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蛇足
自分らしさ0
しおりを挟む「龍?頼むから、乱暴にすんなよ?俺ら親友だろ…?」
「して欲しくないなら言う事聞いて、僕ら親友でしょ?」
「あぁやっぱ無理今日はやめる、また明日に…。」
「3…2…」
「だからやめろって!!!!」
30分。
ぴったり30分だ。
智明が僕を自分の家に呼んで、ピアスを開けてくれと頭を下げてから30分経った。
保冷剤も溶けて温くなったし、智明が号泣したせいで用意しておいたティッシュ箱も空っぽだ。
挙げ句の果てには僕の袖までビチョビチョに濡らして…。
『ねえ…もうすぐ暗くなるよ?早く開けないと始業式までに間に合わなくなるよ?』
なんて言ってみても智明が逆ギレし出すし…。
…仕方ない…最後の手だ。
門限まであともう少ししかないし…よし、やるしかない。
「…もし今日のうちに開けられなかったら…」
「あ…開けられなかったら何だよ…」
「…中二の時の智明の黒歴史新しいクラスメイト全員に教える」
「分かった!思い切ってやってくれ!!」
本当に単純だなぁ…まぁ、こういうところも好きなんだけど。
まぁ…勿論、友達としてね。
智明の右耳を、もしもの時の為に用意しておいた保冷剤でしっかり冷やし、しっかりと消毒してから、ピアッサーをそっと充てがう。
「…いくよ、覚悟出来た?」
「…あぁ、一思いにやってくれ。」
…よし、親友が覚悟してるんだ、僕も智明が付けた印に合わせて開けてあげなきゃ…。
「カウントダウンするよ…3…2…1…。」
0になるタイミングでピアッサーのボタンをぐっと押し込むと、「ガシャン!!」と大きな音がし、智明の首にグッと力が入った。
「智明…!すごいね!よく頑張ったね…!」
智明の頭をワシワシと撫でてからファーストピアスを入れると、とある事に気付いた。
……あぁ…。
「……智明、あのさ」
「な…何だ…?」
「…めっちゃズレちゃった…これ2個開けないと変に目立つ…」
「マジか…でも良いぞ今は一個だけで…」
「いっきまーす」
「ゔあ″あ″あ″あ″!!!」
「…鬼、人でなし。」
「…ごめんね、本当にごめん…何でも言うこと聞くから…。」
「許さない、今日限り俺らは親友じゃない、ただの知り合いだ。」
「智明…ごめんね、本当に…。」
最終的に、僕が何回もミスをしたおかげで、本当は右耳に一つ、左耳には軟骨と耳たぶの二つで…合計3つの予定だったのに…右耳には二つ、左耳には3つという、初めてのピアスにしては多すぎる数の穴を開けてしまった。
そのせいで智明が「セカンドピアスはこれをつけるんだ!」と意気込んでいたピアスを使わなきゃいけなくなって…。
「…智明、ごめんね。」
ごめん、流石に許せないよね。
「いや、いいよ。」
「いいよ!!??」
「むしろ勇気出たわ、これで俺マジ本気で高校デビューできる!」
なんか、えぇ……?
「そこは怒ってくんなきゃ…。」
「怒らねえよ、親友だし!むしろありがとな!龍!」
「えぇ…智明……。」
眉間に皺を寄せながら首を傾げてみると、智明はうざったいくらいの笑顔で笑いながら僕の肩を叩いた。
「わがまま言ったのは俺なんだし…それに」
「それに?」
「……この耳のおかげで、俺らしく、生きてける気がするよ。」
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