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カルバートが読まれる前に 6
しおりを挟むこいつは一体何を言っているのだろう…。
散らかったダイニングテーブル。
久々に向き合って座った妻はポロポロと涙をこぼしながら、言葉を絞り出していた。
「まず、本当に申し訳ないなと思って。なんでこんなに外野からあーだこーだと言われるんだろうと思ってたら、そういえば理由を聞いてなかったと思って…。それは本当に申し訳ないと思う。きっと準備してただろうにと思って…。」
思ったよりは流暢に喋れたと思うし、妻もまた特に感情が高ぶったような様子は無かった。
「うん。そうだよね。普通はそうだよ、理由を聞くよ。」
妻は言った。
12月2日。
妻は離婚届けを僕に渡してきた。「ドキドキするから手紙にしました」との言葉を添えて。
A4サイズの封筒に入った離婚届。
その封をする所にクリップに便箋が挟まっていた。
いよいよきたかと僕は思った反面、見事に12月2日に渡された事を思うと、かなりの拍子抜けもしていた。
それでもやはりまじまじと見る気にはなれなかった。
便箋にはこう書かれていた。
「これからは子供と3人で暮らしていきたいです。
お母さんがいる事、地区、学校、近所の事を考えると私達3人でこの家に住み続けたいです。
どうしてもあなたがこの家に住みたいなら私達は引っ越します。
丁度、幼稚園に提出する書類もきたので、早く話し合って12月中に動き出したり準備をしたいです。
あなたの考えを聞いて話し合いしたいです。
どうかお願いします。」
そして記入済の離婚届には妻が親権で子供2人、印鑑は既に付かれた状態だった。
予想はしていたとはいえ、内心穏やかではなかった。ただ、元々その存在に感づいていた事と下手なメモ紙を見つけていた事で相当にショックは少なく済んだ。
考えた。
ひたすらに考えた。
僕がどうしたいのか、そして、一体何をどう、伝えればいいのか。唯一の救いは妻が「どうしたい」を明確に書いている事だった。
ただ、離婚したい。
そんな元も子もないような恋愛観、喧嘩をして仲直りすような話ではなく、子供と3人で住みたいという願望が書かれていた事に、僕は大いに安心していた。
しかしながらその内容として、僕の方が出ていけ、そんな内容であった事に関してはやはり、生まれも育ちもお姫様である事をおおいに実感させ、家事育児を全くしてこなかった僕の父や、世帯主、旦那様、尊敬や、生活がある事自体に対する感謝、そんな感覚はかけら程もないんだろうと感じさせた。
更に、このアパートが僕の社宅扱いである事も、彼女の頭の中では都合の良い解釈でしかないんだろうとも思った。
「どうしたいか」
があれば話は早い。
ひたすらにそれに向かえばいいだけの話である。僕だって伊達に営業してきたわけじゃない。どうしたいか、どうするかを決めて、イメージして実現させていく事、そのノウハウは自然と身についていた。
ただ、そうなった時にネックな部分が2つ挙げられた。
一つは当然、金銭面の不安であった。養育費うんぬんのところも僕は前もって調べていたが、そうなった時に妻がどういったイメージを持っているのか、そして正直なところ、現状の生活で単に妻にお金を渡していくのは一抹の不安もあった。それは彼女に浪費癖があったりする訳ではなく、行動の原理、すなわち購買に関しても子供のわがままをひたすら聞いているだけだったからだった。
そしてもう一つは、下の息子の事だった。
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