暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

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 神に委ねた。

 そうは言っても、その予感というか、直観的に感じていた。

 ありさにマッサージをしてもらいに行くその日、さおりが出勤するかなんか分かるはずもなかった。ただしかし、さおりと僕のこれまでのこのストーリー、関係性、発展性を考えると、やはり神はおそらくその機会を僕に与えるだろう、そんな気はしていたし、また逆に、もしそうなってしまったならどうしよう、そんな無駄な不安も頭の中で一杯だった。
 そしてもしそれが現実になったとしたら、そう考えると、実際自分がどういった行動を取るのか、どんな言葉を投げかけるのか、どんな反応が返ってくるのか、そんな事まで考え出すと、正しく夜も眠れないようなそんな時間を過ごすハメになった。
 更に、わざわざ片道1時間かけて日中、ラブホで女の子を2人呼ぶなんてとても正気の沙汰ではなく、正しく単なるクズ、自分がそんな人間になり下がるのかどうか、という果てしなく無駄な悩みもまた、僕の頭の中を一杯にさせていた。
 
 現実になるかも分からない、その先の事に僕は頭を抱えていたのである。

 いつもの二日酔いの寝ぼけ眼、僕は土曜日にさおりの勤めるデリヘルのHPをチェックした。
 珍しく更新されていた次の週3日間の出勤情報には、見事に僕がありさに会いに行く日が入っていた。

 やっぱりか…。

 そんな気持ちが一番先走った。神が見落とすはずがないと、そんな感覚だった。そしてその偶然を生かす意外に手はないと、僕は強く思ったのだった。
 冷静だった。
 もちろん、いつもの出勤のドタキャンがある事も考えられた。
 しかし、それはあるはずない、と何かがそう感じさせていた。天がほほ笑む、そんな気分だった。

 そこまでのお膳立てが揃っても尚、僕は悩んでいた。
 いざ、ラブホの1室で2人きりになったその時、僕はさおりにどう接するだろうか、どう接する事ができるだろうか、そしてそこまでする価値が果たしてあるのだろうか。
 もちろん、幾度なく妄想はしてきていたのである。
 さおりと一つになる事、さおりにしてもらう事、さおりの体を愛する事を。

 ただこの状況下で、実際にそんなところまで行きつくだろうか、ドアを開けて僕だと分かった瞬間に部屋に入らずにドアを閉められるかもしれない。もしそうなった場合、出禁のような扱いになるのかもしれない、そして今まで築き上げてきたさおりの僕に対する信用も、信頼も、何もかもを、失ってしまうかもしれない、今度はそんな不安も湧き上がってきて、僕の頭を更に悩ませた。

 よくよく、自分自身に問うてみても、何がしたいのか、どうしたいのか、それもハッキリしていかないまま、ただ知ってしまったからには、知ってしまった立場の人間として、どうしてもそれは実行しないといけないような気がしてきて、悩み抜いた挙句、もう何がどうでも、とりあえずそうしてみよう、僕の中では結局そんな結論にたどり着いたのである。

 
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