宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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おはようの亥

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 犬の毛にまみれたセーターで過ごすのはやわらかな午後。
 のどかなあくびの奥から聴こえるちいさな声。
 しっぽの先に夢を乗せ駆けあがるのは初夢の山。
 四季のめぐる安らかな世界。
 どこまでもつながるその景色を綴り続けると誓います。
 詩人が創り出すものは、すべてのはじまりなのですから。


   *


 正月にまつわるあれこれ。
 干支とお餅と甘酒は、一年を通してもてはやされるべきだ。特に干支、きみはもっと自分から主張しなきゃいけない。だって年賀状を目にする時期しか見かけないよ、それでいいのか本当に。
 正月といえばカラオケ。実家に帰って、たいていすることがなくて母とカラオケに行く。と思ったけど、よく考えたら夏に帰省してもカラオケに行くし母の日に遊びに行ってもカラオケに行くので正月は関係なかった。
 わたしの妹たちと弟は、年越しのとき必ずとぶ。「年越した瞬間、地上にいなかったぜ」的なあれである。だからわたしはその様子を連写する。テレビにはジャニーズカウントダウン。響くのは鐘ではなく夜中に出勤する父のいびき。だけど今年は妹が二人とも出かけていて、そうかもう大人なんだなあと思う。
 とかいって、そういえばわたしもずっと実家で年越ししてなかったなあ。どう過ごしてたかっていったら、ゆく年くる年をみて、深夜に神社まで歩いて初詣にいって、列に並びながらモンハンするとかそんな。ご縁はもういらないよねって百円いれたのがうれしかったり、おみくじを一瞬でなくしたり。
 正月は、途切れることのない時間の流れを区切ってくれる、ありがたい、おめでたいもの。正月がなければ、冬はただの死の季節だったと思う。静かな季節に節目を作った昔のひとは、とてもいいセンスをしている。
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