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本編
❖じゅう
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目を覚ましたのはある丘だった。歩いて来た記憶もないので、落ちてきたときに気を失ってしまったらしい。どうやら叶の都の外れにあるようだ。下のほうに最初に入った大門が見える。ぐるりと辺りを見回す。
「あれ? 相賀くん?」
一緒に落ちたはずの相賀くんの姿が見当たらない、と思ったら。
「ここだよ」
相賀くんの声がする方向を見る。木の上に、相賀くんがいた。
「相賀く……」
呼びかけるとしたが相賀くんが飛び降りてきて、すうっと流れるように私の口を手で塞いだ。
「静かに」
何をするの、と言おうとしたが、相賀くんの真剣な表情に何も言えなくなった。
彼の視線を追う。その先には、黒い靄。
もしかして。考えたくないけれども、もしかしてこれは——。怖い。身体が震える。
靄はどんどん凝縮されていく。中央が黒くなって、人型の輪郭がぼんやりと見えてきた。
「——離れろ! 黒節だ!」
「黒節!?」
相賀くんは人格が変わったかのように叫び、沢山の紙を投げる。
何が起こったのか分からなかった。徐々に状況を理解する。悪い予感が的中してしまった衝撃が私を襲った。
私はその瞬間に彼に肩を押され、よろけながらも相賀くんのいた木の裏へ逃げた。でもそれ以上は逃げられなかった。相賀くんを置いて一人で逃げてはならない。脳内で警告が鳴り響く。
紙は蝶となり、黒節を囲む。
「衣装展開・水月花炉・起動!」
相賀くんは白地の布に水の青、色とりどりの花、そして燃え上がるような炎が一セットに詰め込まれた、現代風にアレンジされた動きやすい狩衣を着ていた。
彼はどこからか取り出した扇子を前に差し出し、上に扇ぐ。瞬間、その周辺は青い光に包まれた。瞬間、黒の靄はキラキラと輝き始め、消え去った。
私はあまりの美しさに息を呑む。
「綺麗……」
呼吸が復活してすぐに思ったままを呟いてから、他人が自分を護って戦ってくれているのにこの言葉はないだろうと思った。
「本当に?」
叶さんの声だ。どうしてここにいるのだろう。そしてどうして私は振り返った。
「はい。……本当はこんなこと思ってはいけないんでしょうけどね」
「そっか」
叶さんは空を見上げ、何事かを唱えた。その後すぐに晃、と相賀くんを呼んだ。
何だろう。やっぱり思ってはいけなかったのだろうか。恐怖で震え、目を閉じて次の言葉を待つ。
「第二段階合格だよ。おめでとう」
え、本当に? 始めは全く信じられなかったのだが、蝶が光輝いて徐々に緑へと変化したことによって実感が湧いた。
「ありがとうございます!」
私は勢いよく頭を下げた。
「おめでとう」
相賀くんも微笑んでくれている。嬉しい! 緑になった蝶も、嬉しそうにひらひらと舞っている。
叶さんにさっきの豹変とここに来た理由についてを教えてもらった。どうやらあの豹変を含め、試験だったようだ。信じている人の豹変、そしてより信じている人の異変、更には黒節という脅威を体験してもらう。そうして強さと心を見る、というものであったようだ。
「高瀬さん、試験とはいえ怖い思いをさせてごめんね。帰ろっか」
叶さんが私に手を伸ばす。
「はい!」
私は手を取る。私と、叶さんと、相賀くんは笑った。
「あれ? 相賀くん?」
一緒に落ちたはずの相賀くんの姿が見当たらない、と思ったら。
「ここだよ」
相賀くんの声がする方向を見る。木の上に、相賀くんがいた。
「相賀く……」
呼びかけるとしたが相賀くんが飛び降りてきて、すうっと流れるように私の口を手で塞いだ。
「静かに」
何をするの、と言おうとしたが、相賀くんの真剣な表情に何も言えなくなった。
彼の視線を追う。その先には、黒い靄。
もしかして。考えたくないけれども、もしかしてこれは——。怖い。身体が震える。
靄はどんどん凝縮されていく。中央が黒くなって、人型の輪郭がぼんやりと見えてきた。
「——離れろ! 黒節だ!」
「黒節!?」
相賀くんは人格が変わったかのように叫び、沢山の紙を投げる。
何が起こったのか分からなかった。徐々に状況を理解する。悪い予感が的中してしまった衝撃が私を襲った。
私はその瞬間に彼に肩を押され、よろけながらも相賀くんのいた木の裏へ逃げた。でもそれ以上は逃げられなかった。相賀くんを置いて一人で逃げてはならない。脳内で警告が鳴り響く。
紙は蝶となり、黒節を囲む。
「衣装展開・水月花炉・起動!」
相賀くんは白地の布に水の青、色とりどりの花、そして燃え上がるような炎が一セットに詰め込まれた、現代風にアレンジされた動きやすい狩衣を着ていた。
彼はどこからか取り出した扇子を前に差し出し、上に扇ぐ。瞬間、その周辺は青い光に包まれた。瞬間、黒の靄はキラキラと輝き始め、消え去った。
私はあまりの美しさに息を呑む。
「綺麗……」
呼吸が復活してすぐに思ったままを呟いてから、他人が自分を護って戦ってくれているのにこの言葉はないだろうと思った。
「本当に?」
叶さんの声だ。どうしてここにいるのだろう。そしてどうして私は振り返った。
「はい。……本当はこんなこと思ってはいけないんでしょうけどね」
「そっか」
叶さんは空を見上げ、何事かを唱えた。その後すぐに晃、と相賀くんを呼んだ。
何だろう。やっぱり思ってはいけなかったのだろうか。恐怖で震え、目を閉じて次の言葉を待つ。
「第二段階合格だよ。おめでとう」
え、本当に? 始めは全く信じられなかったのだが、蝶が光輝いて徐々に緑へと変化したことによって実感が湧いた。
「ありがとうございます!」
私は勢いよく頭を下げた。
「おめでとう」
相賀くんも微笑んでくれている。嬉しい! 緑になった蝶も、嬉しそうにひらひらと舞っている。
叶さんにさっきの豹変とここに来た理由についてを教えてもらった。どうやらあの豹変を含め、試験だったようだ。信じている人の豹変、そしてより信じている人の異変、更には黒節という脅威を体験してもらう。そうして強さと心を見る、というものであったようだ。
「高瀬さん、試験とはいえ怖い思いをさせてごめんね。帰ろっか」
叶さんが私に手を伸ばす。
「はい!」
私は手を取る。私と、叶さんと、相賀くんは笑った。
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