51 / 370
森の手直し
しおりを挟む
広場から充分離れた場所に森を作ったつもりでいたけれど、実際に森になっていく様を見ていると意外と距離が近かったことに気付く。どうしたものかと悩んでいるとじいやに声をかけられた。
「どうされました?何か不具合でも?」
「うん……広場から距離をとったつもりだったけど、近いなぁって思って。私ね、こんな風に想像してたの」
じいやの他にも民が周りに集う。小石を拾い地面に『回』の字を書き外側の『ロ』と内側の『ロ』の部分に木を植え、外側と内側の間を道路として使用したら良いと思っていたと伝える。けれどこれを書いて説明しているうちにまた違う思いが沸き起こる。いつかジェイソンさんやリトールの町の人、そして国境が完成したらテックノン王国のニコライさんたちを招待したい。そんな思いに駆られる。
だけどこの土地の不思議な力をおいそれと言うわけには行かない。なので森と共に外壁も建て、街に入るとヒーズル王国民以外は畑の方に行けないように出来ないかと呟く。
「ふむ……要塞のようにしたいのですかな?」
「うん……万が一シャイアーク国に何かされたら……って不安もあって……」
「要塞であれば、私がシャイアーク国の城にて指導していた頃の記憶がありますぞ。森の民とは全く違う建築に興味を示しまして、よく観察をしておりました」
「……それに森の回廊を組み合わせたらどうかしら?あの山からこの付近までは真っすぐの道だけど、要塞が近くなったら森の中を曲がりくねるとか……」
山から今いる場所まで指で示す。そしてジグザグに指を動かした。
「ふーむ……そうなると私たちの移動も困難になりますぞ?まずは森を増やしてみてはいかがでしょう?森の中に道を作るのは私たちにとっては難しくありませんし」
それもそうかと頷く。まずは森を広げるべきか。今出来ている小さな森をどうするか悩んだけれど、もし要塞を作るなら壁の中に緑が無いのは寂しいとの意見をもらい、これはこのまま残してさらに北側に新たな森を作ることに決定した。
広場から結構離れた場所に何人も集結し作業を開始する。前回一緒に森作りをしたヒイラギと私とでチームを分けた。それぞれが少し離れた場所で作業開始だ。参加してくれた民たちは久しぶりの新鮮な土の感触や香りを喜び、汚れるのも構わず楽しそうに作業をしてくれる。
今回は前回よりもかなりの土と苗木を採取してきたおかげで、森のベッドがたくさん出来た。苗木の中に日本で言う『ヤマイモ』とか『自然薯』と呼ばれる、森の民たちには『モリノイモ』と呼ばれるツル性のイモもあり、それも丁寧に植え付けていく。私は完成した森のベッドに、拾ってきたたくさんのドングーリを埋める。これも芽が出たら新たな森の一部になるだろう。
「あれ?そうだ。ナズナさーん!」
当然ヒイラギチームに入っているヒイラギの奥さんのナズナさんを呼びながら近くに走り寄る。
「どうしたの?」
「あのね、香草を採取したんでしょ?」
「あ、忘れてた!」
ナズナさんは作業に夢中ですっかり忘れていたようで目を丸くしている。
「やっぱり!それでね、この小さな森は成長するのに数日かかるから、もう出来ている森に植えたらどうかしら?お料理に使ったりするなら近いほうがいいわよね?」
「そうね。じゃあ私たちは香草を植えましょうか」
まだ続く森作りを男性陣に任せ、私とナズナさん、他の女性陣は最初に作った森へと移動する。荷車から麻袋を降ろし中を見て驚く。確かに香草だらけだけど、圧倒的に日本のあちこちで見ることができるフキの数が多い。さらに別の麻袋を開けて度肝を抜かれた。無理やりギュウギュウに押し込まれたそれはフキの中でも大型の『秋田フキ』や『ラワンフキ』と呼ばれるあれが一株だけ、よく茎が折れなかったなと思うほど見事に押し込まれていた。
「フキばっかり!」
驚いて声を上げる私にナズナさんは涼しい顔をして言う。
「私たちは『フゥキ』って呼んでたのよ」
「いや、美味しいけどもみんなこれが好きなの?」
山に行けば小さなフキは取り放題だったので美樹の家では定番の山菜だった。あの独特の風味は油炒めや煮物にしても美味しい。だけどナズナさんは予想の斜め上を行く答えをくれた。
「うん。食べるのも好きだけど、葉っぱでお尻を拭くのよ。もう固いトウモロコーンの葉っぱはイヤなの!」
女性陣を見ると全員が真顔で頷いている。確かに『フキ』の語源の一つに尻拭きから転じたと言われるものもあるけれど。さすがの美樹ですら葉っぱでお尻を拭いたことはないので、実は今私も使い心地について興味津々だ。
フキことフゥキは地下茎を伸ばして繁殖するので、麻袋の中に根っこと地下茎を上手く丸めて入れていた。それを取り出し植えていく。そして香草も少しずつまとめて植えていく。前回の土の中に種があったのか、自然と生えている香草もあってそれを見つけると嬉しさがこみ上げる。
「……香草が上手く増えたら畑に植えられないかしら?」
「それはいい考えだわ!」
私の提案にお料理好きの女性陣は嬉しそうにはしゃいだ。
その後作業を続けていた私たちのところに様子を見に来たじいやはフゥキを見て「尻が!尻拭きが!」と誰よりも泣いて喜んでいた。もしかして痔なのかしら……と失礼なことを考えた私だった。
「どうされました?何か不具合でも?」
「うん……広場から距離をとったつもりだったけど、近いなぁって思って。私ね、こんな風に想像してたの」
じいやの他にも民が周りに集う。小石を拾い地面に『回』の字を書き外側の『ロ』と内側の『ロ』の部分に木を植え、外側と内側の間を道路として使用したら良いと思っていたと伝える。けれどこれを書いて説明しているうちにまた違う思いが沸き起こる。いつかジェイソンさんやリトールの町の人、そして国境が完成したらテックノン王国のニコライさんたちを招待したい。そんな思いに駆られる。
だけどこの土地の不思議な力をおいそれと言うわけには行かない。なので森と共に外壁も建て、街に入るとヒーズル王国民以外は畑の方に行けないように出来ないかと呟く。
「ふむ……要塞のようにしたいのですかな?」
「うん……万が一シャイアーク国に何かされたら……って不安もあって……」
「要塞であれば、私がシャイアーク国の城にて指導していた頃の記憶がありますぞ。森の民とは全く違う建築に興味を示しまして、よく観察をしておりました」
「……それに森の回廊を組み合わせたらどうかしら?あの山からこの付近までは真っすぐの道だけど、要塞が近くなったら森の中を曲がりくねるとか……」
山から今いる場所まで指で示す。そしてジグザグに指を動かした。
「ふーむ……そうなると私たちの移動も困難になりますぞ?まずは森を増やしてみてはいかがでしょう?森の中に道を作るのは私たちにとっては難しくありませんし」
それもそうかと頷く。まずは森を広げるべきか。今出来ている小さな森をどうするか悩んだけれど、もし要塞を作るなら壁の中に緑が無いのは寂しいとの意見をもらい、これはこのまま残してさらに北側に新たな森を作ることに決定した。
広場から結構離れた場所に何人も集結し作業を開始する。前回一緒に森作りをしたヒイラギと私とでチームを分けた。それぞれが少し離れた場所で作業開始だ。参加してくれた民たちは久しぶりの新鮮な土の感触や香りを喜び、汚れるのも構わず楽しそうに作業をしてくれる。
今回は前回よりもかなりの土と苗木を採取してきたおかげで、森のベッドがたくさん出来た。苗木の中に日本で言う『ヤマイモ』とか『自然薯』と呼ばれる、森の民たちには『モリノイモ』と呼ばれるツル性のイモもあり、それも丁寧に植え付けていく。私は完成した森のベッドに、拾ってきたたくさんのドングーリを埋める。これも芽が出たら新たな森の一部になるだろう。
「あれ?そうだ。ナズナさーん!」
当然ヒイラギチームに入っているヒイラギの奥さんのナズナさんを呼びながら近くに走り寄る。
「どうしたの?」
「あのね、香草を採取したんでしょ?」
「あ、忘れてた!」
ナズナさんは作業に夢中ですっかり忘れていたようで目を丸くしている。
「やっぱり!それでね、この小さな森は成長するのに数日かかるから、もう出来ている森に植えたらどうかしら?お料理に使ったりするなら近いほうがいいわよね?」
「そうね。じゃあ私たちは香草を植えましょうか」
まだ続く森作りを男性陣に任せ、私とナズナさん、他の女性陣は最初に作った森へと移動する。荷車から麻袋を降ろし中を見て驚く。確かに香草だらけだけど、圧倒的に日本のあちこちで見ることができるフキの数が多い。さらに別の麻袋を開けて度肝を抜かれた。無理やりギュウギュウに押し込まれたそれはフキの中でも大型の『秋田フキ』や『ラワンフキ』と呼ばれるあれが一株だけ、よく茎が折れなかったなと思うほど見事に押し込まれていた。
「フキばっかり!」
驚いて声を上げる私にナズナさんは涼しい顔をして言う。
「私たちは『フゥキ』って呼んでたのよ」
「いや、美味しいけどもみんなこれが好きなの?」
山に行けば小さなフキは取り放題だったので美樹の家では定番の山菜だった。あの独特の風味は油炒めや煮物にしても美味しい。だけどナズナさんは予想の斜め上を行く答えをくれた。
「うん。食べるのも好きだけど、葉っぱでお尻を拭くのよ。もう固いトウモロコーンの葉っぱはイヤなの!」
女性陣を見ると全員が真顔で頷いている。確かに『フキ』の語源の一つに尻拭きから転じたと言われるものもあるけれど。さすがの美樹ですら葉っぱでお尻を拭いたことはないので、実は今私も使い心地について興味津々だ。
フキことフゥキは地下茎を伸ばして繁殖するので、麻袋の中に根っこと地下茎を上手く丸めて入れていた。それを取り出し植えていく。そして香草も少しずつまとめて植えていく。前回の土の中に種があったのか、自然と生えている香草もあってそれを見つけると嬉しさがこみ上げる。
「……香草が上手く増えたら畑に植えられないかしら?」
「それはいい考えだわ!」
私の提案にお料理好きの女性陣は嬉しそうにはしゃいだ。
その後作業を続けていた私たちのところに様子を見に来たじいやはフゥキを見て「尻が!尻拭きが!」と誰よりも泣いて喜んでいた。もしかして痔なのかしら……と失礼なことを考えた私だった。
97
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる