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一章
6話 「今度こそ、君を」
しおりを挟むバイトが終わって家に帰り、店長から貰った賞味期限が近い売れ残ったお弁当を食べている時、智明からメッセージが来てる事に気付いた。
『龍…アクキー彩華とラフだった…クロエ…。』
というメッセージと、彩華とラフのアクキーが並んだ画像が画面に表示された。
アクキーか…そういえば僕も二つ買ったのに両方ともアクキーだったんだよな…。
A賞を出すには一体いくら使えばいいのやら…。
『どんまい…僕今から開封するからクロエ出たらラフと交換しよ?』
と送ってから、明人君にメッセージを送ろうとした途端、明人君からメッセージが送られて来た。
…わぁ、凄い偶然。
『連絡が遅れてしまってごめんなさい…(・ω・`)今日1日楽しかったです!また明日もお話しましょうね!おやすみなさい!(*´ω`*)…そういえば…アクキー、雪とカルマでした…アリス…(・ω・`)。』
…顔文字かわいいなぁ…。
『気にしないで!僕も楽しかったよ!また明日ね…!アクキー残念だったね…僕のアクキーからアリスが出ることを祈ってるよ!おやすみ!』
と送ってから、二つの箱を開封する。
「…あ、クロエとアリスだ。」
寝る前にシャワーを浴びていると、ふと朝のもみあげの子を思い出した。
…お礼言っといてください…か。
…あんなに一緒にいたのに…智明にお礼言うの忘れてたな…。
シャワーを止め、タオルで頭を拭きながら小さく「…明日伝えればいっか。」と呟く。
暗闇だ。
今回は、かろうじて自分の手が見えるくらいの。
…珍しいな、二日連続なんて。
あたりを見渡して女の子を探すと、いつもの女の子が、ボロボロのワンピースを着て床に倒れ込んでいた。
「…だ…大丈夫……!?」
女の子に近寄り、少しだけ大きな声で話しかけても何も反応がない。
…意識がないのかな。
両膝をつき、女の子の身体を少し起こすと
お腹のあたりから、じわりと赤黒い血が滲んでいた。
「…!!」
何故か分からないけど、直感で怪物のせいだと思った。
女の子の耳元で
「怪物のせい…?」と聞くと、少し目を開き、僕の顔を見てこう言った。
「…逃げて。」
その時、後ろから怪物の雄叫びが聞こえた。
振り向くと、いつものように黄色い瞳が闇に浮かんでいる。
そうか…あの怪物は女の子じゃなかったんだ…。
足元に布が散らばっていたのは…怪物が女の子を食べたからで…笑いながら怪物に近付いていたのは…僕を守ろう犠牲になってくれていたのかな…。
でも、心の何処かではいつも僕に助けを求めていたんだ。
いつもなら焦りもしないのに、今日は何故か、手が震え、足が鉛のように重く、身動きが取れない。
怖い、どうしてこんなに、怖いんだ。
僕に、守れる力があれば…僕に…力があれば良いのに…。
いつの間にか、怪物がすぐ近くまで迫っていて
僕には、息絶え絶えな彼女を抱きしめ、自らの身で守ることしか出来なかった。
次の日、朝の授業が終わり、学食に行こうとした時、智明が僕の前に立ち、
「なぁ龍、三人で学食行こうぜ?」
と、誘ってくれた。
…今日はちゃんと昨日の子の事言わなきゃ。
「いいよ!あ、そうだ智明。」
「?」
智明を見上げて、少しずつ思い出しながら説明する。
「昨日女の子とクラス表の前でお話してたんだけどさ、その時智明が人掻き分けてくれたおかげで女の子が通れたんだよ」
「おう。」
「そのお礼言ってくれって昨日言われてたんだけど忘れちゃってた。」
と説明すると、さっきの何倍も顔が明るくなり、嬉しそうに僕の頭をワシワシしながらこう言った。
「なんだよー!え?その子可愛かった~?やっべ~惚れさせちゃったかも!ちょっと見た目の特徴言ってくれよ!」
「やめてよ…えっとね…確か…僕からみて…左の…もみあげ?が短いボブの子!」
と言った途端、智明の顔がぐっと暗くなってしまった。
…どうしたんだろ。
少し気になって
「…?どうしたの?智明。」
と話しかけると、眉をピクッと上げ、いつも通りの笑顔で
「俺ロングが好みなんだけどなぁー!まぁいっか!今度見かけたら告白する!」
と言った。
…どうしたんだろう、智明。
明人君を誘ってから、学食に向かっていると、目の前で不良に絡まれてる女の子二人組を見つけた。
「なんだ?あれ…」
「…怖いですね。」
女の子二人組をよく見ると、一人は昨日クラス表の前で会った女の子だった。
あのボブとあのもみあげ…うん、間違いない。
もう一人は、髪の短い
「俺ちょっと止めてくるわ…待っててな。」
と、女の子の元へ向かう智明の肩を掴み、そっと首を横に振る。
「り…龍…?」
不思議そうに僕を見つめる智明の肩をポンポンと叩いてから
「僕が行く。」
僕が、その子たちの元へ向かう。
違う、会えるわけない。
こんなところで、違うに決まってる。
でも、もしそうなら
今度こそ、君を。
近付くと、不良の罵り声が聞こえた。
「テメェ、ガン飛ばしてんじゃねえぞ!!」と
そう叫ぶ不良の肩を、トントンと優しく叩く。
「あ!?なんだよ、誰だてめえ!」
振り向き、僕を罵る不良。
脳裏に怪物の瞳がちらつき、
目が、カッと熱くなるのを感じた。
「何、してんの?」
自分でも誰かわからないくらいの低い声で、自然と滑るように声が出た。
不良の肩をゆっくりと掴み、態とらしく溜息を吐くと、
「…ヒッ………!!」
不良が、僕の顔を見て大急ぎで走って逃げていった。
…僕の睨みがそんなに怖かったのかな?
僕って結構怖い顔出来るんだ…!
と思い、絡まれていた、ボブじゃない方の女の子を見ると
やっぱり、夢に出て来た女の子にそっくりだった。
…確かめなきゃ、この子が…本当に夢に出て来た子なのか…。
……でも、どうやって…?どうやって確かめればいい?
『僕の夢に出てくるよね?』
なんて聞いてどうなる?
困惑して終わりだろ。
でも確かめなきゃ、変だって思われても…確かめなきゃ…。
そう思い、乾いた喉を潤す為に口の中に溜まった唾液を飲み込むと、女の子が、ボソリと
「…目が…。」
と呟いた。
目…?
僕の目がどうしたんだろ…。
疑問に思いそっと顔を上げると、目の前の窓に、黄色く光る怪物の目が浮かんでいた。
その目をしばらく見て、やっと理解した。
「…僕の……目…?」
なんで僕の目が…なんで光って…。
嫌だ、なんで……。
怖い、何で目が光って…何で僕の目が…?
何の為に、怪物が何で僕の目を…いやだ…いやだ、いやだ…!!
恐怖で後退り、両目を隠すように手で覆うと、女の子が僕の手首をそっと掴み
「……いつも…ありがとう…。」
と呟いた。
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「ねえ…確か、幼馴染だよね?…昔から勇気がある人だったの…?」
と言いながら智明を見ると、
額に汗を浮かべ、焦ったような顔をしていた。
…?
「智明…?どうしたの?…智明?」
肩をトントンと叩くと、僕に気づき、
「あぁ、なんでもねえよ。」
と答えた。
…何かあったのかな?
なんて、お節介すぎるかな…。
なんて、本当馬鹿みたいだ
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