1 / 39
1話 エイプリルフール
しおりを挟む
午前7時のお風呂あがり。
はちみつの香りのする石鹸で念入りに洗った顔に、化粧水をなじませる。コットンに化粧水をつけて、顔の下から上へ優しくたたく。べたつきの少ない液体が優しく肌をまもってくれる。
乳液タイプの日焼け止めを指の上に出す。指の腹を使って、ぷるぷるした肌に日焼け止めを重ねた。
ここからは神経を使う。
パール大を目指して下地を出す。まずは、ほっぺたに塗る。その後にTゾーン。薄く、ていねいに、でも確実に。中指と薬指がいい仕事をしたようで喜んでいる。
ここまで10分ぐらい過ぎていた。
リキッドファンデーション、コンシーラー、フェイスパウダー。ほっぺにチーク。
アイシャドウを塗ったあと、アイライナーを引く。描くラインは目じりから3mmだけはみ出すぐらいに。
マスカラが肌についたりする失敗をしながら、出来上がりに納得したのは8時だった。
「しんどっ」
綺麗に整理されたメイクボックスに、散らかした道具を片付ける。
急がなくては。
クラシックな白いブラウスにパニエで柔らかい形を整えた黒いスカート。胸元にリボンをしばって出来上がり。
足が細く見えるように、デニール高めの黒いタイツ。念のために白い手袋もした。つやつやの長い黒髪と猫耳のついたキャスケットをかぶる。
足元だけは動きやすさが大事で、ハイカットのスニーカー。
家を出る前に何回も、何回も「大丈夫かな?」「変じゃないかな?」と鏡の自分にきいてみる。
「っふ、っふー」
玄関の前で鏡を見ながら、落ち着くために息をした。
重い玄関の扉をあけた。まぶしい日差しが目に染みる。
ゆっくりとした足取りで目的地に向かって歩いた。歩いて5分。ちかくのコンビニ。
いつも立ち読みしている週刊少年誌のために、コンビニへ向かう。
青い看板のコンビニは自動ドアを開けて歓迎してくれた。
店内ではラジオが流れている。
「今日はエイプリルフール。うそが許される日。友達にちょっとうそをついて、びっくりさせてあげましょう」
男性の低くてよく通る声は、そんなことを言っていた。エイプリルフールだけのジョーク商品の話になったあたりで、窓ちかくのラックから少年誌を手にとった。
読みはじめて思った。手袋はやっぱり失敗だった。白い手袋の親指に黒いインクがついてしまった。
それでも手袋はだいじなアイテムなので、外せない。なるべく汚れないように立ち読みを続けた。
棚に読み終わった雑誌を戻した。来週がはやくこいと思えるぐらい続きが楽しみだった。
海賊の漫画とヒーローの漫画の熱いシーンがすき。単行本は必ず買うと決めていた。
店内を回る。8時を過ぎた時間、ひとの出入りは多かった。
飲み物コーナーから牛乳と豆乳を持ってレジへ向かった。
2人の後ろに並んで、順番に空いたレジへ行く。男の人が静かに黙々とレジに商品を通していった。
「ポイントカードはありますか?」
「レシートはいりますか?」
このふたつの質問には、首を横に振ることで答えた。
コンビニの白い袋を手首にひっかけるようにして持つ。
ドキドキした心臓をなだめながら、ゆっくり家へと帰った。
玄関の扉を閉じる。天井を見上げて、息をついた。
「あれ、おかえりー」
洗面所から妹がひょっこり顔をだした。
飲みもの買ってきたよとコンビニの袋を持ち上げてみせる。
そんな様子に妹はくすくす笑いながら近づいてきた。
スポーツブランドのロゴのついたレギンス。キャミソールからは黒いスポーツブラが見えていた。
風呂あがりで、ぬれているピンク色の長い髪をバスタオルで叩きながら、歩いてくる。
「あははっ、しゃべっても大丈夫だよ。お兄ちゃん」
首を左右に振ってから、俺は言った。
「悪い。メイク道具、勝手に使った」
「いいよー。わぁ、また女装のメイクうまくなってる。そろそろお兄ちゃんのこと、お姉ちゃんってよばなきゃいけないかも。ウィッグとかお洋服の片づけやっとくし、お風呂はいってきたら? それともその恰好で1日いる? エイプリルフールだから許されるかな?」
猫のような目をまばたきながら、いじわるな妹がそんなことを言う。
「俺はただ、コンビニへいく間だけ美少女でありたいだけなんだ」
「うわぁ、変態じゃん。変態お兄ちゃん」
ジト目で口角を吊り上げながらドン引きしたように言われる。
「このやろ」
「きゃーっ、あははーっ」
バスタオルでピンクの髪を乾かすようにもみくちゃに動かす。つくった表情をやめて、白い歯を見せ、口をあけながら笑っていた。
はちみつの香りのする石鹸で念入りに洗った顔に、化粧水をなじませる。コットンに化粧水をつけて、顔の下から上へ優しくたたく。べたつきの少ない液体が優しく肌をまもってくれる。
乳液タイプの日焼け止めを指の上に出す。指の腹を使って、ぷるぷるした肌に日焼け止めを重ねた。
ここからは神経を使う。
パール大を目指して下地を出す。まずは、ほっぺたに塗る。その後にTゾーン。薄く、ていねいに、でも確実に。中指と薬指がいい仕事をしたようで喜んでいる。
ここまで10分ぐらい過ぎていた。
リキッドファンデーション、コンシーラー、フェイスパウダー。ほっぺにチーク。
アイシャドウを塗ったあと、アイライナーを引く。描くラインは目じりから3mmだけはみ出すぐらいに。
マスカラが肌についたりする失敗をしながら、出来上がりに納得したのは8時だった。
「しんどっ」
綺麗に整理されたメイクボックスに、散らかした道具を片付ける。
急がなくては。
クラシックな白いブラウスにパニエで柔らかい形を整えた黒いスカート。胸元にリボンをしばって出来上がり。
足が細く見えるように、デニール高めの黒いタイツ。念のために白い手袋もした。つやつやの長い黒髪と猫耳のついたキャスケットをかぶる。
足元だけは動きやすさが大事で、ハイカットのスニーカー。
家を出る前に何回も、何回も「大丈夫かな?」「変じゃないかな?」と鏡の自分にきいてみる。
「っふ、っふー」
玄関の前で鏡を見ながら、落ち着くために息をした。
重い玄関の扉をあけた。まぶしい日差しが目に染みる。
ゆっくりとした足取りで目的地に向かって歩いた。歩いて5分。ちかくのコンビニ。
いつも立ち読みしている週刊少年誌のために、コンビニへ向かう。
青い看板のコンビニは自動ドアを開けて歓迎してくれた。
店内ではラジオが流れている。
「今日はエイプリルフール。うそが許される日。友達にちょっとうそをついて、びっくりさせてあげましょう」
男性の低くてよく通る声は、そんなことを言っていた。エイプリルフールだけのジョーク商品の話になったあたりで、窓ちかくのラックから少年誌を手にとった。
読みはじめて思った。手袋はやっぱり失敗だった。白い手袋の親指に黒いインクがついてしまった。
それでも手袋はだいじなアイテムなので、外せない。なるべく汚れないように立ち読みを続けた。
棚に読み終わった雑誌を戻した。来週がはやくこいと思えるぐらい続きが楽しみだった。
海賊の漫画とヒーローの漫画の熱いシーンがすき。単行本は必ず買うと決めていた。
店内を回る。8時を過ぎた時間、ひとの出入りは多かった。
飲み物コーナーから牛乳と豆乳を持ってレジへ向かった。
2人の後ろに並んで、順番に空いたレジへ行く。男の人が静かに黙々とレジに商品を通していった。
「ポイントカードはありますか?」
「レシートはいりますか?」
このふたつの質問には、首を横に振ることで答えた。
コンビニの白い袋を手首にひっかけるようにして持つ。
ドキドキした心臓をなだめながら、ゆっくり家へと帰った。
玄関の扉を閉じる。天井を見上げて、息をついた。
「あれ、おかえりー」
洗面所から妹がひょっこり顔をだした。
飲みもの買ってきたよとコンビニの袋を持ち上げてみせる。
そんな様子に妹はくすくす笑いながら近づいてきた。
スポーツブランドのロゴのついたレギンス。キャミソールからは黒いスポーツブラが見えていた。
風呂あがりで、ぬれているピンク色の長い髪をバスタオルで叩きながら、歩いてくる。
「あははっ、しゃべっても大丈夫だよ。お兄ちゃん」
首を左右に振ってから、俺は言った。
「悪い。メイク道具、勝手に使った」
「いいよー。わぁ、また女装のメイクうまくなってる。そろそろお兄ちゃんのこと、お姉ちゃんってよばなきゃいけないかも。ウィッグとかお洋服の片づけやっとくし、お風呂はいってきたら? それともその恰好で1日いる? エイプリルフールだから許されるかな?」
猫のような目をまばたきながら、いじわるな妹がそんなことを言う。
「俺はただ、コンビニへいく間だけ美少女でありたいだけなんだ」
「うわぁ、変態じゃん。変態お兄ちゃん」
ジト目で口角を吊り上げながらドン引きしたように言われる。
「このやろ」
「きゃーっ、あははーっ」
バスタオルでピンクの髪を乾かすようにもみくちゃに動かす。つくった表情をやめて、白い歯を見せ、口をあけながら笑っていた。
0
あなたにおすすめの小説
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる