暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

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 その自身の心の中での別れが頭をよぎってから、僕はもうずっと考え続けてきたさおりとの最後の定例会をいよいよ本格的に考えるようになった。

 夜の街に出ない事。

 それは何か断固たる意思があるわけでもないが、もちろん会社で飲み会なんかがあれば出席はするつもりで、ただ1人でフラっと出たり、女の子と予定を立てて出る事は、もう以前のように鼻息を荒くするような事ではなくなっていて、もうじき40の歳を数えるその事も助長して、そういった意識が段々と膨らんでいって且つ、帰りたくない家の要素の1つであった嫁の不機嫌が少し緩和されてきている事もあって「卒業」という2文字がぼやけたものからくっきり形へと浮かび上がってきていた。

 そんなタイミングでまた暫く体調不良で会っていなかったさおりと会う計画が持ち上がっていて、予定合わせもなかなか上手く行かなかった中で土曜日の昼間のLINEから当日の約束へと発展していった。

 当然、僕の頭には串カツ屋と綱吉の2つの居酒屋があったが、そこはどうしても串カツ屋の方に軍配が上がった。
 そこでまた、もちろん人気店の土曜日、予約が取れるのかという懸念が少し湧き上がったし、さおりもそういった心配をしていたが、僕は当日決まったこの事でも直ぐには予約に走らなかった。
 神はきっと僕らに準備していると理由もない確信があったからだった。むしろ予約の電話すら面倒に感じて直接門を叩いてもいいんじゃないかというくらいの感覚でもあった。昨日の酒が抜けきれないそれもその理由の1つでもあったが、結局僕は16時頃に予約の電話を入れたのだった。

 電話口は女将さんを思わせる女性の丁寧な対応で「ご準備しております」と言って電話を切った。

 さおりと会うこの1時間前の時間に、僕はまた何を伝えられるだろうかと考えを巡らせている。

 出会えて良かったと心から思える反面、出会わなければ良かったんじゃないかとも思える。
 あの一年ぶりに再会した時、何故さおりは僕に声を掛けてきたのか、それが無ければ僕はもうさおりの事は頭から離れていた。
 数多くの人間の中で、28歳と39歳、何故僕と連絡を取り合って時間を作ってくれるのか、その気になればいつだってスルー出来るのに。

 聞くのではなく、伝えられるとしたら、幸せに生きていって欲しい。
 そう思う度に、何も出来ない自分に歯痒さを覚えていた。
 
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