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真理恵にくびったけ 8
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MKのドアを開けた瞬間、予想通り、古賀さんが一番入口近くの椅子に座っていた。
僕は両ひざに手をついて少し屈みながら、暫く止まって、引き笑いした。そして意を決して進んでいき、古賀さんに「お疲れ様です…」と言ったのだった。
「何やと!?何やと!?」
古賀さんは繰り返した。そう、ママレード時代、古賀さんも真理恵推しだったのだ。
古賀さんは何度かアフターで真理恵を連れていっていた。その中で一度、真理恵から朝6時頃に助けを求める電話がかかってきた事があった。「まだ飲んでるけど帰りたい。」という内容だった。
おそらくご飯も誘ってただろうとは思うが、それは実現してないはずだ。なんせ、連絡が返ってこないから。
僕は真理恵に古賀さんとの間に座るよう指差し、3人並びの一番右側に座った。
「お前LINEブロックしちょっやろ。」
という古賀さんの声が聞こえてきたが、実はさっきの串カツ屋で、
「古賀さんLINEブロックしてるんですよ~、さとし君のは全部取ってます!」
と聞いていた。それを聞いて単純に僕は嬉しかった。古賀さんの指摘を、真理恵は上手くかわしていた。
やはりまきの反応は、いつもより少し鈍っていたが、その内に真理恵とも話出した。
まきから以前、
「真理恵ちゃんうちに入らんやろか?」
と聞かれていたが、当時連絡も取れない相手であり、僕に言われたところで拉致が開かなかった。また、真理恵に直接まきからDMを送っていた事も聞いていた。気が付けば勧誘が始まっていた。
しかしこれは実は、僕の頭の中にずっとあった事でもあった。真理恵がどういう風に生計を立てているのか、それも謎に包まれていたのだ。ママレードを辞めてからスナックを開くという話も聞いてはいたが、それが実現する事はなく、また、その後どこかで勤めているという話も聞いた事がなかった。
できれば、安心して勤められるところにいて欲しい、というのが僕の願望だった。
まきは一生懸命に勧誘に走ったが、僕は真理恵は入らないんじゃないだろうかと推測していた。
真理恵はそこでレモンサワーを2杯程飲んで、へべれけになっていったのだった。
キスした後も押し問答はずっと続いた。
真理恵は、
「まあまあいいから。」
と財布から何かを取り出し、僕の胸ポケットに押し込んだ。デレンデレンの真理恵を前にその紙が何なのかの確認をする余裕も無かった。その後も、
「男はもういいっ!」
という言葉を男の僕の前で吐き捨てたりしていた。
問答の末に、結局またMKのビルの階段に座り込んだ真理恵は、今度は、
「トイレに行きたい。」
と言い出したので、MKの手前のボーイズバーに入り込み、一旦トイレを借りた。
一杯注文したまでは良かったものの、それから真理恵は机に突っ伏し、またトイレに入ったと思うと、今度は出てこなくなった。ボーイに鍵貸して、と頼んだが、10円玉で開きますよ、というので鍵を開けた。
すると、死体が転がっていた。抱き起そうとしたが、これがまた上手くいかない。そこでもまた、無駄なやり取りが始まった。「帰って」「帰って」と何度か言われた。
「誰ー?」
「さとし。」
そんなやり取りも繰り返した。
見るに見かねたボーイが
「タクシー呼びましょうか?」
というとようやく真理恵は頷き、やっとの事で立ち上がった。ヒヤヒヤしながら階段を下りた。
下り切った階段にまた、真理恵は座り込みだした。タクシーが目の前に停まったが、しばらく乗ろうとしなかった。
「社会人としてどうなん?」
と僕が言うと、急に、
「そらいかんわ。」
と言ってスパッと立ち上がり、ようやくタクシーに乗り込んだのだった。
僕は両ひざに手をついて少し屈みながら、暫く止まって、引き笑いした。そして意を決して進んでいき、古賀さんに「お疲れ様です…」と言ったのだった。
「何やと!?何やと!?」
古賀さんは繰り返した。そう、ママレード時代、古賀さんも真理恵推しだったのだ。
古賀さんは何度かアフターで真理恵を連れていっていた。その中で一度、真理恵から朝6時頃に助けを求める電話がかかってきた事があった。「まだ飲んでるけど帰りたい。」という内容だった。
おそらくご飯も誘ってただろうとは思うが、それは実現してないはずだ。なんせ、連絡が返ってこないから。
僕は真理恵に古賀さんとの間に座るよう指差し、3人並びの一番右側に座った。
「お前LINEブロックしちょっやろ。」
という古賀さんの声が聞こえてきたが、実はさっきの串カツ屋で、
「古賀さんLINEブロックしてるんですよ~、さとし君のは全部取ってます!」
と聞いていた。それを聞いて単純に僕は嬉しかった。古賀さんの指摘を、真理恵は上手くかわしていた。
やはりまきの反応は、いつもより少し鈍っていたが、その内に真理恵とも話出した。
まきから以前、
「真理恵ちゃんうちに入らんやろか?」
と聞かれていたが、当時連絡も取れない相手であり、僕に言われたところで拉致が開かなかった。また、真理恵に直接まきからDMを送っていた事も聞いていた。気が付けば勧誘が始まっていた。
しかしこれは実は、僕の頭の中にずっとあった事でもあった。真理恵がどういう風に生計を立てているのか、それも謎に包まれていたのだ。ママレードを辞めてからスナックを開くという話も聞いてはいたが、それが実現する事はなく、また、その後どこかで勤めているという話も聞いた事がなかった。
できれば、安心して勤められるところにいて欲しい、というのが僕の願望だった。
まきは一生懸命に勧誘に走ったが、僕は真理恵は入らないんじゃないだろうかと推測していた。
真理恵はそこでレモンサワーを2杯程飲んで、へべれけになっていったのだった。
キスした後も押し問答はずっと続いた。
真理恵は、
「まあまあいいから。」
と財布から何かを取り出し、僕の胸ポケットに押し込んだ。デレンデレンの真理恵を前にその紙が何なのかの確認をする余裕も無かった。その後も、
「男はもういいっ!」
という言葉を男の僕の前で吐き捨てたりしていた。
問答の末に、結局またMKのビルの階段に座り込んだ真理恵は、今度は、
「トイレに行きたい。」
と言い出したので、MKの手前のボーイズバーに入り込み、一旦トイレを借りた。
一杯注文したまでは良かったものの、それから真理恵は机に突っ伏し、またトイレに入ったと思うと、今度は出てこなくなった。ボーイに鍵貸して、と頼んだが、10円玉で開きますよ、というので鍵を開けた。
すると、死体が転がっていた。抱き起そうとしたが、これがまた上手くいかない。そこでもまた、無駄なやり取りが始まった。「帰って」「帰って」と何度か言われた。
「誰ー?」
「さとし。」
そんなやり取りも繰り返した。
見るに見かねたボーイが
「タクシー呼びましょうか?」
というとようやく真理恵は頷き、やっとの事で立ち上がった。ヒヤヒヤしながら階段を下りた。
下り切った階段にまた、真理恵は座り込みだした。タクシーが目の前に停まったが、しばらく乗ろうとしなかった。
「社会人としてどうなん?」
と僕が言うと、急に、
「そらいかんわ。」
と言ってスパッと立ち上がり、ようやくタクシーに乗り込んだのだった。
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