宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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こっそり出かける夜散歩

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 しんと静まった夜に導かれ
 財布だけつれて家を出る
 少し冷えるからいちおう羽織って
 風呂あがりだからサンダルで
 ひやりと吹いた北風に教えられ
 久々に会うベテルギウス
 音をたて通るヘッドライトが
 からだの冬を呼び覚ます
 季節のすきまをすり抜けるように
 こっそり出かける夜散歩


   *


 夜明け前に出かけなければいけない日。たまった丸つけ、運動会、そのほとんどが仕事が大変なときなのだけど、夜のような空の下、外に出るのは妙にわくわくする。
 子供のころに連れていってもらった、夏の旅行のせいかもしれない。ある年は下田へ、ある年は鴨川へ。渋滞にあわないように深夜三時に起きて、四時に出た。普段なら静かな闇だけが広がる時間なのに、家中の電気がついている不思議。荷物の最終確認をする、いつまでも起きない弟を起こす。それからこっそり、持っていくおやつをつまむ。夜明け前のわくわくは、きっとこのとき養われた。
 とても緊張する早朝もあった。受験、就職活動、採用試験。そんなときは「曲おみくじ」をした。好きなアーティストの曲をシャッフルで再生して、出てきた曲がその日の運勢。大抵いいように解釈するが、スピッツの「おっぱい」が出たときは数秒なやんでやり直した。
 特別だったのは、高校生のときの早朝。大事な試合の日の朝、張り詰めた空気と自分の気持ちを重ねた。一秒で変わる眺めは写真に残せない。夜の空がどうやって色を変えていくのかを知ったのもそのときだった。特別な空気に浸った世界を、中央線のオレンジが切り裂くのを見た。
 そんな記憶たちのおかげで、夜と朝の境目にたまらなく惹かれてしまう。ちなみに冬場は毎日が夜明け前に出勤なので、日々わくわくしながら自転車に乗っている。
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