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変化するヒーズル王国
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いつものように王国内の何もない場所で夜を過ごし、朝になると王国に向けて歩き出す。目印がないから何とも言えないけれど、多分だいたい同じ場所で毎回夜を過ごしていると思うので、いっそのことここに町を作りたいとぼんやりと思った。だとしてもだいぶ先の話だけれど。
いつも王国の北の山沿いを歩き、デーツの木を目印にして王国に戻っていたじいやは驚いていた。ううん、じいやだけじゃない。私たちは口をあんぐりと開け、歩む足も止めてしまった。
目印のデーツの木が見えない。デーツの木が見えない程に、私たちとデーツの木との間に小さな森が出来ていた。何故かは分からないけど私は涙をこぼし、みんなも涙目になりながらいつもの広場を目指した。
「みんなー!ただいまー!」
広場に近くなった頃、森に向かって大声で叫ぶと木々の間からお父様がこちらに向かって走って来る。その顔はまるで少年のように満面の笑顔だ。
「みんな無事に帰ってきたか!見てくれ!この森を!」
お父様は私を唐突に抱っこしクルクルと回る。回る視界の中にナーの花も見えたが、こちらも猛烈な勢いで繁殖し真っ黄色の空間が見える。そして足元ではクローバーが赤い大地を覆い、ほんの数日であの殺風景だった砂だけの地表はクローバーの葉と花で緑と白のコントラストを生み出していた。
「ぐすっ……お父様……森が……緑が……」
「カレン!お前は本当に救世主だ!みんなも広場へ!」
お父様に抱っこというよりは抱き締められながら広場に向かう。荷車を引くじいやたちも足早に広場に向かう。
「おかえりなさい!」
「カレン様!」
「みんな無事で良かった!」
たくさんの言葉に迎えられ広場に到着すると、動ける人が増えたのか前よりも広場に人が集まっている。
「ただい……ま」
民の後ろを見て驚いた。数日のうちに立派な畑が増えて広がっていた。その畑の手前にスイレンがおり、しゃがんで土の様子を見ているようだった。
「あ、カレン!戻って来たんだね!おかえり!」
スイレンはいつもの天使の笑みでこちらに走って来る。
「カレンなんで泣いてるの?見てよ!カレンが最初に教えてくれたすき込みの畑なんだけどね、土が良い感じになっていたから試しにトウモロコーンを植えてみたの。ちゃんと育ったよ!僕ね、畑の土の良し悪しが分かってきた!」
ドヤ顔のスイレンを見てようやく私は笑った。
「ナーは水をやってたら勝手に増えちゃったし、クローバー?とかいう草は何もしてないのにどんどん増えちゃった」
さすがは繁殖力の高い植物だけある。
「カレンが旅立つ前に言っていた森の再生作業も進んでいるぞ。やはり赤い土は栄養が無いのか勢いはないが少しずつ森が育っている。試しに、最初の小さな森の土を混ぜた部分は育ちが良くなってきた」
お父様も作業をちゃんとやってくれていたようだ。
「タデたちの石を彫る作業もどんどんと進んでいるぞ。邪魔しないように水汲み以外は近寄らないようにしている。レンゲとハコベが今食べ物を渡しに行っているがな」
みんなが少しずつ頑張ってくれたおかげでヒーズル王国は確実に成長していっている。こんなに嬉しいことはない。
お父様は私たちを労い、まずは食事にしようと提案してくれいつものようにみんなで食事をした。煮たポゥティトゥやサラダとは呼べないそのままのトゥメィトゥですら楽しく美味しく食べることが出来た。
テックノン王国のニコライさんと出会った話もし、国境を作ってもらいこの土地で採れたものや作ったものを売ってお金を稼ごうと思っていることも伝えるとみんなは驚きつつも賛成してくれた。そして国境が完成したら鉱山での作業の仕方を誰かに習いに行ってもらいたいことも告げた。これについてはまだ先の話だろうから、その時に決めようということで落ち着いた。
「そうだカレン」
隣に座っていたスイレンに声をかけられる。
「言われた通りたくさんの種を寄せておいてるよ。トゥメィトゥの種を採るのが大変だったんだから」
笑いながら怒り口調という難易度の高い技を披露するスイレン。
「ありがとう。またたくさんの野菜を買ってきたの。食べ終わったらそれと一緒に植えましょう」
「大丈夫?疲れてない?」
「スイレンこそ大丈夫なの?」
「僕は畑仕事で体力が少しついた!」
ほんの数日で体力はつかないと思うけど、スイレンのその可愛い嘘を褒めるとスイレンは照れたようだった。
食後は以前も購入してきたオレンジのような物を食べる。多分これがオーレンジンだろう。そしてまだ動けない者にはその果物を多めに与えた。夢の中で簡単な医学の本を読んでいたのだが、その夢を見たおかげで動けない者は壊血病なんじゃないかと思ったからだ。もしくは脚気かもしれないが、ディーズにはビタミンB1が含まれているのでディーズを食べていれば脚気は回復すると思う。要するにバランス良く何でも食べるのが一番だ。
食後のデザートを終え、畑仕事をしようとするとお父様が新たに畑を耕すと言うのでそちらはお父様や他の民に任せ、私たちは先に小さな森作りをすることにした。
いつも王国の北の山沿いを歩き、デーツの木を目印にして王国に戻っていたじいやは驚いていた。ううん、じいやだけじゃない。私たちは口をあんぐりと開け、歩む足も止めてしまった。
目印のデーツの木が見えない。デーツの木が見えない程に、私たちとデーツの木との間に小さな森が出来ていた。何故かは分からないけど私は涙をこぼし、みんなも涙目になりながらいつもの広場を目指した。
「みんなー!ただいまー!」
広場に近くなった頃、森に向かって大声で叫ぶと木々の間からお父様がこちらに向かって走って来る。その顔はまるで少年のように満面の笑顔だ。
「みんな無事に帰ってきたか!見てくれ!この森を!」
お父様は私を唐突に抱っこしクルクルと回る。回る視界の中にナーの花も見えたが、こちらも猛烈な勢いで繁殖し真っ黄色の空間が見える。そして足元ではクローバーが赤い大地を覆い、ほんの数日であの殺風景だった砂だけの地表はクローバーの葉と花で緑と白のコントラストを生み出していた。
「ぐすっ……お父様……森が……緑が……」
「カレン!お前は本当に救世主だ!みんなも広場へ!」
お父様に抱っこというよりは抱き締められながら広場に向かう。荷車を引くじいやたちも足早に広場に向かう。
「おかえりなさい!」
「カレン様!」
「みんな無事で良かった!」
たくさんの言葉に迎えられ広場に到着すると、動ける人が増えたのか前よりも広場に人が集まっている。
「ただい……ま」
民の後ろを見て驚いた。数日のうちに立派な畑が増えて広がっていた。その畑の手前にスイレンがおり、しゃがんで土の様子を見ているようだった。
「あ、カレン!戻って来たんだね!おかえり!」
スイレンはいつもの天使の笑みでこちらに走って来る。
「カレンなんで泣いてるの?見てよ!カレンが最初に教えてくれたすき込みの畑なんだけどね、土が良い感じになっていたから試しにトウモロコーンを植えてみたの。ちゃんと育ったよ!僕ね、畑の土の良し悪しが分かってきた!」
ドヤ顔のスイレンを見てようやく私は笑った。
「ナーは水をやってたら勝手に増えちゃったし、クローバー?とかいう草は何もしてないのにどんどん増えちゃった」
さすがは繁殖力の高い植物だけある。
「カレンが旅立つ前に言っていた森の再生作業も進んでいるぞ。やはり赤い土は栄養が無いのか勢いはないが少しずつ森が育っている。試しに、最初の小さな森の土を混ぜた部分は育ちが良くなってきた」
お父様も作業をちゃんとやってくれていたようだ。
「タデたちの石を彫る作業もどんどんと進んでいるぞ。邪魔しないように水汲み以外は近寄らないようにしている。レンゲとハコベが今食べ物を渡しに行っているがな」
みんなが少しずつ頑張ってくれたおかげでヒーズル王国は確実に成長していっている。こんなに嬉しいことはない。
お父様は私たちを労い、まずは食事にしようと提案してくれいつものようにみんなで食事をした。煮たポゥティトゥやサラダとは呼べないそのままのトゥメィトゥですら楽しく美味しく食べることが出来た。
テックノン王国のニコライさんと出会った話もし、国境を作ってもらいこの土地で採れたものや作ったものを売ってお金を稼ごうと思っていることも伝えるとみんなは驚きつつも賛成してくれた。そして国境が完成したら鉱山での作業の仕方を誰かに習いに行ってもらいたいことも告げた。これについてはまだ先の話だろうから、その時に決めようということで落ち着いた。
「そうだカレン」
隣に座っていたスイレンに声をかけられる。
「言われた通りたくさんの種を寄せておいてるよ。トゥメィトゥの種を採るのが大変だったんだから」
笑いながら怒り口調という難易度の高い技を披露するスイレン。
「ありがとう。またたくさんの野菜を買ってきたの。食べ終わったらそれと一緒に植えましょう」
「大丈夫?疲れてない?」
「スイレンこそ大丈夫なの?」
「僕は畑仕事で体力が少しついた!」
ほんの数日で体力はつかないと思うけど、スイレンのその可愛い嘘を褒めるとスイレンは照れたようだった。
食後は以前も購入してきたオレンジのような物を食べる。多分これがオーレンジンだろう。そしてまだ動けない者にはその果物を多めに与えた。夢の中で簡単な医学の本を読んでいたのだが、その夢を見たおかげで動けない者は壊血病なんじゃないかと思ったからだ。もしくは脚気かもしれないが、ディーズにはビタミンB1が含まれているのでディーズを食べていれば脚気は回復すると思う。要するにバランス良く何でも食べるのが一番だ。
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