宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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のろいのことば

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 「紫鏡」って言葉を、はたちまでに忘れられないと、死んじゃうらしいよ。
 みくちゃんにささやかれて怯えた夏祭の夜。

 泣きじゃくる私に、
 「白い水晶」って言葉もいっしょに覚えていれば大丈夫って、
 あわてて教えてくれたっけ。

 みくちゃん、私、一週間後に二十歳になるよ。
 花びらが舞い上がると、幼い笑い声が聞こえた気がした。


   *


 小学生のとき、図書室で学校の怪談シリーズを読むのが好きだった。「紫鏡」という言葉はその本に載っていたもので、二十歳になるまでにこの言葉を忘れないと、なんと死ぬのだという。んなわけあるかと今なら思うが、十歳に満たない子供にとってその呪いは重すぎた。中学生になり、呪いを解く「白い水晶」という言葉を知ったとき、ばかばかしいと思いながらも安心したのを覚えている。
 紫鏡の他にも、覚えていたら死ぬといいう言葉があった。わたしにとってはこっちの言葉の方が恐怖だったのだが、最近そんなことを友人に話すと、意外な顔をされた。
「俺もそれ知ってるけど、初めて聞いたときは小学生ながらに笑っちゃったよ」
 聞くと、彼はその言葉でコミカルな絵が思い浮かぶのだという。わたしは写実的でグロテスクな映像が浮かぶけど。そう言うと、彼は確かめるように呪いの言葉を口にした。
「『血まみれのコックさん』、てやつだよね」
 その思わぬ間抜けな響きに、数十年前に恐怖に震えたはずのわたしも、うっかり笑ってしまった。チョコあ~んぱんのパッケージが頭をよぎる。彼はさらに続けた。
「血まみれなのに、さんづけしてるところが笑えるよね」
 その決定打に、もはやギャグにしか聞こえなくなった呪いの言葉。二十歳もとっくにすぎた今、彼のおかげで本当の「白い水晶」を手に入れることができ、感謝している。
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