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本編
❖く
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「いいよ。それが、僕たち夢人だから」
相賀くんは再度、私を安心させるように言った。
「……それが、夢人?」
ああ、駄目だ。その優しさに縋ってしまう。本当に、私は酷い人間だ。
「うん。僕たちは誰かに夢を見せることが役割だから」
——だからわざわざ言ってくれて、泣いてくれるなんて優しいね——
彼はふにゃりと、困ったような笑みを浮かべた。
「……何よ」
相賀くんはあまりにも優しい。こんなに優しいなんて、思いもしなかった。
❖
私たちは一度、叶屋へ戻った。叶の都へ行くときとは逆で、まるで床が急激に上がっていくように、かなり押し上げられて叶屋に着いた。
「とりあえずただいま、だね」
叶さんがそう呟いた。聞こえる大きさの声だったので相賀くんがうん、と頷いた。
「そうですね、ただいま」
私たちは、再び都行席に着いたときと同じ席につく。
「さて、さっきの蝶についての説明をするね」
お願いします、と私は頭を下げる。
「蝶は夢人の相棒に近い存在だね。夢人第三位より下は紫、夢人第二位以上、つまり聖女、聖代は第一位が紅色、第二位が緋色だよ」
ちらりと、叶さんは相賀くんに視線を投げかけた。それを受け継いで相賀くんは続く説明をする。
「聖女、聖代候補者は合格した段階によって色が変わるから楽しみにしていてね」
にこりと、相賀くんは笑った。うん、これでやる気が更に強くなってきた。
あれ? 私はある疑問を覚えた。
「叶さんって、どういう存在なんですか?」
「うーん、『神様の代理人』かな」
何だろう、今少し言葉を選んだ気がする。けれどもそれについては深くは考えなかった。
「『神様の代理人』ですか……」
私はそれを聞いた瞬間から言葉の意味について考えていた。確かに叶屋を守ったり、こうやって聖女候補者である私と話したりなど、叶さんは管理に近いことをしているような気がする。そしてそれは本来神様の仕事だから代理人ということだろうか。
「そう。で、私は夢人に干渉はするけれどそれは夢人じゃなくて『神様の代理人』として存在しているからなんだよ。そういうわけで私には蝶がいないんだ」
ああ、だから夢人から別格の扱いを受けていたのかと納得する。
「夢人ってね、本当はとっても無力なんだよ。叶の都に閉じ込められて、黒節に襲われたらほぼそれで終わりだからね」
叶さんが言うことには現実感があって、だからこそ気持ち悪く思う。
「そんなのだから、護らなきゃね。私も、晃も、高瀬さんも。夢人を、護らなきゃね。神様からも……」
叶さんが私に、震えた声を投げかける。後半はよく聞こえない。不安になって相賀くんを見た。しかし相賀くんは俯いて動かない。
「相賀くん!」
私は相賀くんに触れようと立ち上がり触れた、瞬間。
「ひゃっ!」
大きな電流が私を襲って手を離してしまった。視界が歪む。キィンと耳鳴りがして、脂汗が顔を伝う。足に力が入らない。私はへたり込んでしまった。そしてそのまま——落下した。
「え、ええ!?」
この空間には混乱した私と動かない相賀くんだけで、叶さんはいない。急降下していく。ものすごく怖い、でも。
私は希望を託して叫んでみた。
「叶さん!」
二度、三度叫んだが、いずれも返事はない。私は必死になって相賀くんの腕を強く引いて、離れないようにした。
相賀くんは再度、私を安心させるように言った。
「……それが、夢人?」
ああ、駄目だ。その優しさに縋ってしまう。本当に、私は酷い人間だ。
「うん。僕たちは誰かに夢を見せることが役割だから」
——だからわざわざ言ってくれて、泣いてくれるなんて優しいね——
彼はふにゃりと、困ったような笑みを浮かべた。
「……何よ」
相賀くんはあまりにも優しい。こんなに優しいなんて、思いもしなかった。
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私たちは一度、叶屋へ戻った。叶の都へ行くときとは逆で、まるで床が急激に上がっていくように、かなり押し上げられて叶屋に着いた。
「とりあえずただいま、だね」
叶さんがそう呟いた。聞こえる大きさの声だったので相賀くんがうん、と頷いた。
「そうですね、ただいま」
私たちは、再び都行席に着いたときと同じ席につく。
「さて、さっきの蝶についての説明をするね」
お願いします、と私は頭を下げる。
「蝶は夢人の相棒に近い存在だね。夢人第三位より下は紫、夢人第二位以上、つまり聖女、聖代は第一位が紅色、第二位が緋色だよ」
ちらりと、叶さんは相賀くんに視線を投げかけた。それを受け継いで相賀くんは続く説明をする。
「聖女、聖代候補者は合格した段階によって色が変わるから楽しみにしていてね」
にこりと、相賀くんは笑った。うん、これでやる気が更に強くなってきた。
あれ? 私はある疑問を覚えた。
「叶さんって、どういう存在なんですか?」
「うーん、『神様の代理人』かな」
何だろう、今少し言葉を選んだ気がする。けれどもそれについては深くは考えなかった。
「『神様の代理人』ですか……」
私はそれを聞いた瞬間から言葉の意味について考えていた。確かに叶屋を守ったり、こうやって聖女候補者である私と話したりなど、叶さんは管理に近いことをしているような気がする。そしてそれは本来神様の仕事だから代理人ということだろうか。
「そう。で、私は夢人に干渉はするけれどそれは夢人じゃなくて『神様の代理人』として存在しているからなんだよ。そういうわけで私には蝶がいないんだ」
ああ、だから夢人から別格の扱いを受けていたのかと納得する。
「夢人ってね、本当はとっても無力なんだよ。叶の都に閉じ込められて、黒節に襲われたらほぼそれで終わりだからね」
叶さんが言うことには現実感があって、だからこそ気持ち悪く思う。
「そんなのだから、護らなきゃね。私も、晃も、高瀬さんも。夢人を、護らなきゃね。神様からも……」
叶さんが私に、震えた声を投げかける。後半はよく聞こえない。不安になって相賀くんを見た。しかし相賀くんは俯いて動かない。
「相賀くん!」
私は相賀くんに触れようと立ち上がり触れた、瞬間。
「ひゃっ!」
大きな電流が私を襲って手を離してしまった。視界が歪む。キィンと耳鳴りがして、脂汗が顔を伝う。足に力が入らない。私はへたり込んでしまった。そしてそのまま——落下した。
「え、ええ!?」
この空間には混乱した私と動かない相賀くんだけで、叶さんはいない。急降下していく。ものすごく怖い、でも。
私は希望を託して叫んでみた。
「叶さん!」
二度、三度叫んだが、いずれも返事はない。私は必死になって相賀くんの腕を強く引いて、離れないようにした。
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