ヤノユズ

Ash.

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○月×日『矢野昔話~将平~』★

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柳一志やないかずしと出会って、人生が狂った。

高校の入学式。
俺は、彼を初めて目にした瞬間、言葉では言い表せない気持ちになった。
彼がどういう人間かも知らず、判断するのは外見だけ。
だけど、彼はその存在だけで俺に強烈なインパクトを与えた。

これは、俺が柳一志という人間に溺れた憐れで惨めな、人生唯一の汚点……そんな話だ。



入学から1ヶ月。

この頃の俺はというと、自分があらゆる点で人より優れていることに気づいてた。
俺の容姿は、日本人特有の黒髪はそのままに、瞳の色はブルー。
これが小さい頃は気味悪がられた。
けど何故だか中学に上がった辺りからはウケがいい。
家系のせいか体格も同級生より育ちが良くて、それにつけ加えて勉強もできたものだから同級生、上級生や担任、保護者にまで好評だった。
だからといって同性に嫌われたことはない。
とにかくチヤホヤされた。

……と、こんな感じで、幼少期を除いて今まで自分が何事にも中心に置かれていたから、他人が自分より優れてるなんて思ったことは無かった。

そんな俺が唯一目を引いたのが、柳だった。
柳一志という人間は、まず俺より背が高い。
同学年で俺より背が高いやつはいない。
なんなら、上級生だって俺より低い。
そんな俺より柳は背が高く、さらに顔面も整っていて男前だった。
彫りが深くて少し強面と言ってもいいけど、男らしさがあっていい。
黒髪で、清潔感あって、チャラチャラしていない所が好印象だった。

たかが高校生活にカーストなんてものには興味がなかったけど、なんとなく……柳となら友達になれそうな気がした。
……一方的にだけど。

けど出鼻を挫かれた。
俺と柳はクラスが別だったからだ。

クラスが別じゃほぼ接点はない。
移動教室の時になんとなく柳の姿を探したりしたし、柳の名前を誰かが口にしたら耳を傾けたりもした。
クラスが違うくらいどってことないと思ったけど、あまりの情報の無さに、つまらなくなってた。
かと言って、彼のクラスに乗り込んで柳てどんなやつ?なんて怪しい奴過ぎて聞けないし、本人に話しかけるのもなんか嫌だった。
俺にできることは、こっそりと柳を視線の先で探して聞き耳を立てることくらいだった。
あえて言うと、ストーカーではない。
興味があっただけだ。
柳て人間に。
同じ男として。

けど、聞き耳効果で得られた少ない情報の1つに、柳は相当な女好きだということが含まれてた。
この噂が事実であることは、なんとなくわかった。
柳を視界に捉えると、もれなく女子生徒も入ってくるからだ。
しかも1人ではなく、少なくても3人以上は侍らせてる。
見た感じ恋人ではなく、都合のいい関係という様子だ。
これを知った時、かなり呆れた。
自分とは違う人種だと悟ったからだ。
自分の見た目で女性を釣って、しかも遊んでるなんて、しょうもない。
見た目がいいと寄ってくるのはわかる。
自分がそうだからだ。
柳が誰かと真面目に交際しているというなら、俺的に評価は上がっただろう。
けどただの女好きだなんて。
しかも同性に嫌われるタイプの女好きだ。
柳本人も女生徒とばかりいて男子生徒と一緒の所は見た事がない。
周りが一緒にいたがらないのか、本人にその気がないのかはわからないが、柳の周りは常にハーレムだ。

柳は周りのガキくささが残る男子生徒に比べたら男性の体が出来上がってた。
背はあっても線の細い俺とは違って、柳は骨格も男らしくて、色気すら感じるし、そんな柳の見え隠れする雄のフェロモンのようなものに惹かれる女子生徒がいるわけだ。
本能で、柳に目をつけた俺まで、柳に群がってる子達と同等だと思えて、酷く嫌な気分になった。
俺も自分の外見を武器にしてきたけど、柳とは違う。
俺のは、女性を侍らせるためじゃない。
自分を守るためだからだ。

柳と肩を並べてみたら面白そうだと思ったのに。
残念でならなかった。

俺は、別に男が好きなわけじゃない。
柳が特別だった。
けど俺はハーレムの一員にはなれない。
柳も、女の子相手だったら大歓迎だったかもしれないけど、俺はどこからどう見ても男だ。
小さい頃から綺麗な顔だと言われてきたけど、高校生にもなると、だいぶ男らしくなってきた。
億が1でも女好きが振り向いてくれるようなものは何も持ってない。
小柄でもない。
柔らかくもない。
胸もない。

きっと、このまま何事もなく、俺は柳の世界に踏み込むこともなく終わるんだろう。
 


.......そう思い始めた頃だった。



「ごめんなさい」

目の前で、こうべを垂れて涙を拭い、謝罪をするのは2週間ほど前から交際してる俺の彼女だ。

「好きなのは将平くんだけなの……」

浮気をした言い訳を並べながらガチ泣きし出す彼女に、吐き気がした。

「彼とはもう話もしない、だから許……」

「許す許さないとかじゃなくてさ、普通に気持ち悪いよ。他の男に股開く女とかさ。」

あ、ちょっと言い過ぎたかな……?
けど、まぁいいか。

「じゃ、さよなら。」

彼女を置き去りにしてその場を離れた。
柳の女性関係をしょうもないと言っておきながら、自分も告白されて何気なしに彼女と付き合ってた。
だから、俺の彼女に何するんだ!て、浮気相手に怒れるほど彼女に対して愛情がない。

今まで、交際相手は年上の女性ばかりだった。
それなりに経験はした。
だから、普通に男女交際はする。
硬派なわけではないし、普通に性欲もある。
ただ、高校入ってから初めて同学年の子と付き合った。
真面目そうな子だったから、浮気なんて大胆なことするとは夢にも思ってなかった。
そこは残念だ。


その出来事から1ヶ月後。
また、彼女に浮気をされた。


今度は1週間しか付き合っていない隣のクラスの子だ。
前の時と全く同じで、浮気をしてしまったけど出来心だから許してほしいと言われた。
今回の子も告白されて何気なしに付き合った子だったし、許して付き合い続けるほど彼女のことが好きなわけでもなかったので別れた。
俺に振られて泣きくずれる子に背を向けながら、短期間で2度も浮気が原因で別れるなんて.......と信じられない気持ちになった。
ふと、浮気相手のことを聞くのを忘れたなと思った。
前回も彼女の浮気が原因で別れた。
ただ単に興味がなかったからだけど、その時も浮気相手の名前は聞いていない。
俺は、自意識過剰だとは思わないけど、自分が学校内で非常にモテる存在なのは自覚してる。
というか物心ついた頃から今現在までモテなかったことなんてない。
常にチヤホヤされてた。
そう、柳とは別の意味で。
その俺を袖にして浮気。
しかも2ヶ月で2人。
どちらの彼女も大人しいグループの子で、人見知り発動率の高い子だった。
俺と寝たくてまとわりついてくる頭の軽そうな女とは違ったし、告白してきた時も小さい体を震わせて、顔を真っ赤にして一生懸命て感じに少し好感が持てたから交際してみる気になったんだ。
絶対浮気するようなタイプじゃないのに、なんでそんな気になったのか、そう思わせたやつが気になった。

数日後、浮気相手は呆気なく見つかった。
俺が探すまでもなく、やつのほうから俺に接触してきたからだ。
それがまさか……、まさかの柳一志だとは夢にも思っていなかったから、正直驚いた。

「あの子達処女だったんだけど、びびった。矢野くん手出してなかったんだなぁ」

開口一番がこれだった。
それにまずドン引きした。
あれだけ柳との接点を望んでいたのに、理想が崩れ去る瞬間とは本当に刹那的だった。
それに、まさか同じやつに2人とも寝とられてるとは思ってなかった。
しかも、どちらも俺の彼女とわかった上で手を出したみたいな口ぶりだ。
けど、それよりだ。
もう過去の元カノとかどうでもいい。
驚いたのは、柳一志は俺が思っているようなただの女たらしな男じゃなかったという事実だ。
なんていうか……一言で言ったら”下品”だ。
俺が手をつけた女を抱きたかったと言っているようにも聞こえて気色が悪い。
俺が惹かれた相手はこんなやつだったのか……?
確かに、俺の一方的な興味だった。
接点がなかったから今まで話しすらしたことがなかったから、勝手な理想もあったと思う。
けど、ここまで現実を突きつけられるとは思わなかった。

「.......悪趣味だな。」

それが、俺が柳に初めて発した言葉だった。

「気になるじゃん。学校一のモテ男、矢野将平の彼女てさ」

悪びれもせず柳は俺の肩を抱くと、至近距離でケラケラと笑う。
こんなに近くで柳を見た事がなかったので、内心鼓動が早くなった気がした。

.......やばい、至近距離で見ると顔が整いすぎてるのが分かる。

「うわ、やばい。間近で見たの初だわ。ほんとに目が青いんだな」

俺の心情と似たようなことを柳が口にする。
俺が横目で柳を見るのとは正反対に、柳は無遠慮に興味津々といった様子で俺をガン見してくる。

俺は生まれつき瞳の色が青い。
クウォーターてやつで、髪は日本人特有の真っ黒髪なのに、瞳にだけ外国の血が出た。
10こ下の弟なんかそれにプラス髪が金色だ。

「近い……っ」

急にこんな距離感、いくら同性相手でも心臓に悪い。
しかも俺はまだ現実が受け止めきれてない。
相手はあの柳なんだ。
理想を膨らませ過ぎたにしろ、外見の造形は嘘をつかなかった。
至近距離で見た柳は、遠目で見てた数万倍男前だった。
背も、頭一つ分と思っていたけど、見上げるくらいに高い。
180はありそうだ。
少しツリ目で、微笑む目尻に色気がある。
けど、思ってたのとは違った。
やっぱり、外見的な魅力はあるかもしれないけど……それだけだ。
もっと惹かれる男だと思ったのに、ただの下品な男だったんだ。
所詮16のガキということなんだろうか。
ドキドキと高鳴る鼓動と、現実を知ったショックでどうしていいかわからない。

「なぁ、矢野」

「.......何、」

「矢野てインポなのか?」

「………………はぁっ?」

さっきから俺の中の柳像がどんどん崩れていってる。

「なぁ、矢野はああいう地味目のちっさい子が好きなのか?それとも処女好きとか?」

「何言ってるんだよ。だいたい人の彼女寝取っておいてどんな態度だよ。」

もうこの際、寝取られたことはどうでもいいんだけども。
今の俺は、理想と現実のいたばさみで頭がおかしくなりそうなんだよ。

「寝とった女の自慢話がしたいならわかったから。もう構わないでくれ」

肩に置かれた柳の手をそっと下ろして、背を向けようとすると、今度は腕を掴まれた。

「え、やだよ」

「は?」

「なぁ、もう女つくる気なくなった?」

柳が何をしたいのかも、何を知りたいのかもよくわからない。
よくわからないけど、柳はさっきまでのヘラヘラとした表情を引っ込めて、真顔で俺の目をじっと見下ろしてくる。
柳が何を考えてそんな顔を俺に向けるのかは分からなかったけど、答えるまで腕を離してくれなさそうだから、柳の気が済むまで相手をしてやることにする。

「……そうだな、当分はつくらないかもな」

「じゃなくて、ずっとだよ。」

「は……?」

ずっと?
俺にずっと彼女つくるなって?

…………何で?

もしかしてまた俺の彼女を寝とりたいのか?
だとしたらそれになんの意味が……

「お前はそっち側じゃないだろ。あんなメスにお前はもったいないよ。ちゃんとわかってる?初めて見た時からずっと思ってた。この綺麗な顔、芸術品だ」

「…………は……はぁ?」

何言ってるんだ、この男。
そっち側?
そっち側て、どっちだよ!
やばい、
なんか、頭おかしいんじゃ……

「サラサラの黒い髪、真っ白な肌、ブルーの瞳……」

柳の俺を映す瞳がキラキラ輝いてる。

「なに……、なんなんだよ。怖いんだけど」

俺の彼女に興味があるんじゃなく、……俺に興味があるのか?こいつ…

「怖がんなくていいよ。」

柳の手が俺の顔を撫でる。
少し冷たい、大きな手だ。
柳の瞳が今度は熱っぽく、舐めるように俺を見下ろしてくる。
心臓がこれでもかってくらい高鳴る。

「…お前…」

「お前じゃなくて、柳一志。クラスは違うけど、もしかして知らない?」

「……知ってる…」

「ほんと?俺は入学した頃から知ってるよ。矢野将平」

一志がいやらしく笑う。

「なぁ、矢野とエッチしたい」

「はっ?」

ちょっと感動してたのに。
俺が柳に興味があったように、柳も俺の存在を同じ頃から意識してたんだなって、感動してたのに!
ただの下品な男ってのは思い過ごしかなって思いかけていた所だったのに!
結局下品な男じゃないか。

「ふざけてるのかよっ」

「ふざけてないし。マジなんだけど」

高校入学からお互い気になる存在だったって言うなら、男どうしなわけだし、まずは友達からとか、そうなるのが普通じゃないのか?
それがエッチしたいって……、男女見境なくヤりたいだけかよっ!?

「2度も女寝とっといて俺とヤりたいって、本気かよっ」

「だから、わざわざ駆除したんじゃん。邪魔なんだもん、雌のくっつき虫」

駆除……雌…………虫て……。

「……頭痛い。なんなんだよ…」

こいつの言ってることが理解できない。
いや、言ってることは分かる。
けど理解はできない……。

「…………柳て、バイなの?」

自分で言うのもなんだが、この見た目だ。
幼少期から男女関係なく色のついた目で見られてきた。
だからって俺は男と寝たことは無い。

「まっさかぁ。男となんてやだよ。でも、その気になったのはこの顔を見てから」

柳が懲りずに俺の頬を撫でてくる。

「顔……?なんだよ、そんなにこの顔が気に入ったのか?」

呆れながら柳を見ると、すごくいい笑顔で返される。

「そう、すごく。だからヤらせてくんない?」

「顔がいいやつなんて……、探せばいくらでもいるだろ」

それに、簡単に俺の事を抱けると思ってるような言われ方も……心外だ。
そうじゃなくたって冗談じゃないけど。

けど、柳は引かなかった。

「そうかも。けど、矢野がいい。俺の理想なんだ」

「……顔が、だろ」

なんて直球で話すやつなんだろう。
発想もおかしい。
俺の事が欲しいからって、俺の女と寝るか?
ただの女好きじゃないっていうのか?
こいつ、おかしいよ。
けど……"理想"て、その言葉だけで、凄くぐらついた。 

俺もお前に理想を抱いてたから……

「なぁ、矢野ぉ…」

「そんな目で見るなよっ」

まるで欲情した獣みたいだ。
今にも食われそう。

「……とにかく、無理だからっ」

「えぇっ、矢野ぉ」

俺は逃げるように校舎に入った。

わかってる。
たぶん、柳は俺のことが好きだ。
そういう感情があって俺と寝たいと言ってるんだ。
けど、これは俺の都合のいい解釈かもしれない。
ほんとは柳に他意はなくて、興味本位でたまたま顔が気に入った俺とヤりたいだけかも。
けど、百歩譲って俺が女の子の気持ちになって考えても、寝るだけの関係なんて嫌だ。
だって、そんなのは嫌だろ。
唯一無二がいい。
俺にはプライドがある。
それに、好きなやつにヤり捨てられるなんて、残酷じゃないか。
いや、好きじゃないけど。
俺は、興味があっただけだ。

それも今日で全部崩れ去ったけどな!


そのやり取り以降、柳との物理的な距離がなぜか縮まった。
俺を抱きたいと告白したからか、やつの行動が大胆になったからだ。
後に、これは柳の努力の賜物だったと思う。
全力で拒絶する俺に、柳は食らいついてきた。
クラスも違うのに、休み時間毎に俺の元にやってきて俺を口説く。

「なぁ将平、帰りにここ行こうよ」

「……嫌だよ。」

一志がスマホ画面を見せてくるので、それを一目してから目を逸らした。
いかにもなデートスポットだった。
男2人で行ったって楽しくないだろう。

「じゃあうちにしよ。いつものやつ。」

「……まぁ、それなら」

放課後に一志の家でテレビゲーム。
俺たちの関係はほんとに驚くほど進展していた。
お互いを名前で呼ぶくらいには友達らしさもあった。
一志の押しに負けてってわけではない。
一志は、友達としては普通に良い奴だった。
隙あらば口説いてくるのさえなければ、友達としてやっていけるくらいには悪い奴ではなかった。
当初俺が思い描いていたような、肩を並べられる友達……ていうのとは少し違っていたけど、居心地の良さはあった。
最初は家になんて行ったら無理矢理事に持ち込もうとしてくるやつだと思ってた。
けど、普通に会話して、ゲームして、終わった。
あんまり普通だったから、拍子抜けした。
あんな直球でアホなこと言ってくるやつだから、部屋に上がったら押し倒して来るんだと思った。
そのことを、何度目か一志の部屋に上がった時に会話の流れで聞いてみたことがある。
一志は笑って答えた。

「そんなの楽しくないだろ」

そう言った。
お互いを求めあってこそ気持ちいいんだと。
人の彼女を寝とるやつなんだから、ヤれればいいんだろと疑ってた。
俺の事だって、気に入ってるのはこの顔だけなわけだし。
俺だって、性欲処理でセックスはしない。
好きな子としかしないし、交際してない相手となんてありえない。
だから、俺が一志と寝るってことは、俺が一志を好きで、一志も俺を好きじゃないとありえない行為だ。

……まぁ、ありえないことだろうけど。

一志との関係は完全に友達に位置付けされた高校1年の後半。
もうすぐ2年に上がるって頃、委員会で親しくなった3年生の先輩に告白された。
高校に入学してから告白された数は両手の指の数では足りなくなってる。
だからもう覚えてない。
その数多の告白に応えたのは2度だけ。
どちらも一志のせいで終わりを告げた。 
先輩に告白されて、一番最初に俺が何を考えたかっていうと、どうせ付き合っても……また一志に寝とられるんじゃないかってことだ。
いや、最初の2人の時とは違う。
今は親友とまではいかないけど、かなり親しくなってる。
学校生活、一志と一番一緒にいるかもしれない。
そんなやつの、……友達の彼女、とるか……?

俺は先輩の告白に応えた。
先輩のことが好きかと問われたら、正直そうではない。
付き合ってもいいかと思うくらいには好きだけど、この交際には、打算があった。
一志が、俺との友情を壊すのかどうかが知りたかったからだ。
一志を親友と呼ぶには……信用がなかった。

俺が、一志との友情を大事にしたいと思い始めてたんだ。

俺は一志が友達として好きになってた。
今俺が望むのは、一志もそうであることだ。
だから、俺のことが好きなら、寝とるなんて形でなく、できれば……俺に愛を囁いて欲しかった。


けど、一志は俺の期待を見事に裏切って、3度目がおきることになる。


目の前で、頭を垂れて涙を拭い、謝罪をするのは先輩だった。

「好きなのは将平くんだけなの……」

もうこの光景も見飽きた。

「一志くんとはもう話もしない、だから許……」

「許す許さないとかじゃなくてさ……」

俺も、何毎回同じこと言ってるんだろうか…。
それより、彼女の口から、一志の名前が出て、より一層不快感が増した。
俺の友達と寝た女だ。
そうなるように仕組んだのは自分だ。
けどそうならない未来を望んでたんだ。

「あいつとは、好きにしてよ。俺には近寄らないでください」

まぁ、どうせ卒業していなくなる人だ。
泣きじゃくる彼女を置き去りにして、1人になれる場所を探した。
こうなることはわかってたのに、気持ちが落ち着かない。
なんでかって……、
思ってたのと違うからだ。
1度目や2度目と同じで、彼女を寝とられたことへの怒りはない。
けど一志が、俺との友情より、女と寝ることを選んだということにショックを受けてる。
女の子を雌虫扱いして、駆除と言った男。
俺を説き伏せるより、その方が楽なんだろうか?
それとも、俺にそんな価値はないってことなんだろうか。

俺は……女に一志をとられたって、思ってる。

だって、俺なら、友達の彼女を寝とったりしない。
一志は、前と気持ちは変わらないんだろうか……。
俺を女に取られたくないと、そう言ってた。
だから、また同じことをしたんだろうか。
俺が今いだいてるこの気持ちを、一志も感じてたんだろうか。
そうじゃなかったら、俺のこの気持ちのやり場がなくなる。

……俺、なんでこんな気持ちになってるんだろう。

友達としては良い奴。
一志か、俺が女だったら、ありえた話だったかもしれない。
俺を抱きたいと言うあいつに、ありえないと思ったのは、男だからって理由以外にも、あいつの軽薄さが信用ならなかったから。
人のものに手を出すし、俺と寝たいと言ってたくせにあいつは俺一筋てわけでもなかった。
来る者拒まずで、何度とラブホテルへやつを見送ったことがある。
やつは、俺もその中の一人にしたいだけなんじゃないのか。
俺は、やつの好きな"見た目"だから。
だってあいつは俺を好きなんて1度も言ってない。
俺に告白してきてくれた子達は、みんな好きだと言ってくれた。
好きだから付き合いたいんだと。
けど、あいつは違う。
俺がこんな風貌じゃなかったら、友達というポジションにすらつかなかったかもしれない。
それほどに、一志の軽薄さがわかる。
そんな一志に、俺は抵抗してきた。
自分のプライドが許さなかったから、……他のやつらと、自分が同等なんて。
この気持ちがなんなのか、もう分かってる。
けど、言うつもりなんてない。
言ったら負けだ。
一志のことだ、だったら寝ようよ!て言ってくるに違いない。
だったら友達を演じ続けた方がマシだった。
いや、もうそれすら無理かもしれない。

俺は、体だけ繋がることなんてできない。
自由奔放なあいつを、自分にとどめて置ける自信もない。
それに、俺の場合は女の子とは違う。
男だし、いくら顔があいつのタイプでも、ずっと維持して置けるものじゃない。
つなぎ止めておける武器にはならない。
これから背だってもっと伸びるだろうし、骨格だって男らしくなっていくはず。
それにやっぱり、体は男なんだ。
あの女好きが、この体にハマるわけない。

「……はは、馬鹿だな」

さっきから、どうやって一志をつなぎとめて置けるか考えてる。
ここで縁を切って終わりにすればいい。
高校生活は短い。
あっという間に一志のいない世界に出れる。
なのに……、

「将平、すっげぇ探した」

一志の声に、反応できなかった。
俺の気持ちが何一つ固まってないからだ。

「なぁ、怒った?でも将平が悪いんだぜ?暫く女つくってなかったのに、俺に内緒でさぁ」

内緒にしていたわけではないけど、あえて言わなかったのは事実だ。

「女にモテても女見る目ないよ。俺がちょっと迫っただけですぐ股開くんだからさ」

確かに、そうかも。
自分で3度目があるかもしれないと予想もしてたくらいだ。
それか、よっぽど一志の口説き方が上手いんだろう。

「そうかもな。……女見る目ないなら、いっそ男に切り替えようかな」

一志の目は見ずに、少しヤケになって呟いた。
そんな気は無いけど、一志のことだから、だったら自分と寝ろと迫ってくるかもしれない。
それで、俺はまた一志に幻滅するんだろう。
下品な男だって。
それで終わりにすればいい。

「ダメだっ」 

一志が声を荒らげた。
驚いて、咄嗟に一志の顔を見ると、さっきまでのヘラヘラした態度が嘘みたいに、一志は真剣な表情をしていた。
少し焦っているようにも見える。

「誰にもさわらせないからな。女だって我慢ならないから排除してるんだ。将平には俺だけだ。俺だけだからなっ」

一志の手が、俺の腕を掴む。
その力強さに、胸が痛いくらいに高鳴った。

「…………俺だけって?」

上手く言葉が出てこなかったけど、息を飲んでから言葉にした。

「将平と、寝るのは俺だけだ」

好きって、言ってくれればいいのに。

もうその表情が、声色が、そう言っているようなものだったけど……。

「……約束できるか?」

少し声が震えた。
けど、一志の目を真っ直ぐに見て、一志の様子を伺いながら言葉を紡いだ。

「え?」

「女とは寝ない。俺だけだって、約束できるのかってきいてるんだ」

顔が熱い。
恥ずかしい……。
それに、悔しい。
絆されて、結局俺の方が折れてる。

「するっ」

一志が俺の手を握る。
一志の目が、あの時と同じように、俺を映して、キラキラと輝いて見えた。

「約束するっ。将平っ」

今度は抱きしめられた。
いや、飛びつかれたって表現が正しいかも。

「すげぇ嬉しい。大事にするよ、将平…」

そっと顔を寄せられて、戸惑いながらも目を閉じると、ゆっくりキスされた。
人のいない校舎裏で、一志と初めてのキスをした。
好きだって、その言葉を聞きたかったけど、折れた方の……惚れた方の負けなんだよな。
もういいやって、一志が去って行くのは嫌だった。
だったら俺が折れたらいいんだ。


ただの興味じゃなかったんだ。
……ほんとは一目惚れだったんだ、きっと。


もしかしたら好きだなんて言葉、一志から聞けないかもしれない。
一志が念願を叶えたら捨てられるかも。
けど、悲しいけど仕方ない。
俺が一志のことを好きなんだから……


それからしばらくして、俺たちは2年に進級し、今回は一志と一緒のクラスになった。
始業式を終えて、一緒に帰宅する。
よくある流れで一志の部屋に上がり込むと、急にベッドに押し倒された。

こんな展開は、交際を始めてから初めてのことだった。

「ちょ、何…」

「したい。」

したいって……

言ってる意味が分からないわけじゃない。
けど、急すぎて驚いてる。
こんな日が来るとは思ってた。
実はもっと早い段階で来ると思ってた。
一志は最初から俺とヤりたがってたし。
けど俺は、一志が俺とヤって満足したら、用済みになって捨てられる……それが怖かった。
だから、そういった雰囲気作りには積極的にはなれなかった。
そう思うくらいに、この頃の俺は初めて一志を目にしたその日よりずっと一志に惚れてしまっていたから。

「すげ…、綺麗だ、将平…」

一志は俺の返事を待たずに、俺の制服を捲ると、肌に指を這わせ、感動しているような声を漏らす。

「……何言ってんだよ、そんなとこさわったって、胸もないし…」

「こんな綺麗なの、初めて見た」

「っ、ぁ」

一志の舌が肌を舐める。
乳首を舌で転がして、吸い付く。

「んっ、そんなとこ…、あっ、一志っ」

ズボンを脱がされ、恥ずかしくて脚を閉じようとすると、一志が腰を入れて防いでくる。

「すげ、」

「お前さっきからそればっか…」

すげぇすげ……て、何がそんなに凄いんだよと呆れる。
ただの男の体だ。
けど、俺の股の間にいる男は顔を赤く高揚させて、肩で息つぎしてるのが分かるくらい興奮してる様子だった。

「真っ白で、傷一つない……まるで陶器だ…」

こいつ……、俺の顔のことも芸術がどうとか言ってたな。
そういった事に感化されるタイプの人間なのかな。

「なぁ、急にされても準備してねぇし…」

一志と付き合うようになってから、いつ求められてもい良いようにと、それなりには準備してきた。
一志が俺とヤりたいってのは、俺を抱きたいってことなんだってのもわかってた。
俺がそっち側なんだろうなって。
最初に迫られた時も、そっち側がどうとか言ってたし。
だから、今朝もシャワーを浴びた時に少し弄ったりもしたけど、それきりだ。

「大丈夫」

そういって一志がコンドームと、透明な容器に入ったボトルを手に取る。
それが化粧水や乳液でないのはさすがに分かる。

「……それ、自分で用意したのか?」

「まぁ、それなりに、調べて。将平のこと傷つけたくないし」

そういった準備て意味で言ったわけじゃなかったけど、こういうことしてくれる奴だとは思ってなかった。
平気で"男だからゴムとかいらないだろ"て言ってくるタイプの人間かと思ってた。
少しだけ感動していると、一志がローションを垂らし始める。

「痛く、しない…と、思う。」

物凄い片言になってる。
緊張してるんだろうか。
男相手は初めてだとしても、絶対こういったことには慣れてるタイプなはずなのに。
実際、女の子相手でもこっちの経験だってありそうに見える。
本人に確かめたことは無いけれど……。
でも、俺だって男にこんな大股開くことになるとは思ってもみなかったんだから、恥ずかしいし緊張はしてる。
けど、俺より一志の方が見るからにやばそうだ。
ずっと「フゥフゥ」と聞こえるくらい肩で息をして、顔も真っ赤だ。
本当に、はち切れんばかりに興奮してるのがわかる。

「凄い……こんな所まで綺麗だ」

にゅ、と一志の指が入ってくる。
やっぱり自分の指とは違う。
一志のほうが太くて長いし、ゴツゴツしてる。
ローションを塗りこまれるみたいに、一志の指が中を探るように動く度に、腹の辺りがビクビクと震えた。
一志が俺のそこを解しながら、既に勃起したソレをズボン越しに俺の太腿に擦りつけてくる。
自分のより大きそうなソレが、俺の中に入るのを想像するのはとても困難なことだった。
俺にとっても初体験なんだ。

「将平……」

一志が覆いかぶさってくる。
それを抱きとめて、キスする。

「ん、っ……んっ、うっ」

キスに夢中になっていると、指が出ていった感触のあと、すぐそこに何かが当たったのがわかった。

「は、…一志、待って、」

「無理。もう無理、ごめんっ」

ずるっと、結構……いっきに一志のが身体の中に押し込まれる。

「ひっ、ぁぁ、あっ」

息をつく間もなく、一志が腰を打ち付けてくる。

「あっ!ちょ……っ、嘘…、痛いって、」

「ごめん、マジで、ごめんっ、無理、無理だっ、将平っ」

ギュウギュウ抱きしめられて、逃げ場を失った中、容赦なく一志に突かれた。
もう一志は興奮しすぎて止まんないって感じで、腰を振る。
俺は一志の背中に爪を立てながら痛みに堪えた。
たまにピリピリと気持ちいいような波はあったけど、直ぐにどこか消えてしまったのは、一志の腰が容赦なく動くせいだ。
俺とは真逆に、一志は気持ちよくて堪らないって顔をしてる。
それを見ていると、馬鹿みたいだけど、痛みなんてどうでもよくなってきてしまう。

俺の体に夢中な一志が可愛いかった。

「将平、すげぇいい…っ、好きだ、」

「っ、一志……かず…っ」

今、

「あっ、一志……っ」

キスして、お互いの体をきつく抱きしめあった。

「……っ、俺も、」

一志に応えたくて、重なる唇の隙間からそれだけ言葉にした。

この日から、一志との関係が色濃いものになっていった。
一志は俺に飽きることなく、日毎に俺を愛でる熱が高くなっている気がした。

けど、一志との初めてのセックスは、正直なとこ全然気持ちよくなかった。
痛いししんどいし、かなり強引に事を進められたので、一志自身に愛情と同時に怒りも湧いていた。
だから2度目に迫られた時はキッパリと断った。
こっちの意思を尊重して、一志自身の理性を保ってもらわなければ体がもちそうにないし、一志だけ気持ちよくなって、俺はそうじゃないなんて、そんなセックスになんの意味があるのか。
性欲、快楽のためだけにセックスするなんて、そんなのは俺の心が傷つく。
それが得たいだけなら、俺が相手じゃなくてもいいってことと同じだ。
だけどそんなこと口にしたら、一志は面倒くさがって俺を捨てるかもしれない。
そう思うくらいに、一志に好きだと言われても俺には自信がなかった。
何よりその言葉も興奮したセックスの最中の言葉だ。
最中に言った戯言だったら泣ける。
けど……
けど、一志との関係は、そうなったらそれまでなんだ。

結局、どうしようか悩み、暫く一志からのそっち方面の誘いを拒否し続けていたら、一志が平謝りしてきた。
これには正直驚いた。
興奮しすぎて調子に乗った、許して、もう一度チャンスを下さいと泣きつかれたので、俺は素直に許すことにした。
一志にこんなに謝られるほど悪いことされた訳でもない。
ただ急でビックリしただけだ。
初めてに特別こだわりは無いつもりだったけど、一志とは初めてだったんだ。
ちゃんと準備して、もっとお互い楽しみたかった。
だから、次があるなら叶えたい。

そうしてゆっくりと時間をかけて2度目に望んだ。
結果、結局一志は1度目と変わらず大興奮で最後の方は自分を見失ってるように見えたけど、俺も一緒に楽しめたから良しとした。
けど、一志は少し落ち込んでた。
こういう一志はすごく可愛い。
一志にとって、この2度目はリベンジも兼ねていたらしく、事が済んで冷静になった一志はうなだれていた。
一志は不服かもしれないけど、俺は、一志が俺に夢中でそうなってるってことなら、どんな一志でも可愛いと想えるし、愛しかった。

それからも、一志の家が母子家庭で、母親が夜働きに出ていて家にいないのをいいことに、ほとんど一志の部屋でシた。
一志はよく学校でシたいと言っていたけど、断固拒否し続けた。
そんなハードルの高い、しかも不衛生な場所で、絶対嫌だった。
潔癖な訳では無いけど、普通に嫌だろう。
一志がおかしい。

一志と付き合っていて、最初はヤり捨てられるんじゃないかと不安もあったけど、一志は毎回飽きることなく俺の体を綺麗だ綺麗だと言って抱いたし、最中は興奮が爆発しそうな一志を見れているうちは俺に夢中なんだと安心していた。
そう、一志との関係は、驚くくらい上手くいってた。


俺に不安が生まれたのは、2年の春。

それは俺の身長がついに一志を越した時のことだ。
並んで立つと同じくらいに見える。
けど身体測定で結果は明確になってしまった。
一志は俺に背を抜かれたことはなんとも思っていないようだった。
俺の測定結果を見て『一年でそんなに伸びるわけ?』と驚き混じりに笑ってたくらいだ。
けど、俺的には笑えない出来事だった。
笑えないってのは、俺と一志のセックスポジション的問題のことだ。
抱かれる側の俺の方がデカいって、アリなのか?
多分普通に考えたらアリだろう。
体格差でタチネコ決めたりしないと思う。
けど、俺が心配してるのは、一志が女好きてとこだ。
いくら俺の顔面が好きだからって、体は男だ。
しかも、今は一志よりデカい男だ。
一志的にはアリなのか?
無しと言われても縮むことなんてできない。
お互い、男が好きで付き合ってるわけじゃない。
お互いが……好きだからだ。
俺は、一志以外の男は有り得ないし……。
一志よりデカくたって、一志に抱かれたいと思う。

こんな俺の不安はよそに、一志は躊躇いもなく俺を抱き続けた。
この不安も、一志に抱かれる度に薄れていって、ただ一志への愛情だけが増していった。


この関係にヒビが入ったのは、受験生を控えた冬のことだった。


「は?それって、留学するってこと?」

「まだ決めてない。けど、候補にはしてる」

一志は受験はせず就職。
俺は進学の道を選んでた。
その進学先のことで一志の顔色が険悪なものになる。

「地元の大学じゃダメなわけ?」

「……」

幼少期から、日本人とは異なる容姿のことで散々悩んできた。
弟に比べたら自分はマシな方かもしれないけど、俺からしたら、弟に比べて自分は中途半端だった。
白い肌に蒼い瞳に黒い髪というのが、アンバランスで、嫌いだった。
いっそのこと海外に出たらそのアンバランスな自分から開放される気がした。
そんな、自分のコンプレックスと向き合うためだけの理由。
ただ漠然と、その思いだけが今になっても燻ってた。
自分の持って生まれてきた色に溶け込んだら、嫌ってきたそれを好きになれる気がした。
ただ海外に出たい訳ではなく、できれば祖父の血を引く北欧へと思っていた。
旅行としてではなく、その地に滞在して、その地のことが知りたかった。
幼少期から思ってきたことだから、なんでかそれを果たすのが夢のようになってた。
だから留学。
義務教育を卒業して、新しい自分を見つけに行くには、いい機会だと思ってた。
そう、一志とこんな関係になるとは夢にも思っていなかったから……。

きっとこんな理由、一志は理解しない。

「地元の大学に進学したとしても、外国と交流できる大学を選ぶ。だから、どの学校を選択しても答えは同じだと思う。」

この話を一志にしたのは、一志との関係を終わらせたくないからだ。
そうじゃなかったら、今日話した話の内容は、進学先の事ではなく、別れ話だった。

「じゃあ、留学するから別れるってことか?」

「え」

一志から"別れ"という言葉が出て、胸の奥で嫌な音が鳴った。

「どこに進学したって外国行くんだろ?それって年単位の話しだろ。俺そんなに会えないとか無理だから」

「…………、帰ってくるよ、あっちにだって、こっちの学校と同じで夏休みとかあるんだし…」

別れたくない。
それを伝えたいのに、一志は冷たい顔をして、俺の方を見ようとしなかった。

どこかで、一志なら、待ってるから行ってこいって言ってくれると期待してた。
進路なんかで俺を手放したりしない、それくらい俺に惚れてるって、思ってた。

……だって、俺がそうなんだから。

こんな簡単に一志から"別れる"なんて言葉を聞くとは思ってなかった。

「……、」

ショックで、言いたいことが言葉にならなかった。
俺に、選択肢は無いんだ。
一志を好きな限り、一志を失いたくない限り、選択肢は無い。
じゃあ……、俺が夢を諦めたら、一志はずっと俺といてくれるんだろうか。
今は俺に夢中でも、根は女好きだ。
俺が払った代償に、こいつは応え続けてくれるんだろうか。

「……わかった、行かない。」

気づいたら、心にもないことを口にしてた。

「ほんとか?」

それに一志がパッと顔を明るくする。

「うん、……よく考えたら、一志は就職して忙しくなるだろうし、今みたいに、俺との時間が自由に取れるわけじゃないよな……」

代償とか、考えてたらダメだ。
駆け引きして、負けたら、一志を失うんだ。
そんなのは嫌だ。
留学できないより…………、

「なぁ、卒業したら一緒に暮らそ?」

一志が俺の体を抱き寄せる。

「俺頑張って働くからさ」

一緒に暮らす?

…………それは……正直、嬉しいけど。

今じゃない。

今そんな話されても、喜べない。

嬉しいよ、……嬉しいけど、今の俺は、未来がとざされて、呆然とするしかなかった。

留学を……夢を諦めて、一志といることを選んだ。

俺たち、……近くにいないとダメになる関係なんだ?

そう思うと、進学の道も、一志との未来も、急に真っ暗に感じた。


俺は高校を卒業して、地元の大学に通う事にした。
親には泣かれた。
自慢じゃないが俺が全国模試で上位に入るくらい優秀だったことと、小さい頃から外国に行きたがってたから、外国の有名な大学に行くことを望んでた。
けど、俺にとっても……自分の思い描いてた未来より、恋人を選んだこの道は、思っていたより満たされるものではなかった。
一志といられれば、自分の夢のことは自然と忘れられると思っていたのに。

その燻った思いに区切りをつけたくて、高校卒業後フランス旅行に行った。
まぁ、卒業旅行てやつだ。
一志と行きたかったけど、何度誘っても一志は旅行自体に興味がなく、また10時間以上も飛行機に乗るのは冗談じゃないと言われた。
俺の夢を潰したくせに、一志からのフォローは何も無かった。
詫びをして欲しいわけじゃないけど、せめて旅行くらいつきあってくれてもいいと思う。
けど、ギリギリまで一志は首を縦に振らなかった。
結局旅行は1人で行った。
フランスを5日間回った。
その間、誰とも連絡は取らなかった。
もちろん一志とも。
別に、一緒に来てくれないことに対して拗ねている訳では無い。
ただ、この旅行に集中したかった。

5日間のフランスの旅は、想像以上に楽しかった。
1人で惨めな旅行なんて、とんでもない。
一志への虚しい気持ちは忘れられた。
自分の夢を叶えるには5日間は短すぎる。
けど、めいっぱい楽しんだ。
建築物に、自然、たくさんの人々と接した。
自分のコンプレックスを、5日間の内1度だって気にすることはなかった。
最終日、機内から国を見下ろして、自然と涙が出た。
俺は、一志を選んだ。
間違ってないはずなのに、涙が出た。
なんの涙なんだろう。
わかってる。
…………未練だ。
一志に一緒に来て欲しいと思ってた旅行だけど、一志の存在を忘れて楽しんでた自分がいた。
自由に、ずっと夢見てた場所で好きなことやって、楽しかった。
これが、最後なのかと思うと、涙が出たんだ。
……また、旅行でくればいい。
そう思っても、たまらなくなった。

帰国して、真っ直ぐに部屋へ向かった。
卒業してすぐに2人で見つけた物件で同棲することになった。
もちろん家族にはルームシェアと言ってある。
まだ片付けは完璧じゃないし、家具も揃ってないけど、大学が始まるまでには片付る予定だ。
気持ちを切り替えて、2人の……一志とのことを大切にしていこう。

数える程しか使っていない家の鍵を、鍵穴に差し込む。
まだ早朝だ。
きっと一志は寝てる。
土産は沢山買ってきた。
一志は喜んでくれるだろうか。
少し浮かれながら、だけど物音を立てないように部屋に入る。
けど、浮かれていた気持ちに急ブレーキがかかった。

目に入ったのは、女物の靴だった。

一志の靴と一緒に無造作に転がってる。
いや、靴がちらかってることなんてどうでもいい……、なんで、女物の靴が……俺たちの新居に……?

わかってる。

でも、違う。

違う。

絶対違う。

一志は、俺と約束した。

女と寝たりしない。

俺だけにするって言った。

俺だけって……

こんなこと、考えること自体間違ってる。

そうだよ、間違ってる。


一志の部屋のドアノブに手をかけた。
ゆっくりドアを開くと、真っ暗な部屋から寝息が聞こえた。

息を飲む。
心臓が飛び出そうだった。

床には一志の脱ぎ捨てた服と、女物の下着。

ベッドには一志と、女が寝ていた。
眠る一志に女が寄り添うように寝てた。
もちろん裸で。

それが、どういう事なのか……、

分からないほど子供じゃないし、馬鹿でもない。


急に吐き気がした。


掌で口を塞いで、トイレへ駆け込んだ。
フランスでの最後の食事を全て吐いてしまった。
洗面台に移動して、口をゆすいで、ついでに顔も洗ったけど、スッキリしなかった。
まだ胃がムカムカする。
タオルを棚から取って、顔を拭いていると、背後に人の気配を感じた。
はっとして振り返ると、上半身裸にスウェットパンツを履いた一志が立ってた。

「おかえり」

欠伸をしながら、一志が俺に声をかける。

「……、」

俺は、声が出なかった。

だって、ただいまって、言える状況じゃない。
……なんでこいつ、こんな平然と俺に話しかけられるんだ?
さっき、女と寝てたよな?
俺に見られたとは思ってないのか?
それとも誤魔化せる自信があるのか……

「今日だったんだ、帰ってくんの」

「…………あぁ、」

どうにか声を絞り出して、一志に答えた。

「顔色悪くない?」

一志が首をかしげ、俺の頬に触れようと手を伸ばした。

「っ、」

俺は、それを体を引いて避けた。
無意識だった。
本能で、体が一志を拒絶した。
その行動に、一志が目を細める。

「ぁー…、見た?」

一志が何でもないって顔をしながら頭をかく。

「すぐ帰すからさ」

は?

一志は呆然とする俺を置いて寝室にもどる。
暫くして玄関で物音がする。
恐る恐る様子を伺うと、女が一志の腕に手を添えて、唇を顔に寄せて何か話している。
それに一志が笑って何か答えると、女は部屋から出ていった。

「…、………っ」

一志がこちらに来るのが見えて、体が反射的に動いた。
こちらに歩いてくる一志の横を通って、玄関に置きっぱなしにしていたキャリーケースのロッドを持つ。

「は?どこ行くんだよ」

玄関のドアノブに手をかけようとした俺の手を、一志が掴んでくる。

「俺に触るなっ」

一志に掴まれた手を、振り払う。
ついでに一志の胸を突き飛ばして、距離をとった。

「痛てぇんだけど。何怒ってるわけ。意味わかんねぇ」

「わかんないのはこっちだよっ、なんだよっ、さっきのっ」

「将平がなかなか帰ってこないから、ちょっと遊んだだけじゃん」

「遊んだ?寝たんだろっ?」

「将平が外国行ったからじゃん。連絡も全然返ってこないしさぁ」

「それと、なんの関係があるんだよ。俺が外国行くのと、お前が女と寝るのになんの関係があるんだよっ」

「怒鳴るなよ……、1回だけだって。」

「……回数の問題じゃない」

一志は、鬱陶しそうにため息をつく。

なんでそんな態度……?
……俺が悪いのか?
俺が、旅行に行ったから?
旅行中連絡を絶ったから?

でもそれは、俺なりの譲歩だったから…。
留学を諦めたんだから、これくらいは良いだろうと思ったから……。

たった5日間だ。

帰らないわけじゃない。
一志には行先も期間も伝えてあったのにだ。
俺の帰りが待てなくて、女と寝た。

「………………別れる、」

自然と言葉にしていた。

留学の道を絶たれたからじゃない。

裏切られたからだ。

「は?何言ってんの。」

一志に腕を掴まれる。
また振り払おうとしたけど、今度は簡単にはいかなかった。

「痛いっ、離せよっ」

指が食い込む程強く掴まれて、拒めなかった。

「嫌だっ、一志っ」

腕を掴まれたまま、すごい力で引きずられるように一志の部屋に連れ込まれる。
嫌がる俺をベッドに押し倒して、両腕を抑え込まれる。
一志がさっきまで女と寝てたベッドだ。
嫌なのは当然だと思う。

嫌だ。
嫌だ。
気持ち悪いっ

「い……っ、」

パンっ、と、乾いた音が鳴った。
〝嫌だ。〟
そう叫んだつもりだったけど、言葉にならなかった。
頬を打たれたからだ。
ショックでそう気づくのに時間がかかった。
とはいっても、数秒のことだ。
けど、一志にとっては好都合だったんだろう。
暴れなくなった俺の服を剥ぎ取った。

「…………一志、やめて…」

言葉にしたそれが、一志にちゃんと聞こえていたかは分からない。
凄く、唇が震えてた。
怖かったからだ。

俺の気持ちが、一志に通じない。

俺だけだって言ったのに。

大事にするって、言ったのに。

「……ぁ、……いっ」

一志が入ってくる。

「かず……痛……っ、」

「別れるって、なんだよ。別れないからな……っ」

力いっぱい身体を抱きしめられる。
一志が乱暴に動くたび、下半身の痛みが増す。

「ぁ…はっ、かず……やめ、」

「別れないって、言えよ」

「んっ、ぅ」

首を振る。

「言えよっ」

「嫌だっ」

一志が腕を振り上げたのが見えた。
殴られる。
そう思って目を瞑った。
同時に瞳に溜まっていた涙が零れた。
無理矢理ひらかれた下半身が痛いんじゃない。
打たれた頬が痛い訳でもない。

「…………約束したのに……、」

「……何?」

「俺だけだって、」

「は?」

涙で霞んだ先の一志の顔を真っ直ぐに見た。

「女とは寝ない……俺だけだって、約束した。大事にするって、言ってくれたじゃないか……」

「……、」

一志の拘束が緩んだ。
その隙に一志の下から這い出て、距離をとった。
一志はどこか呆然としていて、もう襲ってくる気配はなさそうだった。
衣服を身につけて、一志の部屋から出ようとすると、一志が俺の腕を掴んだ。
振り払おうとしたけど、一志の手の力があまりに弱々しくて、驚いた。

「将平……」

一志と目線が合う。

「……俺のこと、好きか?」

「は?」

一志がおかしな質問をするから、間抜けな声が出た。
だって、今更何言ってるんだ。

「女とヤって怒る程度には……か?」

一志が寂しそうに笑う。
……なんで急にそんなこと言うんだ?
なんでそんな顔する。
裏切られて傷ついてるのは俺なのに、なんで一志のほうが傷ついてるような顔するんだよ。

今度は俺が、一志の頬を打った。

一志は痛がる素振りも、怒る素振りも見せず、俯いてた。

一志を打った手が、ヒリヒリと傷んだ。
言いたいことが沢山あったのに、一志が空っぽになったみたいに動かずに俺のことを見ないから、何も言えなくなってしまった。

これで終わり?

こんな呆気ないのか……?

結局、夢だけじゃなく、一志も失うのか。

俯く一志を置いて、部屋を出た。

体が痛い。
一志が無理矢理するから、切れたのかもしれない。
……頬も、痛い。
そんなに強く叩かれたわけじゃないけど。

それより、

胸が……

痛い。

苦しい。

涙が抑えられなかった。

終った。
全部。
夢も、一志も。

失った。

全部っ


家につくまで、人目も気にせず泣き続けた。

玄関前で、弟とその友達のまことが玩具で遊んでいるのに気づいて、慌てて目を擦ったけど、涙は止まらなかった。
家を出ていったはずの兄が帰ってきたことに、弟が嬉しそうな顔をして『兄ちゃん』と駆け寄る。
まことも一緒になって俺のズボンの裾を小さな手で握ってくる。
その無邪気な2人の笑顔を見て、堪らなくなった。
2人の前にしゃがみ込んで、泣いた。
幼い2人は真っ白で、純粋だ。

もっと、素直に一志に接していればよかった。

一志と対等でありたかった。
一志が遊んできた子達と一緒になりたくなかった。
一志の唯一になりたかった。
捨てられたくなかった。
だから自分の口から"好きだ"と素直に言葉にしたことがなかった。
一志には分からないなんて思わずに、将来のこと全部話せばよかった。
小さい頃からの夢なんだって。
そうしたら、旅行くらいはついてきてくれたかもしれない。
全部一志が悪いわけじゃない。
俺だって、和志の気持ちの上であぐらをかいてた。

でも、

一志のした事は許せない。

いくら一志が好きでも、許せない。

弟たちの前で泣いていると、ポケットにあるスマホが音をならした。
スマホを手に取ると一志からの着信だとわかった。

目が醒めたように思った。
こんなふうに繋がれる環境にいてはダメだと。
一志を焦がれることもないくらい、遠く離れた場所にいこう。
一志の居ない場所で、やり直そうと……。

「……昂平、まこと、兄ちゃんしばらく出かけるから、元気でな」

2人の小さな頭を撫でて、そのまま家を出た。



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