本当の主人公 リメイク版

正君

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四章

36話 君の事を、好きになってもいいかな」

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「晶ちゃんって何考えてるか分かんなくて怖いよね…。」

遠くから、こんな声が聞こえてきた。
それに同意する声や、私を笑う声も聞こえてきた。

そんな時、何かで情報を得たのか、私の家の事情を話す存在が現れて、一気にその場が静まり返るんだ。
それからみんな優しくなって、一切私の事を馬鹿にしなくなる。
私が怖いから。
ただでさえ怖い私が更に怖くなるから。

やっぱり、何日経っても、何年経っても
教室に入ると笑顔で「おはよう!」と出迎えるあいつらの事を信じられない。

何を考えてるか分からない理由になっているお前らには分かる筈も無いだろう。
笑顔で「おはよう!」と答えるこっちの気持ちも考えてくれ。

必死で皆に好かれようと、普通になろうと努力してるのに、それを全部無駄にするような事を言われて平気なわけがない。
それがあの人からすれば普通なのかもしれないけど、私にとっては普通じゃないから。
だから頑張ってるのに、それを壊そうとしないでほしい。
私の中身に干渉しようとしないで欲しい。
折角上部さえ良ければ生きてけるの世の中なのに中を知ろうとしないで欲しい。

こんなのを「いじめ」なんて言ったら、必ず
教師や親に大袈裟だって笑われる。
「誰もが経験する事だ」って言われる。

現に、そう言われた。
寧ろ、私がいじめた側だと言われた。

だから、これは抱え込むしか無いんだ。




「うちが何を考えてるかなんて…こっちが知りたいっての。」


何故か毎回、この瞬間は泣きそうになる。
本当は背なんて向けたくない、心から向き合いたい。
心から、君たちを愛したい。

なのに、自分で作り上げた自分がそれを妨害してくる。
大事にしてきた友達みんな嫌いになる。
守りたかったもの全部無くなる。
守ってくれたものみんな傷付く。
冷たいフリをして、腹の奥にマグマのように煮えたぎった憎悪を隠し持っている私が。
明るいフリをした、いろんな声色を使い分けて強いフリをしている私が。

自分を使い分けるのが上手いフリをしている私が、邪魔する。

晶が、私の中にある全部の晶が私の、晶の邪魔をする。


壁に左肩を預け、目尻に溜まった涙を拭い、溜息を吐く。

……こんな能力、コピーしなきゃよかった。

自分を使い分けようと、しなきゃ良かった。







……お父さん、私お母さんみたいには生きれないよ。

…生きたくないよ……。






「晶ちゃん、どうしたの?」

その時、背後から、優しい声が聞こえた。



振り向くと、心配そうにこちらを見る彩ちゃんが。

…馬鹿らしいけど、
どうせいつか嫌われるなら、どうせいつか無くなってしまうなら、もう、どうでもいいや。

彩ちゃんの方に身体を向け、くだらない疑問を投げかける。


「…うちって、いつも何考えてると思う…?」


すると、彼女は首を傾げ、にっこりと笑いながらこう答えた。

「質問に質問で返しちゃうけど…私はいつも何を考えてると思う?」



「……分からない。」
と答えると、また可愛らしくにっこりと笑ってこう答えた。

「私も!晶ちゃんが何を考えてるかなんて分かんないよ。」
「ふふ…そっか…。」

笑いたくないのに、勝手に口角が上がる。

あぁ、もう、頭ん中ぐっちゃぐちゃ。
ごめん、さやかちゃん、嘘ついて、ごめん。




その時、彩ちゃんがうちの頬をぎゅっと強くつねった。
「むっ…!!??」

「泣きながら笑わないの、どマゾだと思われちゃうよ!」
「ど、どマゾ…?」
「そう!どマゾ!!」

彼女が手を離し、ヒリヒリと痛む頬を撫でながら
「…じゃあ……どうすればいいんよ。」

と尋ねると、にっこりと笑いこう言った。


「好きな人を作れば、少しは心が純粋になれるんじゃない?」
 
「……好きな人?」

背中に、ぞくりと悪寒が走る。

あんな人達に想いを寄せたってうちが得する事なんか…

……………

…どうせ、あの子みたいに。



「……無理や、うちには…好きな人なんかできるわけない。」
頬を拭い、口角を上げて笑ってみる。


すると、目の前の彩ちゃんが、今のうちの倍くらい辛そうな顔で、下唇を噛んだ。

そんな彩ちゃんを、










心の底から、可愛いと思った。






勝手に口が開き、言葉が零れ落ちる。

「…な、なあ、彩ちゃん…あのさ…

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