ヤノユズ

Ash.

文字の大きさ
203 / 205

○月×日『束の間』★

しおりを挟む
 ベッドに寝かされて、矢野くんが覆い被さる。

「ん、」

 何度か触れるだけのキスをした後、お互いの服を脱がせ合う。

「ん、昂平くん……」

 矢野くんの唇が、顎、首筋とキスする場所を移す。

「アトついちゃう…」

 首筋をキツく吸われて、思わず身を捩ると、矢野くんが顔を上げる。

「別にいいだろ。ゆずもつけろよ」

「ぇ、」

 目が自然と、矢野くんの白い肌に映る。

「明日兄貴が退院したら、また暫く部屋でゆっくりなんてできなくなるし」

「ぁ…、そうだね」

 将平くんが入院をしてから数日が経った。
 矢野くんやルーカスさんの手厚いケアで、将平くんのメンタルも落ち着いていて、思っていたより早く自宅治療ができるようになった。
 もちろん、心のケアの方は続けないといけないので、カウンセリングには通うようだけど……。

 将平くんが無事に退院してくれるのは、すごく嬉しいことだ。
 けど、僕らの触れ合う時間が減ってしまうのも事実だった。

「ほら、ゆず」

 矢野くんが膝をついて、ベルトを緩める。

「……あんなに嫌がってのに」

 僕は矢野くんの下着をずらして、中から取り出したものを手で擦った。

「ん、」

 矢野くんの下腹部に唇を寄せてキスすると、矢野くんがくすぐったそうに身を捩った。
 そのまま肌を舐めて、吸い付くと、矢野くんの下腹部に赤い鬱血痕がついた。

「……そんなマニアックなとこにつけるなんて、エロいやつ」

 頭上から矢野くんの気恥ずかしそうな声が落とされて、少しだけ可笑しくなった。

「昂平くんがつけていいって言ったんだよ」

 こんな無防備な場所だから、照れくさいんだろうか。

「パンツ下ろさなきゃバレないよ」

「下ろすわけねぇだろ」

 矢野くんに顎を掴まれて、指で唇を撫でられる。
 そのまま指が口内に侵入し、舌を撫でられる。

「あ、ン」

 舌を撫でられるのがくすぐったくて、口を開けると、自然とそのまま矢野くんのが口内に滑り込む。

「ん、んん」

 矢野くんのをフェラするのは2回目だ。
 1番最初の無理矢理されたのも合わせたら3回目だけど、これは何度やっても慣れない。
 けど、癖になりそうな優越感もあった。
 なんでか不思議だけど、愛しくて仕方なくなると、気持ちよくしたくなる。
 舌の上で矢野くんのを擦り上げて、頬を窄めて吸い上げると、矢野くんの喉がたまらずと言った感じで鳴る。
 それが、獣の興奮状態の時のようで、肌が毛羽立つくらいに僕も興奮する。
 矢野くんは腰を振りたいのを我慢してるのか、腸骨のあたりがビクビクと震えてる。
 僕の好きにさせてくれてることに、胸が締め付けられた。

「ゆず……、っ出そう、」

 矢野くんが快楽を押し殺した、低い声で唸る。

「んっ、出す……?」

 矢野くんのを口内から出して、先端を唇の先で吸い上げながら問うと、矢野くんは深く深呼吸しながら首を振った。

「俺は、全部ゆずの中に出すって決めてるんだよ」

 お腹の辺りがキュンと、疼くような感覚がした。
 何言ってるんだか……と、思いつつも矢野くんの言葉に勃起しそうになって、太ももを擦り合わせるように閉じると、矢野くんに足首を掴まれて脚を大きく開かされる。

「あっ」

 反動でバランスを崩し、ボスンと枕に頭をつけると、今度は矢野くんが僕のものを口に含んだ。
 僕のは矢野くんのと比べ物にならない大きさだから、スッポリと矢野くんの口内に収まってしまって、急な生温かさに体がのけぞった。

「ああっ、」

 僕が矢野くんのを愛撫する時は、口に収まりきらなくて舌も上手く使うことができないけど、矢野くんは僕のを口内で舐め回すように愛撫する。
 矢野くんの舌が巻きつくように動くから、体が捻れそうなくらい気持ちよくて恥ずかしい声がたくさん出る。

「あっ、ダメっ、だめっ、一緒にしちゃ、やぁ……っ」

 矢野くんの唾液と、僕の体液でグチャグチャになった所に、矢野くんの長い指が侵入してきて、体を繋げる準備をする。
 後ろも前も同時に攻められて、僕の悲鳴に近い喘ぎ声が、矢野くんの部屋の中に響く。

「ィくっ、ィっちゃう…っ」

 頭をブンブンと左右に振って訴えると、矢野くんが口の方は放してくれた。
 でもお尻の方はまだ指が出し入れされて、卑猥な音を立てる。

「ゆずのここ、キツくてやばそう」

 矢野くんが自分の唇を舌で舐めながら僕のことをうっとりとした目で見下ろす。

「いいよ、いれて……早く、いれて」

 急かすように脚をいっぱいまで広げると、矢野くんが指を抜いて、自分のものにローションを垂らして、扱く。
 すでに僕の唾液と矢野くんの体液で濡れていたけど、ローションが加わったことで、さらにグチュグチュと音を立る。
 矢野くんの濡れたソレが、解した僕のソコにあてがわれて、先端からゆっくり飲み込んでいく。

「んぁ……っ、ああぁ、」

 まだピストンされたわけでもないのに、たまらず声が出る。
 硬くて大きいのが、根元まで埋まると、矢野くんが眉間に皺を寄せながら、一つ大きく息を吐く。

「ゆず、」

 矢野くんが僕の背中に腕を回して、体をキツく抱きしめてくる。
 僕も、同じように矢野くんの大きな背中に手を回して、抱きしめ返す。
 それが合図みたいに、矢野くんの腰が大きく動いて、一定の間隔で僕の中に打ちつけ始める。

「あっ、あっ、あっ」

 打ちつけられた数だけ声が漏れた。

「はっ、はぁ……っ、ゆずっ」

 矢野くんの息遣いが耳を犯す。

「やっ、も、ィっちゃうぅ」

 挿れられたばっかりなのに、もうィきそうだ。
 肌のぶつかる音が、どんどん小刻みになっていって、激しくピストンされて、目がチカチカし出す。
 矢野くんのお腹で擦れた僕のは、もういつ爆ぜてもおかしくない。

「こ、へぇくんっ、昂平っ」

「ぅっ、」

 一緒にィきたくて我慢しながら、でも耐えられそうになくて矢野くんを催促するために叫ぶように喘ぐと、矢野くんが僕の耳元で呻いた。

「っ、ゆず…」

 抱いてる矢野くんの体がビクビクと痙攣する。
 胎内で矢野くんのがドクドクと脈打つのがわかる。
 宣言通り僕の中で射精してる。
 僕も矢野くんのお腹や、自分の胸まで飛び散るくらいに派手に射精した。
 2人して体の痙攣が止まらなかったけど、それが気持ちよくて、心地よかった。

 束の間なのはわかってる。
 けど、2人だけの時間にずっと浸って、現実逃避していたかった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

握るのはおにぎりだけじゃない

箱月 透
BL
完結済みです。 芝崎康介は大学の入学試験のとき、落とした参考書を拾ってくれた男子生徒に一目惚れをした。想いを募らせつつ迎えた春休み、新居となるアパートに引っ越した康介が隣人を訪ねると、そこにいたのは一目惚れした彼だった。 彼こと高倉涼は「仲良くしてくれる?」と康介に言う。けれど涼はどこか訳アリな雰囲気で……。 少しずつ距離が縮まるたび、ふわりと膨れていく想い。こんなに知りたいと思うのは、近づきたいと思うのは、全部ぜんぶ────。 もどかしくてあたたかい、純粋な愛の物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...