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○月×日『会食②』
しおりを挟むカフェのランチにしては高級そうな食材が机に並ぶ。
最初は食事が喉を通らないんじゃないかと思うほど緊張したけど、食事中社長さんに話しかけられることはなかったから、味わって食べることができた。
将平くんはずっと社長さんとお喋りしてる。
たぶん僕と矢野くんが妙に緊張してしまっていることに気づいてて、社長さんが僕らに話を振らないようにしてくれているんだろう。
将平くんは社長さんとフランス語で会話しているから、僕と矢野くんにはどんな内容かさっぱり分からない。
話している将平くんはすごく楽しそうだ。
この凄いオーラを放つ社長さんに物怖じせずに会話してる将平くんは社長さんとどういう関係なんだろう。
将平くんは社長さんを"リュカ"と愛称で呼んでいるようだし、社長と雇われ……というより、友達のような雰囲気がみてとれる。
「……兄貴、その社長さんと仲良すぎねぇか?」
社長さんがグラスを手に取り、口が止まった隙に矢野くんが将平くんを肘でつつく。
「リュカは大学の先輩だから。まぁ友達だね」
「へー。で、リュカて誰」
「昂平……お前な…」
将平くんが呆れた、という顔で昂平くんを見る。
「昂平くん、ルーカスさんの愛称だよ」
僕が小声で矢野くんに耳打ちする。
「は?愛称ぉ?」
いまいちピンときていないようだ。
「フレデリックをフレッドとか、マイケルをマイクとか、クリストファーをクリスとか呼んだりするの、海外ドラマとかでみたことあるだろ?」
「昂平くんが僕のことゆずていうのと似たようなものだよ」
「ああ、なるほど。」
やっとしっくりきたのか、矢野くんが頷く。
「それにしても、随分派手な社長さんだな」
「そうだね、綺麗なレッドヘアーだよね。」
たぶん矢野くんが言ったのは髪の色のことだけではないと思う。
けど1番目を引かれるのはやっぱり綺麗な赤毛だ。
白い肌が一際それを際立たせてる。
髪と同様に赤い睫毛の下には透き通ったグリーンの瞳。
カラコンじゃないの?と聞きたくなるほど綺麗な色だ。
それになにより顔がハリウッド俳優貼りに男前だ。
今は椅子に座っているから身長がどれ程かはわからないけど、スーツの上からでも分かるくらいに体格が良い。
組んだ脚も長い。
たぶん将平くんより背が高いんだろう。
僕がジッと社長さんを盗み見ていると、グラスから瞳を上げたグリーンの瞳が僕を捕える。
僕が狼狽えると、社長さんが唇に柔らかい笑を乗せて微笑んでくれる。
「……っ」
息を飲むほど美しいとはこのことだ。
僕の周りには容姿の整った人が多い。
矢野くんや将平くんがそうだ。
それに篤也さんや、山梨先輩、茜さん、歩くんも……
そんな中でもこの人は特に整ってる。
「おい」
「えっ」
僕が惚けていると、矢野くんが僕の視界を遮るように身を乗り出してくる。
「お前、見とれてただろ。」
矢野くんに簡単に見破られるほど惚けてたかと思うと恥ずかしい……
矢野くんの横で将平くんも控えめにだけど笑ってる。
「Amant mignon」
「え?」
社長さんが矢野くんに向かって微笑む。
矢野くんは何を言われたか分からず将平くんを見る。
「可愛い恋人だねって言ったんだよ」
「え、……ぁ、どうも。」
矢野くんが控えめに会釈する。
一日でこんなにペコペコとしてる矢野くんを見るのは初めてだ。
「将平、Allons-nous travailler maintenant?」
「C'est vrai」
将平くんと社長さんが顔を見合わせる。
「昂平、まこと、今日はありがとな。俺らはそろそろ仕事に戻るから行くな」
「ああ…」
「お仕事頑張ってね」
もちろんここのランチ代は社長さんの奢りのようで、彼はさっさと会計を済ませると、将平くんの横に並ぶ。
やっぱり将平くんより背が高い。
「A bientôt」
社長さんが僕らにそう言って微笑むと、将平くんの腰に手を添える。
「また会おうって」
将平くんは特に気にした素振りはなく通訳してくれる。
「じゃ、ほんと今日はありがとな。」
将平くんはそう言うと、社長さんに腰を抱かれたままカフェを出ていった。
「………………あれほんとに友達か?」
矢野くんの疑問はご最もだ。
僕も気になった。
ものすごく自然に社長さんが将平くんの腰を抱くものだから、友達と言うにはなんていうか……なんていうか…………恋人みたいな雰囲気で…。
それともあれが普通なのかな…
「兄貴てモテるよなぁ…」
矢野くんがそんなことを言いながらカフェを出る。
……やっぱり、そういうことなのかな。
パリッとした高級なスーツに身を包んだ将平くんと社長さんはこのホテルにいる誰よりカッコよかった。
そんな2人が、友達以上の何かがあるのかな……
人の事情に深入りしない方がいいよね。
僕はホテルの出口に向かう矢野くんの後を追いかけた。
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