【完結済】俺の彼女が人として終わっているんだが

Melon

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3章 俺の彼女は仲良くなりたい

彼女、心配される~彼女、仲良くなれそうな気がした

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 次の日の朝。
 俺は燐華さんを迎えに行った。
 怪我をした燐華さんを放っておくことができないので、今日から登校も一緒にすることにした。

 燐華さんのマンションに入り、部屋の扉をノックする。
 すると、すぐに燐華さんが開錠し、扉を開けた。

「おはようございます。よく寝れましたか?」

「ふわああ......。頭痛くてあんまり寝れなかった.....」

 開口一番大欠伸である。
 悪化するから酒を飲むなと伝えられているのに飲んでしまったのだから当然だ。

「駅付いたら起こすんで、電車で寝てください」

「ふわぁあーい......」

 眠くてフラフラしている燐華さんの右手を握り、俺は最寄り駅へ向かい始めた。


 怪我をしてから初の登校。
 怪我はまだ治っておらず、燐華さんは頭に包帯を巻いたままだ。
 そんな彼女を周りはチラ見する。

「なんか見られてるね......」

「そりゃ包帯ぐるぐる巻きなので.....」

 二人で教室に向かっていると、燐華さんが怪我した原因ともいえる人物に呼びかけられた。

「り、燐華ちゃん!? どうしたのその頭!」

 夏鈴さんが走って近づいてくる。

「うぅ気分が......」

「頑張ってください......!」

 小声で燐華さんを励ます。

「怪我したの!? なんかフラフラしてるし......!」

 フラフラしているのは怪我というより、寝不足と夏鈴さんのせいであるが、それを知る由もなかった。

「とりあえず一旦座ろうよ!」

 燐華さんは夏鈴さんに手を取られ、連れていかれた。
 それを俺は追いかける。

「ほら座って!」

 燐華さんを休憩スペースのソファに座らせる。

「起きてられる? 横になる?」

 夏鈴さんは太ももをポンポンと叩く。

「いや、大丈夫だから......」

「いいからいいから。遠慮しないで!」

 少し強引だが、燐華さんを寝かせた。
 周囲の視線を集めていて、燐華さんは少し恥ずかしそうだった。

 俺は寝ている燐華さんの隣に座った。

「彼氏さんに聞きたいんだけど、どうしちゃったわけ?」

「実は、階段で転んじゃって......。一応大学には来れそうだったので来たんですが......」

「そうなんだ......。でも無理しちゃだめだよ......!」

 夏鈴さんは意識が朦朧としている燐華さんの頭を撫でる。
 慰めているつもりだろうが、この行動で燐華さんは弱っている。

「夏鈴ちゃん......。もう大丈夫だから......!」

 燐華さんは無理やり起き上がると、頭を押さえた。

「燐華さん! 無理しちゃダメですよ!」

「いや大丈夫......。それより、教室に行こ......?」

 燐華さんは立ち上がると、フラつきながら教室へと歩き始めた。

「夏鈴さん、燐華さんを連れて行かないといけないので、俺も失礼します」

「うん。ちゃんと面倒見てあげてね」

 俺は立ち上がり、燐華さんを支えながら教室へと向かった。


 それから教室に入り、席に座る。
 数分後に教授がやってきて講義が始まった。


 講義が始まってしばらく経過したが、教授がひたすらしゃべり続けているだけなので比較的静かだった。
 燐華さんは眠いのかウトウトしている。
 持っているペンを落としそうになってしまっていたので、俺は落ちないように止める。
 ついでに燐華さんを起こすことにした。

「燐華さん。起きてください」

「んん......!」

 俺が小声で呼びかけると、ビクッと体が動き、目が開く。
 右手で目をこする燐華さん。
 そんな燐華さんが可愛かった。


 それから数時間後、午前の授業が終わった。
 本日の午後は空きコマなので、俺たちは帰宅することにした。
 俺たちは荷物をしまい、教室から出ようとした。

 すると、突然何かがぶつかってきた。

「うおっ!」

「いたた......。あ、燐華ちゃん! ......と彼氏さん! ぶつかってすみません!」

 ぶつかってきたのは夏鈴さんだった。

「いえ......。それより、どうしたんですか?」

「燐華ちゃん大丈夫かなって心配で心配で......」

「わ、私なら大丈夫だよ......」

 元気がない声で返事をする。

「一応今日は家で安静にしてもらおうと思ってますので、もう失礼しますね」

 俺は燐華さんのことを考えて、話をすぐに切り上げた。

「燐華ちゃんお大事にね?」

 夏鈴さんに対し、燐華さんは手を振った。


 それから、俺たちは電車に乗った。
 昼頃なので、比較的空いていたので座ることができた。

「あ、そうだ燐華さん。しばらくの間、俺の家に泊まってくれませんか?」

「え、いいけど......。どうして? 寂しいの?」

「いや違いますよ......」

 俺がそう返事をすると、少し落ち込んでしまった。

「......いや、少し寂しいですけど。急に体調が悪化したら心配ですし、酒飲みますし......。今日もどうせ飲もうとしてたんですよね?」

「うっ」

 明らかに図星である。

「ということで、今日は俺の家に泊まってください。着替えは美湖さんにお願いして持ってきてもらうので」

 美湖さんにあまり迷惑をかけるのは不本意だが、今回ばかりは頼らせてもらうことにした。

「......仕方ないなぁ。そんなに寂しいなら、泊まってあげるよ......」

 燐華さんは少し照れながら言う。

「そんなかわい子ぶっても酒はなしですよ?」

「......ケチ」

 燐華さんは不貞腐れてしまった。

「でも、なんか精神的に余裕そうですね。燐華さん」

「そう?」

 きょとんとした顔でそう返事をする燐華さん。

「だって、数日前に階段から落ちて入院して、しかもこれから夏鈴さんが心配して毎日来ると思いますよ? それだってのに、冗談を言う余裕もあって......」

「あぁ、そのことなんだけどね......。実は、上手くやれそうだなって思ったんだ」

「そうですか......?」

「ここ数日夏鈴ちゃんと話して、ちょっと無神経なところもある感じはするけど、基本的に優しいし......。まぁ、まだトラウマがあるから、ちゃんと接することはできないけど......」

「......ですよね」

「でも、この怪我がきっかけで、むしろ目標に近づけるんじゃないかって思ってるんだ」

 燐華さんの目標。
 過去に酷いいじめをしてきた相手と仲良くなること。

「怪我のおかげで心配してグイグイこないし、そのおかげで少しずつ慣れていけるんじゃないかって......」

「燐華さん......。すごいですね」

 俺は驚いた。
 夏鈴さんのせいで体調を崩し、怪我までした。
 それなのに、その怪我をチャンスと捉え、トラウマを乗り越えようとしているのだ。
 俺なんかには到底真似できない。

「燐華さん。前、私なんて弱っちいって言いましたよね?」

「え? 私そんなこと言ったっけ......? よく覚えてるね」

「燐華さんは弱くなんかありません。......とても強い人ですよ。俺なんかと比較にならないくらい」

「......嬉しいこと言ってくれるじゃん」

 突然燐華さんは顔を近づけ、俺の唇に触れた。
 タバコを禁じられているせいか、タバコの匂いは薄かったような気がした。

「ほめてくれたご褒美。普段はタバコと酒の臭いがキツイだろうから......ってあれ?」

 俺の鼓動は爆速になっていた。
 緊張で爆発してしまいそうだった。

「おーい? 志永くーん?」

 燐華さんが目の前で手を動かし、意識が戻る。

「と、突然そういうことするのはやめてください......!」

「はーい」

 燐華さんは少し嬉しそうな顔をしてそう返事をした。
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