ネオンブルーと珊瑚砂

七草すずめ

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四日目

18 * ウミガメもエイも飛び越えて

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 現実行きのバスは、わたしたちをあっというまに空港に運んだ。遠くに見える海の色は濃紺で、さっきまで目の前にあったネオンブルーの海が幻だったかのようだ。
 手荷物検査などを済ませると、一時間少し時間が空いてしまった。みんなで集まっていてもすることがないので、休憩や買い物など、各々で過ごすことになった。わたしは一人、空港に来たら行こうと決めていた場所に向かう。本屋だ。
 グアムには、本屋があまりないらしい。二日目にいったアウトレットの中と、空港、あともう一箇所にあるらしいが、全てホテルから歩いて行ける距離ではなかった。グアムに住むことはできないなあ、と思う。
 空港の本屋はキオスクのようにこぢんまりとした店だったが、雑誌や絵本があり、十分に楽しめた。POLARという、子供向けの本を購入することにする。決め手は、日本ではこんな写真使わないだろ、子供用だぞ……と言いたくなるようなホッキョクグマの写真(捕食後なのか、血まみれ)だった。財布を見るとドルが少し余っていたので、ナショジオキッズの雑誌と謎の絵が描かれたクッキーも購入する。
 謎と言えば、本屋のレジに、ドゴームのフィギュアが置いてあったのも謎だった。(わりとマイナーなポケモンです)そういえばアウトレットのおもちゃコーナーにはバリヤードやブルー、ルンパッパのぬいぐるみが置かれていたが、グアムではマイナーなポケモンが逆にメジャーなのだろうか。ピカチュウやフシギダネはどこへ行ったのか。
 ゆっくり時間を使って買い物したつもりだったのに、まだ時間が余っていた。ゲートはまだ開いていないけれど、することもないのでゲート付近まで移動し、ベンチに座って待つことにする。
 待機スペースのわきには、小さな売店があった。手荷物検査のために飲み物はすべて処分してしまったので、何か買おうと商品を見る。ドルは全員ほぼ使い切っていたしカードも使えない店だったのだが、日本円が使えるとのことで安心した。ひばりは、スタバの瓶コーヒーをレジに持って行く。
「日本円でお願いします」
 すっ、と差し出された電卓には、一七八〇、と表示されていた。え? スタバだとはいえ、二本入りだとはいえ、ちょっと高すぎないか。フラペチーノを三つ飲める。
「のーさんきゅー!」
 これはあかん、と思い、両手を横に振った。レジのおばさんは「ああそう、じゃあいいけど」と言わんばかりの嘲笑を見せる。ひばりは瓶を冷蔵庫に戻す。
 そういえば母は、前回もこういう店に寄り、水を馬鹿高い値段で買わされたと言っていた。同じ轍を踏まずに済んだのだ。一安心する。
 しかし、やっぱり喉は渇く。このままでは成田空港につくまで、何も飲めないことになってしまう。苦肉の策、「塵も積もれば山となる作戦」を実行することにした。
 それぞれの財布から残ったドルやらセントやらをじゃらじゃらかき集めると、八ドルほどになった。協議の末、水とプリングルスをレジに差し出す。塩分と水分のセットで、値段は七ドル五十セント。
 会計をしていると、ひばりの携帯に父から連絡が入った。
「もう少し先のゲートまで行ったら、カードが使える店があったよ」
 コントさながらのタイミングのよさだった。レジのおばさんの「Thank you」に悪意が含まれている気すらした。
 購入したばかりの水とプリングルスを持って奥の売店に向かう。「LAST CHANCE」と書かれたその売店で、追加の水とちょっとのお菓子を買った。適正価格だった。
 あとはもう、ゲートが開くのを待つだけだ。行きは久々の飛行機だったので、もし墜落するとわかったらどうすればメッセージを残せるのだろうとか、死んだらペットの面倒はあの人がみてくれるだろうとか、ひたすらくだらないことを考えていたのだが、帰りは慣れたもので、すっかりリラックスして飛行機を待った。(が、ちょっと油断すると「と、油断したのが運の尽きだった……」みたいなモノローグが浮かぶので気を引き締め直した)
 みんなで遊んで時間を潰そうと、つぐみの彼氏がかばんから出してくれたのはミニジェンガだった。ひとつのブロックが小指くらいの大きさだ。プールサイドの大きなジェンガに比べると、豆粒のようでかわいい。
 同じく日本に帰るであろう二人の子供が、ミニジェンガではしゃぐ五人の大人をじっと見つめていた。日本が少しずつ、近付いている。
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