない。 ”凡” であることは悲しき運命ではない。なにゆえ、その身を投げ出すのか。答えよ」
「……退屈だった! 何も変化のない毎日、うんざりだ……! それに、意中の女性には婚約者がいるってさ……! だからもういいのさ。神様よ。俺を受け止めてくれなくていいんだ。ほっといてくれ! それより、なんの罪も無いのに死にゆく人を受け止めてくれッ!!」
「そなたは死ぬ前に神に呼びかけた。だから私が来たのだ」
「あっ……!」
「聞け、人の子よ。 ”凡” だからこそ、成長の楽しみがある。私は全てを超越する存在。成長の楽しみなど無い。この世に私が現れた瞬間から私は全てを知りえた。出来ぬ事など無い」
「……だったら、ギター弾いてみろ! 俺は挫折した!」

ぎゅいいぃいぃいぃん! うぃ~~んれれれれれれれれうぇうぇうぇうぇ~ん!

「……うますぎだろ……」
「出来ぬ事など無いと言っただろう」
「……ククク、だったら、超絶巨乳美少女になり、すっぽんぽんになって上も下もぜ~んぶ見せてみろ!!!」
「断る。」
「ふ、ふふふ! 出来ないんだろう! はーっはっはっはー!」
「……恥ずかしい」
「ぶほッ!!」

 神に萌えた。こんなの初めてだ。

「……ちなみに、超絶巨乳美少女になることは出来るのか?」
「出来る。目を開けろ」

 目を開けると、文字通り超絶巨乳美少女が眼の前にいた。俺のイメージを遥かに超越する、完璧なる美少女。俺は一目惚れした。
 
「惚れたぞ……俺と付き合ってくれ!」
「だめです」
「え……ふ、ふふふ! 出来ない事、あるじゃねーか!」
「だって…………私達、初対面ですよ」
「えっ」
「強引すぎっていうか」
「あっ」
「もっと段階を踏んで……」
「……OK。まずは友達からだ」
「……ふっ、よし。気は済んだか?」
「え」

 パっと、神の姿に戻った。と言っても見たのは初めてだ。ものすごいレベルの高い巫女さんって感じで、まさしく神々しいという言葉がピッタリだ。

「死にたいか?」
「ッ! ……。」

 突然そう訊かれるとは思わず、ビクッとした。……さっきの自殺は半分勢いだったので改めて訊かれても素直に死にたいとは言えなかった。

「そなたは死ぬ。それは変えられない。もちろん、変えること自体はできるが、神は人の生き死にに干渉してはならないと定められている。だからせめてもの慈悲をそなたにかけてやろう。目を閉じろ。……いいな!!!」
「……ッッ!!!!」

 せめて痛みのないよう死なせてくれるのだろうか。俺は目を閉じて、覚悟した。

「ぺれんつぉい・すっぽいぽい!」

 ……なんじゃその掛け声は。そう心の中で突っ込むと体が天に向かって凄まじい勢いで登っていく。ロケットのように。

 そして俺の意識は途切れた。
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