6 / 37
5
しおりを挟む
最後まで彼女は口を割らなかった。
nabarへ2人で入ったその次の約束は、前々から2人の間で行こうと話していた居酒屋だった。以前のその話の際には予約がいっぱいで入れなかった。
7時の約束で僕は、店に早く着いた。先に入っている旨をLINEして僕は扉を開けようとしたが、店の看板の電気は点いておらず、僕は恐る恐る扉を開いた。
店の中には電気が点いていて開店していたので安心した。カウンターには店主らしきおばさんが立っており「いらっしゃい」と声を掛けられた。
「江藤で…」
店主は少し戸惑った様子で
「さおり?」
と聞いてきたので、僕は、
「ああ、そうです。」
と答えた。
店内の席はカウンターと座敷、全席が掘りごたつ式になっていて、僕はカウンターの一番奥へ通された。カウンターでの掘りごたつ式は珍しく、僕は家の中に上がり込んだような不思議な感覚に陥っていた。
「こんばんは~。」
間もなく、彼女が入ってきた。店主と「お久しぶりです」といった会話をしながら、僕の右横に座った。
彼女はやはりいつものようにビールを頼んだ。
食べ物や飲み物を頼みながら、店主と彼女は懐かしい会話を繰り広げており、たまらずに僕は聞いたのだった。
「同級生?」
「そうなんですよ~、もう中学校の時はずっとここの2階に入り浸ってて~。」
店主は同級生の母親だった。そして何度も飲みに行く度に聞く言葉もやはりここでも聞いてしまうのだった。
「もう、3人目が生まれたんですよ~、でもシングルです!」
聞けば丁度、その同級生が帰省しているタイミングで、後に2階から降りてきて彼女と何年振りという再会を果たしていた。
その再会の場に居合わせてしまっていた僕。さおりの同級生と、その母親と、その懐かしいエピソードを聞いてしまった僕。
それを考えると、今より更に彼女に入り込んでしまった、という恐れを覚えずにいられなかった。
料理と雰囲気と、今までまだ経験した事のないようなそんな居酒屋さんであって、存分にそれを堪能したのだった。
店を出て、「どうする?」と聞きはしたものの、僕は先日違うスナックで出会った雇われ店長のところへ行きたいと思っていて、そう聞きながらもその店へ足を向かわせた。
そのスナックは広い空間ではあったが、1人で切り盛りしていた。
店に入るとカウンターに若い男性客が2人。僕ら含めて4人で僕は丁度いいと思った。
前回、まずは僕の中の世界に彼女を引き戻す事には成功していた。そしてあのスナックからいなくなった理由も聞き出していた。僕の次の課題は、そのスナックのママとさおりを引き合わせる事だった。
ただ、彼女は彼女で、何かを、そうそれは今何の仕事をしているのかを、話したい、それを僕は感じていた。単純に聞いたところで、問い詰めたところで、その答えは返ってくるわけではなく、返ってくるわけではないけれども、話したい、そんな彼女の中の複雑な感情が、僕は透き通るように見えていた。
インスタに上がる電車での行き来、そしてその時間帯、仕事としての費用対効果、そのあたりを考慮していくと必然と答えは導き出せはしたものの、それを何もオブラートに包まずに質問できる程の器量は僕にはなく、向こうもこちらも「大体そのあたり」そんな理解で話は進んだものの、何より、これをやはりハッキリと、彼女は、伝えたい、それは彼女の中にあって、ただそれを切り出すそんなタイミングは中々、その辺りには落ちていないもので、それはある意味致し方ない事でもあった。
nabarへ2人で入ったその次の約束は、前々から2人の間で行こうと話していた居酒屋だった。以前のその話の際には予約がいっぱいで入れなかった。
7時の約束で僕は、店に早く着いた。先に入っている旨をLINEして僕は扉を開けようとしたが、店の看板の電気は点いておらず、僕は恐る恐る扉を開いた。
店の中には電気が点いていて開店していたので安心した。カウンターには店主らしきおばさんが立っており「いらっしゃい」と声を掛けられた。
「江藤で…」
店主は少し戸惑った様子で
「さおり?」
と聞いてきたので、僕は、
「ああ、そうです。」
と答えた。
店内の席はカウンターと座敷、全席が掘りごたつ式になっていて、僕はカウンターの一番奥へ通された。カウンターでの掘りごたつ式は珍しく、僕は家の中に上がり込んだような不思議な感覚に陥っていた。
「こんばんは~。」
間もなく、彼女が入ってきた。店主と「お久しぶりです」といった会話をしながら、僕の右横に座った。
彼女はやはりいつものようにビールを頼んだ。
食べ物や飲み物を頼みながら、店主と彼女は懐かしい会話を繰り広げており、たまらずに僕は聞いたのだった。
「同級生?」
「そうなんですよ~、もう中学校の時はずっとここの2階に入り浸ってて~。」
店主は同級生の母親だった。そして何度も飲みに行く度に聞く言葉もやはりここでも聞いてしまうのだった。
「もう、3人目が生まれたんですよ~、でもシングルです!」
聞けば丁度、その同級生が帰省しているタイミングで、後に2階から降りてきて彼女と何年振りという再会を果たしていた。
その再会の場に居合わせてしまっていた僕。さおりの同級生と、その母親と、その懐かしいエピソードを聞いてしまった僕。
それを考えると、今より更に彼女に入り込んでしまった、という恐れを覚えずにいられなかった。
料理と雰囲気と、今までまだ経験した事のないようなそんな居酒屋さんであって、存分にそれを堪能したのだった。
店を出て、「どうする?」と聞きはしたものの、僕は先日違うスナックで出会った雇われ店長のところへ行きたいと思っていて、そう聞きながらもその店へ足を向かわせた。
そのスナックは広い空間ではあったが、1人で切り盛りしていた。
店に入るとカウンターに若い男性客が2人。僕ら含めて4人で僕は丁度いいと思った。
前回、まずは僕の中の世界に彼女を引き戻す事には成功していた。そしてあのスナックからいなくなった理由も聞き出していた。僕の次の課題は、そのスナックのママとさおりを引き合わせる事だった。
ただ、彼女は彼女で、何かを、そうそれは今何の仕事をしているのかを、話したい、それを僕は感じていた。単純に聞いたところで、問い詰めたところで、その答えは返ってくるわけではなく、返ってくるわけではないけれども、話したい、そんな彼女の中の複雑な感情が、僕は透き通るように見えていた。
インスタに上がる電車での行き来、そしてその時間帯、仕事としての費用対効果、そのあたりを考慮していくと必然と答えは導き出せはしたものの、それを何もオブラートに包まずに質問できる程の器量は僕にはなく、向こうもこちらも「大体そのあたり」そんな理解で話は進んだものの、何より、これをやはりハッキリと、彼女は、伝えたい、それは彼女の中にあって、ただそれを切り出すそんなタイミングは中々、その辺りには落ちていないもので、それはある意味致し方ない事でもあった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる