【完結済】俺の彼女が人として終わっているんだが

Melon

文字の大きさ
6 / 35
1章 俺の彼女は終わっている

彼女、同級生と会う~彼女、苦手を告白~彼女、復活

しおりを挟む
「よーし今回は早く着いたぞー!」

 本日は、志永と燐華がデートをする日だった。
 昨日に適当な場所で酒を飲み、警察に介抱されてたどり着いたホテルが偶然集合場所の近くだったため、早く着いたのだった。

「あれ? 燐華ちゃんじゃん! 久しぶりー!」

「んー?」

 背後から自分の名前を呼ばれ、振り向いた。


(あー燐華さん時間通りに来るかなー......)

 俺は集合場所に向かっていた。
 このペースなら十分ほど前には到着しそうだ。
 集合場所の近くまで来たところで、燐華さんが先にたどり着いていることに気が付いた。

(あれ、珍しいな......)

 いつも時間に遅れるどころか集合場所にたどり着けない状況であることが多かったので、驚いてしまった。

(......ん? 誰かと一緒にいるな......?)

 燐華さんは、茶髪のちょっとギャルっぽい服装の女性と話していた。
 道でも聞かれたのか、それとも友達と偶然出会ったのか。
 そんなことを考えながら燐華さんの元へ近づいていく。

 次の瞬間、燐華さんは膝から崩れ落ち、地面に手をつく。
 手で口を押え、地面にうずくまってしまう。

「り、燐華さん!」

 俺は全力で燐華さんの元へ駆け寄った。


「......燐華さん!」

 俺は燐華さんを軽くゆすり、様子を確認する。

「き、君は!?」

 女性が俺に声をかけてきた。

「こ、この人の彼氏です! 一体どうしたんですか!」

「わ、私にもわかんない......! 急に体調が悪くなったのかうずくまって......!」

 女性も突然のことで驚き戸惑っていた。

「燐華さん! 大丈夫ですか!?」

「......うん。いつもと同じでお酒......。うぷっ......!」

 口から嘔吐物が出てしまい、地面を汚す。

「うっ......! うぅ......」

 燐華さんはいつもこんなに苦しそうに吐いたりしない。
 明らかに様子がおかしかった。

「と、とりあえず私水とかティッシュとか買ってくる!」

「はい! お願いします!」

 女性は走って水などを買いに行った。
 その間俺は燐華さんを落ち着けるためにそばにいた。


 数分後、燐華さんの調子が歩ける程度まで回復したので、近くのベンチに座らせた。

「助かりました。ありがとうございます」

 俺は女性にお礼する。

「い、いえ......。友達として当然のことをしただけだし......」

「え、友達?」

「私、燐華の同級生の菜月夏鈴なづきかりんって言うんだ。で、お兄さんは燐華ちゃんの彼氏さんだよね? 名前は?」

「あ、俺は志永翔って名前です」

「そーなんだ。今後よろしくね。それじゃ、私用事があるので、燐華ちゃんをお願いね」

「は、はい......」

「燐華ちゃんお大事に。......今度ゆっくりお話ししようね」

 夏鈴さんは手を振ると走ってどこかへ行ってしまった。
 姿が見えなくなり、俺は燐華さんの隣に座った。

「......いい友達ですね」

「......うん」

 返事は肯定的なものだった。
 しかし、燐華さんの様子が明らかにおかしい。
 何かにおびえるように震え、恐怖している。

「......燐華さん。もう少し休んだら一旦俺の家に移動してしっかり休みましょう。もし歩くのが大変でしたら、おぶっていきますよ」

「......わかった」

 俺はしばらくの間、燐華さんの体調が戻るのを待った。



 燐華さんの体調が回復してきた頃に、俺たちは移動を開始し、俺の家に場を移した。
 燐華さんはベッドに横向きに寝転がり、休憩を始めた。

「ごめんね......。志永くんに迷惑かけちゃって......」

「何言ってるんですか。いつも吐いて介抱してるので慣れっこですよ」

「はは......それもそうだね......」

 いつもと比べ、やけにテンションが低い。
 もしかして、夏鈴という名のあの子と何かあったのだろうか。

「......燐華さん。もしかして夏鈴さんのこと......」

「うっ......な、何......」

 燐華さんが口に手を当てて返事をする。

「......ギャルっぽくて苦手だったりします?」

「......え? あ、あぁまあね......! う、うん! どうしても私と合わなくて......。えへへ......」

「そ、そうですか......」

 笑いながら回答しているが、顔が少しこわばっているようなした。

「うん......。苦手なんだよね、どうしても......」

 苦手なだけで本当にここまで疲弊してしまうのか。
 そう思ったが、こんな状態の燐華さんに質問しても、心身共に燐華さんを追い詰めてしまうだけだ。
 俺はこれ以上聞くことをやめることにし、燐華さんの介抱を最優先にすることにした。

「それじゃ、お水持ってきますね。飲めそうだったら少しずつ飲んでください」

「う、うん......」

 吐いてばかりでは脱水状態になってしまうので、水を用意するために台所へと向かった。
 食器棚からコップを取り出し、水を入れる。

「おっ......えほっ! えっ......!」

 突然嗚咽の声が聞こえてきて、咄嗟に燐華さんの元へと戻る。

「り、燐華さん!」

 ベッドの上で右手で口を押え、うずくまっている燐華さんの背中をさする。
 しばらくさすると、燐華さんは落ち着き、再び横になった。

「ごめんね......ごめんね......」

 泣きそうになりながら、ひたすら謝罪する燐華さん。

「......大丈夫ですよ。......気にしないでください」

 俺は燐華さんの近くに座り、安心させるために声をかけ続けた。

「......志永くん。膝枕して......」

「.....それで気が晴れるならいいですよ」

 俺は受け入れ、膝に燐華さんの頭を乗せる。

「......やっぱ、安心感あるね」

 俺の腹に顔をうずくめながら燐華さんが言う。

「......落ち着いてきましたか?」

「うん......。ありがとね......」

 燐華さんは落ち着いたのか、それからしばらく寝てしまった。


「んぅ......! ふわぁぁ......」

 数時間後、大きなあくびと共に燐華さんは目を覚ました。

「あ、おはようございます。......夕方ですけど」

「えっ、あっ、お、おはよう!」

 燐華さんが慌てて飛び起きたので、俺の顎と燐華さんのおでこが衝突してしまう。
 あまりの痛さに、二人で悶え苦しむ。

「り、燐華さんが元気になって......よかったです......」

「あ、ありがと......ね......」

 二人して数十秒ほどベッドで倒れ、痛みが引くのを待つ。
 ある程度痛みが引いてきたところで、俺たちは起き上がる。

「......喉乾いちゃったな」

「あ、それなら水......」

 水を持ってこようとしたが、燐華さんは足元の鞄からビール缶を取り出し、右手だけで機用に蓋を開け、一気飲みする。
 そして、缶をテーブルに叩きつける。

「ふわあぁぁ......! 格別......!」

 燐華さんの顔が赤く染まり始める。
 どうやら燐華さんは立ち直れたようだ。

「燐華復活! いやー、志永くんにはいつも以上に迷惑かけちゃったなー......。お出かけもできなかったし、本っ当にごめんねー」

「いえ、元気になってなによりです」

「よーし! 今夜は飲むぞー!」

 燐華さんはもう一つビール缶を開け、飲み干す。
 四本目を飲み終えたところで嘔吐してしまったが、その顔は苦しそうな顔ではなく、笑顔だった。
 いつもの燐華さんに戻ったのだと、俺は心の底から安心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜

葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」 そう言ってグッと肩を抱いてくる 「人肌が心地良くてよく眠れた」 いやいや、私は抱き枕ですか!? 近い、とにかく近いんですって! グイグイ迫ってくる副社長と 仕事一筋の秘書の 恋の攻防戦、スタート! ✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼ 里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書 神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長 社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい ドレスにワインをかけられる。 それに気づいた副社長の翔は 芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。 海外から帰国したばかりの翔は 何をするにもとにかく近い! 仕事一筋の芹奈は そんな翔に戸惑うばかりで……

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

処理中です...