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今回の売り物
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私は靴に履き替えたが、畑の作業をする者はわらじを履いたまま休憩をとる。トウモロコーンをかじりながらぼーっと考え事をしていると、隣にいた民に話しかけられた。
「姫様、どうされました?」
「あ……ううん、そろそろまた売り物を作らないといけないと思って」
そう言うと周りにいた民たちは口々に「この履き物を売ればいい」と言う。確かにわらじはインパクトはあるが、珍しいからと買ってまで履くだろうか?そしてリトールの町の人々の履いていた靴を思い出す。
あの町の人たちが履いていたのは靴というよりサンダルに近い物だった。足の形に加工した、厚みのある木の板の底面に十字に溝が彫られ、その横の溝に布を挟み足の甲で結んでいた。畑に行く者たちは縦の溝にも布を挟み、つま先を覆うようにしてから足首に巻いた後に結んでいた。
……なんとなく足が疲れるだろうなぁとは思っていた。ならばわらじよりもぞうりやルームシューズの方が喜ばれるのではないか?家の中ではルームシューズの方が裸足に近いので足が楽なはずだ。
「……昨日私が作った履き物を売るのはどうかしら?」
それを聞いた民たちは拍手をしながら「売れるはずです」と興奮気味に話している。今回は玩具ではなくこの手芸品を売ってみよう。
休憩を終えるとお母様の元へ向かう。わらじを作った者は畑に向かったが、一人だけ手伝ってくれることになり一緒に着いてきてくれた。
「お母様、あのね、もうすぐリトールの町に行かなければならないでしょう?今回は玩具ではなく履き物等の手芸品を売ろうと思うの」
「ということは、あの履き物の作り方を教えてくれるわよね?もちろん手伝うわ!」
お母様は早くもやる気満々といった感じだ。とはいえ、糸や布も作らねばならないのでここでまた人を振り分ける。
お母様とナズナさん、そしておババさんはかぎ針編みチームに、いつもお母様たちと糸を紡いでいるキキョウさんとナデシコさん、そして先程わらじを作ったセリさんとハコベさんはぞうり作りのチームに分けた。残りの人や子どもたちの適性を見て判断し、糸紡ぎ・縄ない・布織りに分かれてもらう。
さらに森の間伐チームも数人をこちらへ呼び、樹皮やチョーマの加工をしてもらうことにした。
作業を始める前に手芸をする全員を集める。
「まず『ぞうり』と呼ばれる物を作る人たち。セリさん、さっきのわらじを作った縄の太さと同じくらいの縄を作るところから始めてちょうだい。わらじと同じくらいの量があれば大丈夫よ。そしてルームシューズ……えぇと……『部屋の中の靴』とでも言えばいいかしら……?前世で暮らしていた国は世界一綺麗好きとまで言われていてね、家に入る時は靴を脱ぐの。それでも足を汚したくなかったり、逆に足の汚れを床に付けたくなかったり、足を冷やさないように家の中専用の履き物を履くの」
靴下やスリッパという概念がないこの国の人に説明するのは難しいと痛感する。
「裸足の人は分かるでしょうけど、平坦な場所を歩く時って足が楽じゃないかしら?だからリトールの町の人に家の中で履くようにこれを勧めたいの。でもこれから作る物の作り方は今回は教えないわ。この国だけの秘密よ。材料は糸よりも太くて縄よりも細い物を使うわ。スピンドル……紡錘で手早く作ってしまいましょう」
新しい物を作れると喜ぶみんなはチョーマを手にし、ワクワクとした表情でそれぞれの糸や縄を作っていく。間伐チームが毎日大量にチョーマを採ってきて加工してくれるので有り余っていたが、この作業でだいぶ在庫が減ったのを見て急いでチョーマの繊維を加工してくれた。
やる気満々のみんなは昼食もそこそこに作業を続け、糸や縄が出来たところでようやく作成に入る。みんなが糸を作っている間に私は人数分のかぎ針を作っておいた。
「セリさん、わらじの作り方は大丈夫ね?鼻緒も『乳』も作らず半分くらいまで編んで欲しいわ。そこまで出来たら呼んでちょうだい」
昨日私が作ったぞうりは私用のオリジナル製法で、わらじの鼻緒の部分を底面に編み込んだ物だ。本来のぞうりは鼻緒を途中で編み込み前坪を作る。今回は忠実にぞうりを作ろうと思う。
セリさんは机にみんなを連れて行き、丁寧に作り方の指導をしてくれている。
私はお母様たちにかぎ針を配る。
「この道具はかぎ針と呼ばれているわ。この一本のかぎ針と一本の糸で編んでいくのよ」
そう言うとお母様たちに「えぇ!?」と驚かれてしまった。かぎ針と糸の持ち方から説明は始まり、作り目をして鎖編みを教える。その時点でお母様たちのテンションは上がりっぱなしだ。長編みを教えその鎖編みにかぎ針の先を差し込み糸を引っ掛けて抜く。細かい作業なので慣れるまでは違う場所にかぎ針を差し込んだりもするが、一人ずつ確認しながら修正していくとすぐに慣れたように編んでいく。
かぎ針編みのチームが慣れスピードが乗ってきた頃にセリさんに呼ばれる。
「姫様、半分ほど編みましたがどうしたら良いですか?」
「わぁ!みんな上手!じゃあここから鼻緒を編み込むわ。今日はこの縄を使うけど、布で代用してもいいのよ」
そうして鼻緒となる縄を編み込む。編み込んだらそのまま鼻緒をプラプラさせたまま編み進み、最後の仕上げで前坪を作り鼻緒を固定すればぞうりとなる。
そこからはかぎ針編みチームとぞうり作りチームを渡り歩き、売り物となる履き物の制作指導で一日が終わった。
「姫様、どうされました?」
「あ……ううん、そろそろまた売り物を作らないといけないと思って」
そう言うと周りにいた民たちは口々に「この履き物を売ればいい」と言う。確かにわらじはインパクトはあるが、珍しいからと買ってまで履くだろうか?そしてリトールの町の人々の履いていた靴を思い出す。
あの町の人たちが履いていたのは靴というよりサンダルに近い物だった。足の形に加工した、厚みのある木の板の底面に十字に溝が彫られ、その横の溝に布を挟み足の甲で結んでいた。畑に行く者たちは縦の溝にも布を挟み、つま先を覆うようにしてから足首に巻いた後に結んでいた。
……なんとなく足が疲れるだろうなぁとは思っていた。ならばわらじよりもぞうりやルームシューズの方が喜ばれるのではないか?家の中ではルームシューズの方が裸足に近いので足が楽なはずだ。
「……昨日私が作った履き物を売るのはどうかしら?」
それを聞いた民たちは拍手をしながら「売れるはずです」と興奮気味に話している。今回は玩具ではなくこの手芸品を売ってみよう。
休憩を終えるとお母様の元へ向かう。わらじを作った者は畑に向かったが、一人だけ手伝ってくれることになり一緒に着いてきてくれた。
「お母様、あのね、もうすぐリトールの町に行かなければならないでしょう?今回は玩具ではなく履き物等の手芸品を売ろうと思うの」
「ということは、あの履き物の作り方を教えてくれるわよね?もちろん手伝うわ!」
お母様は早くもやる気満々といった感じだ。とはいえ、糸や布も作らねばならないのでここでまた人を振り分ける。
お母様とナズナさん、そしておババさんはかぎ針編みチームに、いつもお母様たちと糸を紡いでいるキキョウさんとナデシコさん、そして先程わらじを作ったセリさんとハコベさんはぞうり作りのチームに分けた。残りの人や子どもたちの適性を見て判断し、糸紡ぎ・縄ない・布織りに分かれてもらう。
さらに森の間伐チームも数人をこちらへ呼び、樹皮やチョーマの加工をしてもらうことにした。
作業を始める前に手芸をする全員を集める。
「まず『ぞうり』と呼ばれる物を作る人たち。セリさん、さっきのわらじを作った縄の太さと同じくらいの縄を作るところから始めてちょうだい。わらじと同じくらいの量があれば大丈夫よ。そしてルームシューズ……えぇと……『部屋の中の靴』とでも言えばいいかしら……?前世で暮らしていた国は世界一綺麗好きとまで言われていてね、家に入る時は靴を脱ぐの。それでも足を汚したくなかったり、逆に足の汚れを床に付けたくなかったり、足を冷やさないように家の中専用の履き物を履くの」
靴下やスリッパという概念がないこの国の人に説明するのは難しいと痛感する。
「裸足の人は分かるでしょうけど、平坦な場所を歩く時って足が楽じゃないかしら?だからリトールの町の人に家の中で履くようにこれを勧めたいの。でもこれから作る物の作り方は今回は教えないわ。この国だけの秘密よ。材料は糸よりも太くて縄よりも細い物を使うわ。スピンドル……紡錘で手早く作ってしまいましょう」
新しい物を作れると喜ぶみんなはチョーマを手にし、ワクワクとした表情でそれぞれの糸や縄を作っていく。間伐チームが毎日大量にチョーマを採ってきて加工してくれるので有り余っていたが、この作業でだいぶ在庫が減ったのを見て急いでチョーマの繊維を加工してくれた。
やる気満々のみんなは昼食もそこそこに作業を続け、糸や縄が出来たところでようやく作成に入る。みんなが糸を作っている間に私は人数分のかぎ針を作っておいた。
「セリさん、わらじの作り方は大丈夫ね?鼻緒も『乳』も作らず半分くらいまで編んで欲しいわ。そこまで出来たら呼んでちょうだい」
昨日私が作ったぞうりは私用のオリジナル製法で、わらじの鼻緒の部分を底面に編み込んだ物だ。本来のぞうりは鼻緒を途中で編み込み前坪を作る。今回は忠実にぞうりを作ろうと思う。
セリさんは机にみんなを連れて行き、丁寧に作り方の指導をしてくれている。
私はお母様たちにかぎ針を配る。
「この道具はかぎ針と呼ばれているわ。この一本のかぎ針と一本の糸で編んでいくのよ」
そう言うとお母様たちに「えぇ!?」と驚かれてしまった。かぎ針と糸の持ち方から説明は始まり、作り目をして鎖編みを教える。その時点でお母様たちのテンションは上がりっぱなしだ。長編みを教えその鎖編みにかぎ針の先を差し込み糸を引っ掛けて抜く。細かい作業なので慣れるまでは違う場所にかぎ針を差し込んだりもするが、一人ずつ確認しながら修正していくとすぐに慣れたように編んでいく。
かぎ針編みのチームが慣れスピードが乗ってきた頃にセリさんに呼ばれる。
「姫様、半分ほど編みましたがどうしたら良いですか?」
「わぁ!みんな上手!じゃあここから鼻緒を編み込むわ。今日はこの縄を使うけど、布で代用してもいいのよ」
そうして鼻緒となる縄を編み込む。編み込んだらそのまま鼻緒をプラプラさせたまま編み進み、最後の仕上げで前坪を作り鼻緒を固定すればぞうりとなる。
そこからはかぎ針編みチームとぞうり作りチームを渡り歩き、売り物となる履き物の制作指導で一日が終わった。
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