ネットの友達に会いに行ったら、間違ってべつの美少女と仲良くなった俺のラブコメ

扇 多門丸

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25話 いじめの内容と生徒会長

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「もおおお~~~~っっ」
 食堂で昼ごはんを食った後、美月が叫んだ。頭を振りながらイヤそうに上を向いていた。
 放送で職員室に出頭するよう美月に声がかかった。
 花恋と雷堂は昼から仕事らしく、電車で移動するため駅へいった。夜は遅くなるとのことで、夕飯をどこか食べに行こうと美月と話していたところ、呼び出しのアナウンスがかかるものだから、美月が怒っていた。
「せっかく、しぐれと帰ろうと思ったのにっ」
「なら、待ってるぞ。普通科の音楽室ってわかるか? そこで勉強してるから終わったら連絡するか来てくれればいい。たぶんピアノ弾いてるやつもいると思うけど」
「えっ、いいの? やった、終わったら行くから、いっしょに帰りましょう」
 そう言って美月と職員室まで来て、美月と別れて職員室を通り過ぎる。
 ガラスの壁のせいで、職員室の中で誰がなにをしているかはっきりわかるようになっている。九鬼先生はカップラーメンのお湯を捨てていた。あの後ろ姿みると、教師もただの人間なんだと安心する。ただ、慌ただしく職員室の固定電話が鳴り響いている。九鬼先生も走って電話に出ていた。
 生徒会室の前までくる。教室の電気はついている。扉に鍵もかかっていないので、こっそり開けてみる。
「こんにちは。生徒会になにか用ですか?」
「用はないけど来ちゃいました」
「はっ?」
 きょとんとした顔の生徒会長を見つめる。しばらく俺の顔をまじまじと見つめられる。
 幼馴染の目を欺けるなんて、美月のメイクがすごいのかもしれない。
「いや、俺。しぐれ」
「相変わらずキミはバカですね?」
「笑いながら言われても説得力ないよ」
「いえ、素直に感心しているんですよ。よくもそこまで性癖をこじらせたものだと」
「俺が好き好んで女装してると勘違いしてないか?」
「ち、違うんですかっ?」
「そんなまさか、みたいな返事やめてくれる?」
「ちなみにそれ、新手のイジメではないですよね?」
「ちがうちがう。イジメられてまで学校にくる理由ないから。そんときは高卒の認定試験受けるし」
「カワイイ恰好して、本当に可愛げのない子ですね」
 銀髪を揺らしながら真夜姉は笑う。
 生徒会長は自分の座っているとなりの席のイスを引いて、自分は席を立った。ちかくにあるポットからマグカップにお湯を入れる。
「今日は砂糖、入れます?」
「甘いのがいいな。2つ」
「はーい、お砂糖と愛情が入りました。まぜまぜして、ふーふーします?」
「自分でやるよ」
「そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。では、なでなでして差し上げましょうか? まあ、了承されなくても勝手に撫でるんですけど」
「いいけど、今日ウィッグだから」
「あら、ウィッグぐらいなおせますよ。だって、お姉ちゃんウィッグですもん」
「ウソっ?」
「はい、うそです」
 にこやかにうそですと言い切る真夜姉。俺は黙ってコーヒーに口を付けた。
 ぽむぽむと頭を触られる。
「弟くんは毎日学校に来て、偉いですね。しかも、ちゃんと毎日顔を見せてくれてお姉ちゃんうれしいです。ちなみに今日、学内で2年の男子生徒がスカートを履いてるらしいんですけど、なにかしってます? はじめ聞いたとき、なんの社会運動なんでしょうかって悩んだのですけど、よくよく聞いたらピンクシャツデー運動みたいな意思表示だったらしいですね」
「それ俺のせいだから」
「でしょうね。ですけど、それについては好意的です。イジメ、ダメ絶対ってクラスが声をあげたようじゃないですか」
「断言するけど、そんな深い意味はない」
「くすくす。かもしれませんね」
 真夜姉は柔らかい態度をとったまま言った。
「ご存じでしたか? 生徒会に所属してる2年の高久くん、イジメ問題を起こしたそうですよ」
 携帯の画面を見せてきた。見慣れたSNSのスクリーンショットのようだった。チャットのグループ部屋での会話内容が画像になって、見られるようになっている。
「転校生を無視し続けたら、何日で来なくなると思う?」
 高久の名前で、そんなコメントが書かれていた。
「グループは8人。1クラス30人のなかの8人が、この心無い一言をクラスで話題にしただけで空気がつくられたそうです。ちなみにこの情報、誰でもアクセスできるSNSで拡散されてしまったそうです。すごいですよね、これで学校名も個人も特定できるらしいですよ。お姉ちゃん、こういうの詳しくないので、ただただ怖いです」
「それで職員室が忙しそうだったり、2-Aの奴らがすごい静かだったのか。今日あったことなのに、真夜姉よくしってるな」
「なぜか、学内の皆さんが教えてくれるんですよ。我一番にと意気込んで学内で変なことがあれば教えてくれるんです」
「親衛隊みたいなのいるんだな。単純に、それきっかけに真夜姉と話したいとかじゃねーの」
「うれしいことなのですけれど。おかげで耳年増になってしまいました。どなたか男女の経験させてくれる方、いないですかね。恋に恋しすぎてお勉強どころじゃないんですけれど。ねえ、弟くん?」
「ちょっと今、女なんでわかんないです」
「お嬢ちゃん、女の子に興味ないですか?」
 麗しの生徒会長が、よだれをたらしそうなイヤらしい表情を浮かべて言った。
「それ他の奴に言ったらマジで炎上もんだからな?」
「そんな隙、見せるわけないじゃないですか。好きなのは弟くんだけですよ。だって兄弟愛って禁断の愛じゃないですか」
「だれかこの人にふつうの恋愛を教えてあげてくれない?」
「恋愛にふつうなんてないんですよ。ソースは2年のサッカー部のマネージャー。好きな幼馴染を応援するためにサッカー部のマネージャーになったそうですけど、先輩に無理やり誘われてシてしまったそうです。一度強要されると2回目も断れずそのままズルズルと……デートしたら好きになってしまったそうですよ」
「言い方エロくない? あれ、なんかそんな話、最近聞いた覚えが……山田、あいつ」
 ホストがいっていたのを思い出した。
『山田は好きだった幼馴染がサッカー部のマネージャーになってくれたけど、サッカー部の先輩とくっついたトラウマを持つから』
 あいつ、ちゃんと両想いだったんじゃないか。惜しいことを。
「このエピソードから、思うんです。略奪愛って素敵だなって。だから、弟くん、約束してほしいんです。だれか女の子のことを好きになったら教えてくださいね?」
「あっ、う、うん」
「ピーンと来ました、閃きました。で、だれが好きなんですか?だれのことを忘れさせて差し上げましょうか? ちょっと前からエッチな男の顔をしているなって思ってたんですよ。それとも誰にリビドーを受け止めてもらいたいかって聞いたほうが答えやすいですか?」
「とりあえず落ち着いてもらっていいか?」
「すみません。取り乱しました。ちなみに女装してることって関係あります? もしかして相手が男の方で、女装しているときだけこっそり会ってるのをクラスメイトみんな応援してるとかそういう尊いエピソードありませんか? あと、ホストくんとセブンくんどちらですか?」
 真夜姉は再び暴走した。
「再燃はやすぎるだろ?」
「恋は常に不完全燃焼なんだよって意味ですか」
「生徒会長、落ち着け。さっきから話がかみ合わない気がする」
「だいじょうぶです。わかってます」
「だめだこれ。ぜんぜんわかってないタイプの返事だ」
「弟くんがXY染色体をぶちこみたい相手ができたって話でしたよね?」
「しっかり聞きたいこと聞いてきたな? しかも言葉が斜め上だ!」
「お姉ちゃんもXXなので弟君とXXXしたいって思うことはあるんですよ?」
 XXXをわざとらしくキスキスキスと囁くように言ってくる。
「んーーっ」
 そう言って目を閉じて、あごを上げてくる。
 無防備すぎるその顔に、俺はどうしていいのかわかんなくなった。
「そういうのは好きな人とだろ、真夜姉」
「弟君の純情すぎるところ、好きですよ。それを言うってことは、弟くんの好きな人はお姉ちゃんではないんですね。ばっちり燃えてきました」
 真夜姉は腕まくりをしてガッツポーズをしている。
「真夜姉の前向きなところを見ると、いつも敵わないと思うよ」
「それは違いますよ。弟くんにいい所を見せたくて前向きになってるんです」
「そういいながら俺をからかうのは、どうなんだ?」
「それはお姉ちゃんの特権であり趣味です。そろそろ行くんでしょう、音楽室」
「美月も待たなきゃいけないし、行って来るわ」
「くすくす。困ったら、どうぞ生徒会室へ」
「たまに暴走する生徒会長に困ってるんですけど」
「黙秘します」
 指を唇に当てられ、ウィンクされる。
 マグカップを洗ってから、俺は生徒会室を出て音楽室へと向かった。生徒会室を出るときには、真夜姉の鼻歌が聞こえてきていた。
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