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◯月×日『違和感』
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ベッドの上で膝を抱えながら座る僕。
ベッドを背もたれにしながら携帯をいじる矢野くん。
矢野くんの後頭部を見つめながら僕は小さな違和感を感じてた。
ここ数日、矢野くんは僕を家まで送り届け、そのまま僕の部屋に上がり込んではこうして過ごす。
携帯をいじる。
雑誌を読む。
テレビを見る。
セックスをする。
会話はない。
朝のお迎えから一日が始まって、学校。
学校から家への送迎を繰り返す。
丸一日矢野くんと一緒。
嬉しいと感じる一方で、もうひとつ感じるのは違和感。
変だ。
一緒にいる時間は今までだって長かったけど、最近はなんていうか……濃密に感じる。
矢野くんから不自然に距離を詰められてる感じがする。
何故だかはわからない。
また矢野くんの気まぐれなのか…。
静かな部屋の中。
居心地がいいとは言えない空間を、膝を抱えながら持て余していると、僕のズボンのポケットで携帯が震えた。
マナーモードのそれに気づいたのは僕だけで、矢野くんは自分の携帯に夢中な様子。
僕は携帯を手に取ると届いたばかりの通知を開いた。
『卵焼き食べたい』
差出人は"篤也さん"
途端に背筋に嫌な汗が流れた。
あの日以来彼からは連絡がなかったので会っていない。
彼からの連絡がなければ会うことがない関係だから当然と言えばそうなのだが、何故今なのか。
こんなに近くに矢野くんがいる今なのか。
携帯を手にしてしまったことを後悔する。
けれど彼の要望に応えなければならない。
しかし今は無理だ。
側に矢野くんがいる今は彼に返信なんてできない。
僕は少しだけ震える手で静かに携帯をポケットへ戻す……が、いつの間にかベッドに乗り上げてた矢野くんに腕を掴まれた。
「っ、」
驚いて手を引くが、呆気なく力負けして携帯がベッドの上に転げ落ちる。
反射的に携帯に手を伸ばすが、僕より早く矢野くんの手が携帯を拾い上げた。
そして矢野くんの碧眼がディスプレイを見下ろす。
…終わった。
矢野くんに見られた。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
ディスプレイを見ていた矢野くんの碧眼が僕を射抜くように見る。
自分でもわかる。
今の僕は真っ青だろう。
矢野くんに知られたくないから篤也さんの要望に応えていたのに…。
全て水の泡だ。
全て…
「え」
なにもかも終わったと諦めた瞬間だったのに、矢野くんはあっさり身をひいた。
僕の携帯をベッドに放ると元の体勢に戻った。
何が起きた?
絶対問い詰められると思ったのに…。
なぜ彼から僕に連絡がくるんだ、どう言う関係だと問われると思ったのに…。
酷く混乱したが、ベッドに放られた携帯を見て納得し、安堵した。
携帯のディスプレイはロック画面になっていた。
数分携帯に触れないと起こるあの作動が働いたのだろう。
つまり、矢野くんは篤也さんからの通知を見ていない。
身体から力が抜けて、安堵のあまり腰が抜けそうだった。
よかった。
よかった…と拾った携帯を握りしめた。
だけど、その一方で、僕が感じていた違和感の意味もハッキリしてしまった。
矢野くんは気づいてる。
僕が秘密を抱えてると。
篤也さんが関係してるのは知られてはいないだろう。
けど、暴こうとしてる。
僕の、秘密を。
ベッドを背もたれにしながら携帯をいじる矢野くん。
矢野くんの後頭部を見つめながら僕は小さな違和感を感じてた。
ここ数日、矢野くんは僕を家まで送り届け、そのまま僕の部屋に上がり込んではこうして過ごす。
携帯をいじる。
雑誌を読む。
テレビを見る。
セックスをする。
会話はない。
朝のお迎えから一日が始まって、学校。
学校から家への送迎を繰り返す。
丸一日矢野くんと一緒。
嬉しいと感じる一方で、もうひとつ感じるのは違和感。
変だ。
一緒にいる時間は今までだって長かったけど、最近はなんていうか……濃密に感じる。
矢野くんから不自然に距離を詰められてる感じがする。
何故だかはわからない。
また矢野くんの気まぐれなのか…。
静かな部屋の中。
居心地がいいとは言えない空間を、膝を抱えながら持て余していると、僕のズボンのポケットで携帯が震えた。
マナーモードのそれに気づいたのは僕だけで、矢野くんは自分の携帯に夢中な様子。
僕は携帯を手に取ると届いたばかりの通知を開いた。
『卵焼き食べたい』
差出人は"篤也さん"
途端に背筋に嫌な汗が流れた。
あの日以来彼からは連絡がなかったので会っていない。
彼からの連絡がなければ会うことがない関係だから当然と言えばそうなのだが、何故今なのか。
こんなに近くに矢野くんがいる今なのか。
携帯を手にしてしまったことを後悔する。
けれど彼の要望に応えなければならない。
しかし今は無理だ。
側に矢野くんがいる今は彼に返信なんてできない。
僕は少しだけ震える手で静かに携帯をポケットへ戻す……が、いつの間にかベッドに乗り上げてた矢野くんに腕を掴まれた。
「っ、」
驚いて手を引くが、呆気なく力負けして携帯がベッドの上に転げ落ちる。
反射的に携帯に手を伸ばすが、僕より早く矢野くんの手が携帯を拾い上げた。
そして矢野くんの碧眼がディスプレイを見下ろす。
…終わった。
矢野くんに見られた。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
ディスプレイを見ていた矢野くんの碧眼が僕を射抜くように見る。
自分でもわかる。
今の僕は真っ青だろう。
矢野くんに知られたくないから篤也さんの要望に応えていたのに…。
全て水の泡だ。
全て…
「え」
なにもかも終わったと諦めた瞬間だったのに、矢野くんはあっさり身をひいた。
僕の携帯をベッドに放ると元の体勢に戻った。
何が起きた?
絶対問い詰められると思ったのに…。
なぜ彼から僕に連絡がくるんだ、どう言う関係だと問われると思ったのに…。
酷く混乱したが、ベッドに放られた携帯を見て納得し、安堵した。
携帯のディスプレイはロック画面になっていた。
数分携帯に触れないと起こるあの作動が働いたのだろう。
つまり、矢野くんは篤也さんからの通知を見ていない。
身体から力が抜けて、安堵のあまり腰が抜けそうだった。
よかった。
よかった…と拾った携帯を握りしめた。
だけど、その一方で、僕が感じていた違和感の意味もハッキリしてしまった。
矢野くんは気づいてる。
僕が秘密を抱えてると。
篤也さんが関係してるのは知られてはいないだろう。
けど、暴こうとしてる。
僕の、秘密を。
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