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本編
❖じゅうさん
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「じゃあ、今回の夢の説明ね。今回は悪夢。最も蝶の力が費やされる夢の一つだよ。あ、だからって身構えなくていいよ。記憶は残らないから」
「上位夢人はどうしてもこういう夢が当たりやすいからね」
相賀くんは言う。それが上位夢人であるということか。蝶に力があるからどうしても、私たちにそのような役が当たってくるのか。
「設定と配役を発表するね。拓人・晃。凜・柳。成海・撫子望美。悪魔・水木」
皆が元気よくはい、という返事をしたので、遅れて私もはい、と言った。
「世界は夕暮れ時の展望台跡。地元の人は『紫陽花公園』と呼んでいる」
聞いた瞬間に、昨日の記憶が蘇る。私が、相賀くんと待ち合わせした場所だ。
「季節は六月。梅雨にも関わらず晴れている。あとは個人の判断で」
❖
不思議だ。どうしてこんなにも違和感なく夢にいるのだろう。実感はあるのにどこかふわふわした感覚が付き纏う。
けれども会話は続く。強い感情を伴って。
悪魔が錆びれた旧展望台の上へと私たちを追い詰める。拓人が倒れた。
「え、じゃあこれまでの話って……」
凜が泣きそうになりながら言う。
「嘘。拓人は我に魂を売った。だから、彼は我のもの」
「嘘よ! だって、まだ拓人の言葉を聞いてない!」
私は叫んだ。拓人はまだ私たちに、本当に悪魔と契約したのかを告げていない。ということは、他者への宣言が必要な契約が達成されていない可能性は大いにある。
「……ねえ拓人、起きて。お願い、起きてよ!」
「もう、遅い」
私たちは身体に強い衝撃を受けた。苦痛に顔を歪ませる。瞬間、拓人の姿が崩れていくのを目撃した。拓人は砂塵となって消えてゆく。
間に合わなかった。どうしよう。ごめんなさい。
「ごめんなさい!」
凜も泣き叫ぶ。もう、変えられない。運命は定まってしまったのだ。
❖
夢が明けた。
私たちは叶さんに報告をする。あんな悪夢だったのに、なぜだか爽快感がある。
「今日もつつがなく夢が終わりました」
「そっか、お疲れ様。水木と柳は記憶を消すね」
そう言うと叶さんは水木さんと柳さんの頭に手をかざした。
水木さん、柳さんと別れた後、都の、ある建物で私と叶さんと相賀くんで話をしていた。今回の夢についてである。
「夢人になってみて、どう?」
叶さんの問いに私は嬉しい、どれだけ怖かったり悲しかったりしていたとしても何故か気分が良い、と答える。
「ですって、——様」
後半は「様」以外聞き取ることができなかった。
「合格だ」
不意にどこからか低い声がかかった。それと同時に蝶とバングルが緋色になる。
私は、夢の記憶を失った。もう、どんな夢だったかは覚えていない。けれども、忘れたことに違和感はない。これが記憶が無くなるということか。
「おめでとう、望美。これで夢人第二位だね」
「え!?」
「ありがとう、ございます」
こんなに短い期間で夢人の、しかも聖女になれるなんて。
感極まって視界が歪んできた。
「おめでとう、望美」
相賀くんも祝ってくれる。……あれ? 今、名前呼びだった?
「相賀く——」
「晃」
「え?」
いつものように「相賀くん」と呼ぼうとしたら遮られた。
「望美はもう聖女だから、晃って呼んで」
「うん。ありがとう、晃」
ああ、もうだめ。
私は溢れる幸せに声を上げて泣いてしまった。
「上位夢人はどうしてもこういう夢が当たりやすいからね」
相賀くんは言う。それが上位夢人であるということか。蝶に力があるからどうしても、私たちにそのような役が当たってくるのか。
「設定と配役を発表するね。拓人・晃。凜・柳。成海・撫子望美。悪魔・水木」
皆が元気よくはい、という返事をしたので、遅れて私もはい、と言った。
「世界は夕暮れ時の展望台跡。地元の人は『紫陽花公園』と呼んでいる」
聞いた瞬間に、昨日の記憶が蘇る。私が、相賀くんと待ち合わせした場所だ。
「季節は六月。梅雨にも関わらず晴れている。あとは個人の判断で」
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不思議だ。どうしてこんなにも違和感なく夢にいるのだろう。実感はあるのにどこかふわふわした感覚が付き纏う。
けれども会話は続く。強い感情を伴って。
悪魔が錆びれた旧展望台の上へと私たちを追い詰める。拓人が倒れた。
「え、じゃあこれまでの話って……」
凜が泣きそうになりながら言う。
「嘘。拓人は我に魂を売った。だから、彼は我のもの」
「嘘よ! だって、まだ拓人の言葉を聞いてない!」
私は叫んだ。拓人はまだ私たちに、本当に悪魔と契約したのかを告げていない。ということは、他者への宣言が必要な契約が達成されていない可能性は大いにある。
「……ねえ拓人、起きて。お願い、起きてよ!」
「もう、遅い」
私たちは身体に強い衝撃を受けた。苦痛に顔を歪ませる。瞬間、拓人の姿が崩れていくのを目撃した。拓人は砂塵となって消えてゆく。
間に合わなかった。どうしよう。ごめんなさい。
「ごめんなさい!」
凜も泣き叫ぶ。もう、変えられない。運命は定まってしまったのだ。
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夢が明けた。
私たちは叶さんに報告をする。あんな悪夢だったのに、なぜだか爽快感がある。
「今日もつつがなく夢が終わりました」
「そっか、お疲れ様。水木と柳は記憶を消すね」
そう言うと叶さんは水木さんと柳さんの頭に手をかざした。
水木さん、柳さんと別れた後、都の、ある建物で私と叶さんと相賀くんで話をしていた。今回の夢についてである。
「夢人になってみて、どう?」
叶さんの問いに私は嬉しい、どれだけ怖かったり悲しかったりしていたとしても何故か気分が良い、と答える。
「ですって、——様」
後半は「様」以外聞き取ることができなかった。
「合格だ」
不意にどこからか低い声がかかった。それと同時に蝶とバングルが緋色になる。
私は、夢の記憶を失った。もう、どんな夢だったかは覚えていない。けれども、忘れたことに違和感はない。これが記憶が無くなるということか。
「おめでとう、望美。これで夢人第二位だね」
「え!?」
「ありがとう、ございます」
こんなに短い期間で夢人の、しかも聖女になれるなんて。
感極まって視界が歪んできた。
「おめでとう、望美」
相賀くんも祝ってくれる。……あれ? 今、名前呼びだった?
「相賀く——」
「晃」
「え?」
いつものように「相賀くん」と呼ぼうとしたら遮られた。
「望美はもう聖女だから、晃って呼んで」
「うん。ありがとう、晃」
ああ、もうだめ。
私は溢れる幸せに声を上げて泣いてしまった。
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