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胡椒作りの下準備
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畑から広場へと戻って来た私はクローバーの絨毯に腰を下ろす。すると私の向かい側に仲良し四人組も座る。ちょうど朝食と昼食の間のおやつ時だったので、食事の準備を担当していた民から食べ物を渡された。受け取った皿を見てみると生のトウモロコーンの実を芯から外した物だった。
毎日のように収穫されるようになったトウモロコーンはとても立派で、その分芯もたくさん集まるようになった。以前作ったスープの他に利用法がないかを民に聞かれた時に、芯とトウモロコーンのヒゲを干してそれを煮出せばお茶になると言ったところ、民の間でプチブームとなり芯を欲しがっているのだ。
最近では芯を集める為にトウモロコーンを食べていると言っても過言ではない。
「美味しいわね」
私は四人に声をかけたけれど、四人は無言で頷くだけだ。もっと仲良くなりたいのだけれど、無口な四人は自分からはほとんど私に話しかけて来ない。そして私が話しかけても無言で頷くだけなのだ。
苦笑いをしながらもあっという間にトウモロコーンを食べてしまい、皿を片付けようと私が立つよりも先にオヒシバが立ち上がりみんなの皿を回収する。やはり見ていないようでちゃんと人の動きを見ている彼らは優秀なのだ。
オヒシバに礼を言うとハマスゲも立ち上がり広場の中心部へと向かった。なんとなくその姿を目で追うと、彼らは他の民からも皿を回収している。そして二人は皿洗いを始めた。洗うと言ってもまだ水は大量には使える状態ではないので、代わりに植物の葉を使う。
間伐作業をしている者たちがこういう時の為やお尻拭きの為にフキことフゥキの茎を切り、水を張ったバケツに入れて広場の入り口に置いてくれているのだ。フゥキは元の繁殖力とこの土地の力が合わさり、毎日の生活に困らないほど生えてくるようだった。
まずオヒシバがフゥキの葉を手に取り、皿の汚れを拭き落とす。その皿をハマスゲに渡すと別の植物の葉で皿を拭いているようだ。
「……ハマスゲの持っている葉は何の葉?」
私の元に残っているイチビとシャガに聞くと「ナーンテーン」と答えてくれた。赤くて丸い実が成るのか聞くと頷くので、多分あれは南天だろう。
図書館で見た植物図鑑や夢の内容を思い返すと、南天の葉には猛毒のシアン化水素がごくごく僅かに含まれていて殺菌作用があると読んだことがある。人体に影響はほとんどないので弁当に入っていたりするあの葉だ。消毒の代わりなのだろうが、さすがに猛毒が含まれているものを使っているのでハラハラして見ていると、別の民が今のところすき込みにしか使えないトウモロコーンの葉で最後に軽く乾拭きをしていた。
「……みんなはやっぱり植物について詳しいのね」
そう言うとイチビが口を開いた。
「ご先祖様のおかげです」
日本人のようなそのセリフがとても嬉しくて自然と微笑むと二人は真っ赤になって俯いてしまった。どうしたんだろうと小首を傾げているとオヒシバたちが戻って来た。そして何事もなかったかのようにその場に腰を下ろす。すると一瞬何かを思い出したような顔をしたシャガが、自分の背後からペパーの実が入ったカゴを差し出した。
「あぁそうそう、この処理をしないとね」
目の細かいカゴかザルが欲しいと言うとシャガはどこからか私の求めているようなカゴを持って来てくれた。ペパーの実を手にして穂から実をはずしていくと四人も同じように手伝ってくれる。赤く熟した実はほとんどないけれど、まだ熟していない緑の実と赤い実を分けていく。
「……この実は果実なのですか?野菜なのですか?」
イチビは作業をしながら質問をする。
「これはね……」
香辛料、と言う前にオヒシバが興味を持ったらしく一粒を口に入れてしまった。さっきのキャベッチの件もあり、知らない物を口にしないという警戒心が緩くなってしまっているようだ。
止める間もなくオヒシバはその口の中にある実をかじってしまった。よほど辛かったのか後ろに倒れ込み悶絶している。
「水!水を!」
オヒシバに驚く三人だったが、私が水と言うとイチビが走って持って来てくれそれを飲ませる。
「オヒシバ大丈夫?相当辛かったでしょうに……。これは香辛料で料理に使うのよ」
眉尻を下げつつ苦笑いでそう言うと、オヒシバは「辛い辛い」と繰り返す。他の三人に「調子に乗るな」等とお叱りを受けたオヒシバは、涙目になりながら作業の続きをしようとしていた。
そんなオヒシバを心配しつつも実をはずして選別作業を終わらせる。
「この緑の実はこのまま干すの。カゴのままで大丈夫だと思うわ。こっちの赤い実はしばらく水に浸けて皮を剥くの。だから今日の作業はここまでね」
そしてペパーを日当たりの良い私の家の横に置き、胡椒作りの下準備を終わらせた。
毎日のように収穫されるようになったトウモロコーンはとても立派で、その分芯もたくさん集まるようになった。以前作ったスープの他に利用法がないかを民に聞かれた時に、芯とトウモロコーンのヒゲを干してそれを煮出せばお茶になると言ったところ、民の間でプチブームとなり芯を欲しがっているのだ。
最近では芯を集める為にトウモロコーンを食べていると言っても過言ではない。
「美味しいわね」
私は四人に声をかけたけれど、四人は無言で頷くだけだ。もっと仲良くなりたいのだけれど、無口な四人は自分からはほとんど私に話しかけて来ない。そして私が話しかけても無言で頷くだけなのだ。
苦笑いをしながらもあっという間にトウモロコーンを食べてしまい、皿を片付けようと私が立つよりも先にオヒシバが立ち上がりみんなの皿を回収する。やはり見ていないようでちゃんと人の動きを見ている彼らは優秀なのだ。
オヒシバに礼を言うとハマスゲも立ち上がり広場の中心部へと向かった。なんとなくその姿を目で追うと、彼らは他の民からも皿を回収している。そして二人は皿洗いを始めた。洗うと言ってもまだ水は大量には使える状態ではないので、代わりに植物の葉を使う。
間伐作業をしている者たちがこういう時の為やお尻拭きの為にフキことフゥキの茎を切り、水を張ったバケツに入れて広場の入り口に置いてくれているのだ。フゥキは元の繁殖力とこの土地の力が合わさり、毎日の生活に困らないほど生えてくるようだった。
まずオヒシバがフゥキの葉を手に取り、皿の汚れを拭き落とす。その皿をハマスゲに渡すと別の植物の葉で皿を拭いているようだ。
「……ハマスゲの持っている葉は何の葉?」
私の元に残っているイチビとシャガに聞くと「ナーンテーン」と答えてくれた。赤くて丸い実が成るのか聞くと頷くので、多分あれは南天だろう。
図書館で見た植物図鑑や夢の内容を思い返すと、南天の葉には猛毒のシアン化水素がごくごく僅かに含まれていて殺菌作用があると読んだことがある。人体に影響はほとんどないので弁当に入っていたりするあの葉だ。消毒の代わりなのだろうが、さすがに猛毒が含まれているものを使っているのでハラハラして見ていると、別の民が今のところすき込みにしか使えないトウモロコーンの葉で最後に軽く乾拭きをしていた。
「……みんなはやっぱり植物について詳しいのね」
そう言うとイチビが口を開いた。
「ご先祖様のおかげです」
日本人のようなそのセリフがとても嬉しくて自然と微笑むと二人は真っ赤になって俯いてしまった。どうしたんだろうと小首を傾げているとオヒシバたちが戻って来た。そして何事もなかったかのようにその場に腰を下ろす。すると一瞬何かを思い出したような顔をしたシャガが、自分の背後からペパーの実が入ったカゴを差し出した。
「あぁそうそう、この処理をしないとね」
目の細かいカゴかザルが欲しいと言うとシャガはどこからか私の求めているようなカゴを持って来てくれた。ペパーの実を手にして穂から実をはずしていくと四人も同じように手伝ってくれる。赤く熟した実はほとんどないけれど、まだ熟していない緑の実と赤い実を分けていく。
「……この実は果実なのですか?野菜なのですか?」
イチビは作業をしながら質問をする。
「これはね……」
香辛料、と言う前にオヒシバが興味を持ったらしく一粒を口に入れてしまった。さっきのキャベッチの件もあり、知らない物を口にしないという警戒心が緩くなってしまっているようだ。
止める間もなくオヒシバはその口の中にある実をかじってしまった。よほど辛かったのか後ろに倒れ込み悶絶している。
「水!水を!」
オヒシバに驚く三人だったが、私が水と言うとイチビが走って持って来てくれそれを飲ませる。
「オヒシバ大丈夫?相当辛かったでしょうに……。これは香辛料で料理に使うのよ」
眉尻を下げつつ苦笑いでそう言うと、オヒシバは「辛い辛い」と繰り返す。他の三人に「調子に乗るな」等とお叱りを受けたオヒシバは、涙目になりながら作業の続きをしようとしていた。
そんなオヒシバを心配しつつも実をはずして選別作業を終わらせる。
「この緑の実はこのまま干すの。カゴのままで大丈夫だと思うわ。こっちの赤い実はしばらく水に浸けて皮を剥くの。だから今日の作業はここまでね」
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