55 / 370
お母様が作る伝統工芸品
しおりを挟む
翌日、目が覚め外に出るといつものように広場に人が集まっている。だけど何人かが揃って森の方に向かうので、なんとなくそれを目で追うと手前の森の近くにお母様が座っているのが見えた。お母様だけじゃなくヒイラギ夫婦も近くにおり、何か作業をしているようで気になった私はスイレンと共に行ってみることにした。
「おはようお母様。何をしているの?」
「あらおはよう、カレン、スイレン。これはね頭に被る物を作っているの。帽子の代わりね」
お母様は笑顔で話を続ける。
「今日は雲も無く暑そうでしょう?……いつも基本的に暑いけれど。作業をする民たちが少しでも楽に作業出来るように、日差しを遮れればと思ってね」
お母様は私たちを見て話しているのに、慣れた作業なのか手先は動いている。
「本当は違う植物を使ってもっと頭の形に合わせるのだけれど、私が簡単にすぐに作れるのがツルを使ったこのカゴなの。ひっくり返して被れば……ほら、帽子の代わりになるでしょう?」
カゴを被ったお母様は無邪気な笑顔で笑う。森の景色は当たり前すぎて細かいところまで見ていなかったけれど、よくよく見ればあちらこちらに植物のツルが伸びている。そのツルを使ったようだ。私とスイレンがすごいと褒めているとナズナさんが口を開く。
「簡単に、なんて言っているけど、簡単に作れるのはレンゲだけよ。ほら、私の作ったのを見て」
ナズナさんに手渡されたカゴは、お母様が作った物と違い隙間がたくさん開いている。とは言ってもそれはごく自然で売り物だとしても問題はなく、お母様の作品が素晴らしすぎるだけなのだが。
「ナズナさんもすごいわ。ちゃんと日差しを遮れるわよ?」
「本来は日差しを遮る物じゃないんだけどね」
ナズナさんの言葉にみんなが笑い出す。
「本当はもう少し乾燥させてから作りたかったけど、そうも言ってられないでしょう?」
そんな風に談笑している間にもお母様はどんどんとカゴを作り上げる。
「ナズナ、私の分のツルは無くなったわ。樹皮の様子を見て来るわね」
そう言って立ち上がるお母様にスイレンが質問をする。
「ジュヒ?お母様、ジュヒって何?」
「そうね、カレンもスイレンも見たことがないものね。こっちよ」
お母様は私たちを手招きし、小さな森の外れに私たちを案内する。するとそこには昨日はなかった簡易の物干し竿のような物が設置されていて、そこには何かをたくさんぶら下げて干しているようだった。
「これはねオッヒョイという木の皮よ。木の皮を樹皮と言うの。これを処理して糸にして、それを織ることで布になるのよ。その布は私たちが着ているこの服よ」
「「え!?」」
私とスイレンは全力で驚いた。
「昨日一本だけ切り倒してもらったの。まだ細い木だったからあんまり樹皮は取れなかったのだけれど。でも少しずつ布を作ってそろそろみんなに服を作らないとね」
確かに私たち親子は薄汚れてはいるけど、他の民のように擦り切れて穴が開いたりはしていない。衣食住の衣をどうしようかと思っていたけど、それはお母様が解決の糸口を見つけてくれた。でもお母様に頼るだけじゃなく私も出来ることをしないと。
「ねえお母様?木の皮ってそんなに簡単に剥がれるの?」
私が考え事をしていると、スイレンはお母様に質問をする。
「うーん……このオッヒョイとニィレという木は別格ね。簡単に剥がれて丈夫な糸になるし……」
そう呟きながらお母様は森へと入る。何本かの細い木を物色し「まだ小さくて勿体無いけれど」と言いながら一本の木を見定め、先程カゴを作る時に使っていた小刀で細い幹を傷付け、その傷を付けた皮を引っ張ると面白いくらいペローンと皮が一直線に剥がれた。
「「それをどうするの?」」
私たちは同じ質問を同時にし思わず笑ってしまう。
「この一番外側の樹皮は使わないの。この内側の樹皮も同じように剥がれるのよ。ああやって干しておけばいつでも使えるし、使う時に茹でて洗ってを繰り返して糸にしていくの。ただいつでもこんなに綺麗に剥がれる訳ではないから、経験で剥がれやすい成長具合の木を見極めるのよ」
「「へー!」」
以前お母様は手先の器用さは誰にも負けないって言っていたけど、本当にその通りだと思った。この世界での布の織り方を早く知りたいわ。
「お母様、布や糸がもっと普及したら一緒に手芸をしましょ!」
「それは楽しみだわ」
お母様の笑顔は今までで一番輝いて見えた。そして私もまたこの世界での楽しみが出来てワクワクするわ!
「おはようお母様。何をしているの?」
「あらおはよう、カレン、スイレン。これはね頭に被る物を作っているの。帽子の代わりね」
お母様は笑顔で話を続ける。
「今日は雲も無く暑そうでしょう?……いつも基本的に暑いけれど。作業をする民たちが少しでも楽に作業出来るように、日差しを遮れればと思ってね」
お母様は私たちを見て話しているのに、慣れた作業なのか手先は動いている。
「本当は違う植物を使ってもっと頭の形に合わせるのだけれど、私が簡単にすぐに作れるのがツルを使ったこのカゴなの。ひっくり返して被れば……ほら、帽子の代わりになるでしょう?」
カゴを被ったお母様は無邪気な笑顔で笑う。森の景色は当たり前すぎて細かいところまで見ていなかったけれど、よくよく見ればあちらこちらに植物のツルが伸びている。そのツルを使ったようだ。私とスイレンがすごいと褒めているとナズナさんが口を開く。
「簡単に、なんて言っているけど、簡単に作れるのはレンゲだけよ。ほら、私の作ったのを見て」
ナズナさんに手渡されたカゴは、お母様が作った物と違い隙間がたくさん開いている。とは言ってもそれはごく自然で売り物だとしても問題はなく、お母様の作品が素晴らしすぎるだけなのだが。
「ナズナさんもすごいわ。ちゃんと日差しを遮れるわよ?」
「本来は日差しを遮る物じゃないんだけどね」
ナズナさんの言葉にみんなが笑い出す。
「本当はもう少し乾燥させてから作りたかったけど、そうも言ってられないでしょう?」
そんな風に談笑している間にもお母様はどんどんとカゴを作り上げる。
「ナズナ、私の分のツルは無くなったわ。樹皮の様子を見て来るわね」
そう言って立ち上がるお母様にスイレンが質問をする。
「ジュヒ?お母様、ジュヒって何?」
「そうね、カレンもスイレンも見たことがないものね。こっちよ」
お母様は私たちを手招きし、小さな森の外れに私たちを案内する。するとそこには昨日はなかった簡易の物干し竿のような物が設置されていて、そこには何かをたくさんぶら下げて干しているようだった。
「これはねオッヒョイという木の皮よ。木の皮を樹皮と言うの。これを処理して糸にして、それを織ることで布になるのよ。その布は私たちが着ているこの服よ」
「「え!?」」
私とスイレンは全力で驚いた。
「昨日一本だけ切り倒してもらったの。まだ細い木だったからあんまり樹皮は取れなかったのだけれど。でも少しずつ布を作ってそろそろみんなに服を作らないとね」
確かに私たち親子は薄汚れてはいるけど、他の民のように擦り切れて穴が開いたりはしていない。衣食住の衣をどうしようかと思っていたけど、それはお母様が解決の糸口を見つけてくれた。でもお母様に頼るだけじゃなく私も出来ることをしないと。
「ねえお母様?木の皮ってそんなに簡単に剥がれるの?」
私が考え事をしていると、スイレンはお母様に質問をする。
「うーん……このオッヒョイとニィレという木は別格ね。簡単に剥がれて丈夫な糸になるし……」
そう呟きながらお母様は森へと入る。何本かの細い木を物色し「まだ小さくて勿体無いけれど」と言いながら一本の木を見定め、先程カゴを作る時に使っていた小刀で細い幹を傷付け、その傷を付けた皮を引っ張ると面白いくらいペローンと皮が一直線に剥がれた。
「「それをどうするの?」」
私たちは同じ質問を同時にし思わず笑ってしまう。
「この一番外側の樹皮は使わないの。この内側の樹皮も同じように剥がれるのよ。ああやって干しておけばいつでも使えるし、使う時に茹でて洗ってを繰り返して糸にしていくの。ただいつでもこんなに綺麗に剥がれる訳ではないから、経験で剥がれやすい成長具合の木を見極めるのよ」
「「へー!」」
以前お母様は手先の器用さは誰にも負けないって言っていたけど、本当にその通りだと思った。この世界での布の織り方を早く知りたいわ。
「お母様、布や糸がもっと普及したら一緒に手芸をしましょ!」
「それは楽しみだわ」
お母様の笑顔は今までで一番輝いて見えた。そして私もまたこの世界での楽しみが出来てワクワクするわ!
87
あなたにおすすめの小説
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる