ネットの友達に会いに行ったら、間違ってべつの美少女と仲良くなった俺のラブコメ

扇 多門丸

文字の大きさ
15 / 39

15話 転校生と、いつものクラス

しおりを挟む
 2階にある職員室では先生たちがパソコンをつけたり、ネクタイをしめたりしていた。
 職員室まで案内すると美月は「ありがと。またあとでね」そう言って手を振った後、職員室にあいさつをして入って行った。なぜか教師のほうが美月より緊張して対応していたのが面白かった。
 さて、俺も自分の教室へ向かうか。
 そう思ったとき、肩を叩かれた。
「よし、でかした天宮。お前の好きな山川出版の教科書たちだぞー。うれしいだろ。これを運ぶ権利をやろう。あそこに男好きする容姿のお嬢さんがいるだろう? あの転校生の教科書だ。2‐Aまで運んでくれ」
「ッげぇ、オニユリ。面倒くせえ」
「教師の顔を見てッげぇとは何事か。頑張れ天宮、男を上げるチャンスだ。狙っていけ」
「あいつとのチャンスなんか別にいらないんだが」
「なんだお前、あんな高嶺の花でもストライクゾーンに入らんのか?」
「いや、そういうわけじゃなくて」
 職員室の扉が勢いよく開けられる。出てきたのは美月だった。
「ねえ、聞いてよ、しぐれっ。転校生ってね、てっきり先生と一緒に教室に入って、緊張しながらはじめましてー、っていうお約束みたいなのあるじゃない。あれ、べつにいらないんだって。もうそのままクラス行ってもらえれば良いしって言われたの。って、あれ?その教科書なに?」
「おまえのだってよ。運んでやるから教室いくぞ」
「かっこいーっ。ありがとーっ、教室いくー」
 その様子を見た俺のクラスの担任はおっさんみたいな笑みを浮かべていた。
「ほほう。天宮、お前案外やりおるな」
「ただの友達だ、友達」
「無償の奉仕は友情というわけか。健気なものだ」
「勘違いすんな、鬼百合」
「わかった、わかった。そら、皇樹を待たせるな。さっさと行け」
 肩を押されて俺は歩きはじめる。あいつ勘違いしやがって。
 上機嫌な美月がとなりを歩く。
「しぐれも2-A?」
「いや、俺は2-E。普通科の変なクラス」
「えーっ。一緒なクラスじゃないの? クラス変更ってできないのかしら」
「2-Eはやめておいたほうがいいと思う。昨日の授業がいきなりマラソン大会になってたり、個別指導になったりするぐらい変なクラスと担任だから」
「なにそれー。面白そうなクラスだなと思うけど。わたし、なんの相談も無く特進にいれられるのは不満だわ。勉強なんて、特進じゃなくてもできるのに」
「学力相応ってやつだろ」
「テストでわざと平均点とってやるんだから。そうすれば2-Eにいけるかしら」
「わざと平均点を取ったうえで授業の半分をサボって職員室に呼び出し食らい続ければ2-Eにいけるだろうな」
「特進より2-Eのほうが難易度高くない……?」
「泣けてくるから、やめてくれ」
 ちょうど話題の2-Eの教室の前を通った。
「っきゃ!?」
 美月が思わず悲鳴を上げていた。俺もあげたい。あいつと友人でなかったら。
 教室の扉の前で、セブンが俺をじっと見つめていた。
思わず他人のふりをしたくなる恰好だった。なぜか上半身は裸で下半身はパンツだった。そのピンク色のパンツ、どこで買ったんだよ。
「シグレ、頼みがあるんだ」
「とりあえず他人のフリをしてくれ。そこからだ」
「そこいく見知らぬ男よ、哀れなオレの頼みを聞いてくれはしないか」
「どうした変質者?」
「100円貸してくれ。朝からクラスの奴らとポーカーやってたんだけどよ。最初調子良かったのに、負け続けて制服取られたから取り返したいんだ。頼むッ、シグレッ。このままだと、オレは一週間、あいつらに昼飯おごり続けなきゃいけなくなっちまうんだ」
「300円やる。今日の昼飯、俺にだけ奢れ」
「ありがてぇーーーッ」
 セブンは俺がサイフから出した300円を両手で受け取り、大事に握ってクラスの輪に飛び込んでいった。なんだか大盛り上がりしているようだった。
「ちょっと、もうっ、息ができないわ。ふふふっ、あはははっ!」
「なんでクラスの奴らでポーカーやってんのに制服までむしり取るほど本気なんだよ、あいつら」
「とってもユニークなお友達ね、うらやましいわ」
 2-Eのクラスで歓声と悲鳴があがった。あまりに大きすぎるそれは2-Aの教室の前にいる俺たちにも聞こえてきた。
「もうやだ、おうちかえる。あのクラス恥ずかしい」
「よしよし、しぐれは良い子。しぐれは良い子」
 背伸びして頭をなでてくれる美月がいなければこのまま帰宅してしまいそうだった。
「とりあえずここ2-A。オイ、高久。転校生の席どこだよ」
 近くにいて名前を知っているやつに声をかけた。
「あ、天宮、そ、そこだよ」
「ありがとう」
 俺の名前を呼ぶと、クラスが静まり返る。相変わらず居心地の悪いクラスだと思った。
 美月の席に教科書を置いた。
 この変な雰囲気に美月は戸惑っているようだった。
 俺は美月になにも声をかけず、右手で手を上げてすまんと意思表示して教室を出た。
 こんな空気なるなら来るべきじゃなかったと後悔しながら。
 頭を抱えながら自分のクラスに戻った。
 とんでもないものを見た。
 頭を抱えて膝から崩れ落ちそうになった。
「シッグレー、シグレ、シグレー、チュッチュー」
「セブン、やめろ汚ねえ。キスしてくんなバカ。一体なにがあったんだよ。お前と俺以外、服着てないじゃないか」
 なぜかセブンは制服を着ていた。かわりにほかのクラスメイト全員がパンツ一枚になっていた。男の肌色と、色とりどりのパンツが目に入って来てこの世の地獄かと思った。
 何が起こってるかさっぱりわからない。
「時雨ちゃん、朝からなにやってんのー? ほんとに朝から何やってんだお前らーーーー」
「……ホスト」
「ああ、時雨ちゃん。どうやらまともなのは俺たちだけらしい」
「こんな汚い現実、見たくなかったよ」
「セブン、これどったのよ?」
「聞いてくれよ。ロイヤルストレートフラッシュなんて、はじめてみたぜ」
「オッケー、わかったセブン。いますぐ全員に制服を返そっか」
「ホスト、それは違う。オレは制服までとらないって言ったんだ。あいつらがそれじゃ筋が通らないって脱いだんだ」
「わかったセブン。300円返せ。それと、全員の制服は俺がもらう。いいな?」
「いいぜ、シグレ。制服なんか欲しかったのか?」
「お前らおれに貸しだ。制服返してやるから、俺が困ったら助けてくれ」
「ありがてえ」
「助かったぜ天宮」
「さんきゅーな」
 そういうとセブンの席近くに散らばってる制服を拾い始めた。それは俺のだバカ。ちげーよ、俺のだよ、というような怒声が飛び交った。
「安売りの洋服漁るマダムみたいな光景じゃん」
 ホストが呆れながらそう言っていた。
「いやー、危なかったわ。あやうく毎日こいつらに昼飯たかられるとこだった。ひとり一回昼飯奢ってもらえるから、しばらく生きていけそーだぜ」
「おまえもギリギリだったなセブン」
「こういうどん底から勝つのがやめられねーんだよ」
 そう言ってセブンはにこやかに笑っていた。さっきまで裸だったのがうそのようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...