19 / 21
四日目
18 * ウミガメもエイも飛び越えて
しおりを挟む現実行きのバスは、わたしたちをあっというまに空港に運んだ。遠くに見える海の色は濃紺で、さっきまで目の前にあったネオンブルーの海が幻だったかのようだ。
手荷物検査などを済ませると、一時間少し時間が空いてしまった。みんなで集まっていてもすることがないので、休憩や買い物など、各々で過ごすことになった。わたしは一人、空港に来たら行こうと決めていた場所に向かう。本屋だ。
グアムには、本屋があまりないらしい。二日目にいったアウトレットの中と、空港、あともう一箇所にあるらしいが、全てホテルから歩いて行ける距離ではなかった。グアムに住むことはできないなあ、と思う。
空港の本屋はキオスクのようにこぢんまりとした店だったが、雑誌や絵本があり、十分に楽しめた。POLARという、子供向けの本を購入することにする。決め手は、日本ではこんな写真使わないだろ、子供用だぞ……と言いたくなるようなホッキョクグマの写真(捕食後なのか、血まみれ)だった。財布を見るとドルが少し余っていたので、ナショジオキッズの雑誌と謎の絵が描かれたクッキーも購入する。
謎と言えば、本屋のレジに、ドゴームのフィギュアが置いてあったのも謎だった。(わりとマイナーなポケモンです)そういえばアウトレットのおもちゃコーナーにはバリヤードやブルー、ルンパッパのぬいぐるみが置かれていたが、グアムではマイナーなポケモンが逆にメジャーなのだろうか。ピカチュウやフシギダネはどこへ行ったのか。
ゆっくり時間を使って買い物したつもりだったのに、まだ時間が余っていた。ゲートはまだ開いていないけれど、することもないのでゲート付近まで移動し、ベンチに座って待つことにする。
待機スペースのわきには、小さな売店があった。手荷物検査のために飲み物はすべて処分してしまったので、何か買おうと商品を見る。ドルは全員ほぼ使い切っていたしカードも使えない店だったのだが、日本円が使えるとのことで安心した。ひばりは、スタバの瓶コーヒーをレジに持って行く。
「日本円でお願いします」
すっ、と差し出された電卓には、一七八〇、と表示されていた。え? スタバだとはいえ、二本入りだとはいえ、ちょっと高すぎないか。フラペチーノを三つ飲める。
「のーさんきゅー!」
これはあかん、と思い、両手を横に振った。レジのおばさんは「ああそう、じゃあいいけど」と言わんばかりの嘲笑を見せる。ひばりは瓶を冷蔵庫に戻す。
そういえば母は、前回もこういう店に寄り、水を馬鹿高い値段で買わされたと言っていた。同じ轍を踏まずに済んだのだ。一安心する。
しかし、やっぱり喉は渇く。このままでは成田空港につくまで、何も飲めないことになってしまう。苦肉の策、「塵も積もれば山となる作戦」を実行することにした。
それぞれの財布から残ったドルやらセントやらをじゃらじゃらかき集めると、八ドルほどになった。協議の末、水とプリングルスをレジに差し出す。塩分と水分のセットで、値段は七ドル五十セント。
会計をしていると、ひばりの携帯に父から連絡が入った。
「もう少し先のゲートまで行ったら、カードが使える店があったよ」
コントさながらのタイミングのよさだった。レジのおばさんの「Thank you」に悪意が含まれている気すらした。
購入したばかりの水とプリングルスを持って奥の売店に向かう。「LAST CHANCE」と書かれたその売店で、追加の水とちょっとのお菓子を買った。適正価格だった。
あとはもう、ゲートが開くのを待つだけだ。行きは久々の飛行機だったので、もし墜落するとわかったらどうすればメッセージを残せるのだろうとか、死んだらペットの面倒はあの人がみてくれるだろうとか、ひたすらくだらないことを考えていたのだが、帰りは慣れたもので、すっかりリラックスして飛行機を待った。(が、ちょっと油断すると「と、油断したのが運の尽きだった……」みたいなモノローグが浮かぶので気を引き締め直した)
みんなで遊んで時間を潰そうと、つぐみの彼氏がかばんから出してくれたのはミニジェンガだった。ひとつのブロックが小指くらいの大きさだ。プールサイドの大きなジェンガに比べると、豆粒のようでかわいい。
同じく日本に帰るであろう二人の子供が、ミニジェンガではしゃぐ五人の大人をじっと見つめていた。日本が少しずつ、近付いている。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
島猫たちのエピソード2025
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
世界の終わりにキミと
フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。
そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。
しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
